子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。
子供はかまってくれない
映画「バクマン。」:役者の生身で表現された「友情・努力・勝利」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/46/c7/61a079c5101ba37126cbfdd2f8f6f40e.jpg)
ピークの発行部数が653万部。日頃,少年マンガにまったく縁がなく,専ら5万部を越えたら超大ヒットとなるような海外ミステリー小説ばかりを読みあさっている私にとっては,想像することも難しい数字だ。
「モテキ」のフラッシュ・モブシーンで私の心を射貫いた大根仁の新作「バクマン。」は,かつてそんな桁違いの数字を叩き出したことのある超人気コミック誌「少年ジャンプ」を舞台に,同誌が標榜するテーマ「友情・努力・勝利」を,映画的なテクニックを駆使して描いた秀作だ。
作品のフレームとしては,大きな夢を抱いた熱血少年が奮闘する姿を描く青春映画ではあるものの,仕事を遂行することに伴って生ずる困難,挫折,連帯,達成感が,主人公たちの指先を汚すインクのようにべったりと心に染み込んでくるような一級の「お仕事ムービー」になっている。
大根はマンガという2次元の世界を,映画というメディアに移し替えるにあたって,マンガでは直接表現出来ないディメンション=音をフルに活用する。紙の上を走るペン先が発する硬質の音は,ラストシーンで二人の頭に浮かんだ夢を絵にすべく黒板にチョークを走らせるまで,物語の基盤を支えながら「ガリガリ」と鳴り続ける。それはまるで,少年の夢が社会という得体の知れない,しかし必ず立ち向かわなければならない宿敵との戦場に鳴り響く通奏低音のように,観客の心を波立たせる。時にアンダーワールドの「ボーン・スリッピー」を想起させるようなサカナクションの音楽も,マンガという2次元と現実社会の境界で苦悩する登場人物の優しい応援歌のような役割を果たしている。
主人公の二人(サイコー:佐藤健,シュージン:神木隆之介)と同時に手塚賞を受賞したライバルであり仲間となっていく3人の漫画家に,編集者の服部(山田孝之)を加えた6人が,伝説の漫画家たちが巣立ったトキワ荘のエピソードからマンガに関するマニアックな話を続けるシーンは,タランティーノ作品における無駄話シークエンスのようで実に楽しい。話の内容は,ほとんど理解できなかったけれど。
サイコーが憧れ,身を削って近づこうとするヒロイン役の小松菜奈も,中島哲也の汚点となってしまった「渇き。」における一本調子のダーク・ヒロインに比べると,別人のような輝きを見せてくれたおかげで,「青春映画」としての体裁も磐石。少年ジャンプのファンへのプレゼントのようなエンド・クレジットも含めて,佐々木編集長(リリー・フランキー)の決め台詞ではないが,これは「アリ!」。
★★★★
(★★★★★が最高)
「モテキ」のフラッシュ・モブシーンで私の心を射貫いた大根仁の新作「バクマン。」は,かつてそんな桁違いの数字を叩き出したことのある超人気コミック誌「少年ジャンプ」を舞台に,同誌が標榜するテーマ「友情・努力・勝利」を,映画的なテクニックを駆使して描いた秀作だ。
作品のフレームとしては,大きな夢を抱いた熱血少年が奮闘する姿を描く青春映画ではあるものの,仕事を遂行することに伴って生ずる困難,挫折,連帯,達成感が,主人公たちの指先を汚すインクのようにべったりと心に染み込んでくるような一級の「お仕事ムービー」になっている。
大根はマンガという2次元の世界を,映画というメディアに移し替えるにあたって,マンガでは直接表現出来ないディメンション=音をフルに活用する。紙の上を走るペン先が発する硬質の音は,ラストシーンで二人の頭に浮かんだ夢を絵にすべく黒板にチョークを走らせるまで,物語の基盤を支えながら「ガリガリ」と鳴り続ける。それはまるで,少年の夢が社会という得体の知れない,しかし必ず立ち向かわなければならない宿敵との戦場に鳴り響く通奏低音のように,観客の心を波立たせる。時にアンダーワールドの「ボーン・スリッピー」を想起させるようなサカナクションの音楽も,マンガという2次元と現実社会の境界で苦悩する登場人物の優しい応援歌のような役割を果たしている。
主人公の二人(サイコー:佐藤健,シュージン:神木隆之介)と同時に手塚賞を受賞したライバルであり仲間となっていく3人の漫画家に,編集者の服部(山田孝之)を加えた6人が,伝説の漫画家たちが巣立ったトキワ荘のエピソードからマンガに関するマニアックな話を続けるシーンは,タランティーノ作品における無駄話シークエンスのようで実に楽しい。話の内容は,ほとんど理解できなかったけれど。
サイコーが憧れ,身を削って近づこうとするヒロイン役の小松菜奈も,中島哲也の汚点となってしまった「渇き。」における一本調子のダーク・ヒロインに比べると,別人のような輝きを見せてくれたおかげで,「青春映画」としての体裁も磐石。少年ジャンプのファンへのプレゼントのようなエンド・クレジットも含めて,佐々木編集長(リリー・フランキー)の決め台詞ではないが,これは「アリ!」。
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