子供はかまってくれない

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2011年TVドラマ春シーズン・レビューNO.2:「BOSS」「名前をなくした女神」

2011年05月09日 22時59分59秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
野島伸司の珍作「GOLD」で完全にミソを付けてしまった天海祐希だが,フジへの復帰作として選んだのは,ちょうど2年前のヒット作「BOSS」の続編だった。前作の失敗に関しては,勿論母親役を演じた天海だけが責められるべきではないと思うのだが,ドラマの内容だけでなく視聴率的にも惨敗と言っても良い数字になってしまったことが余程こたえたのか,今回その汚名挽回とすべき作品に,鉄板作品の続編を選ぶという「守り」の姿勢を打ち出してきた。
これまで自らの身長や年齢,更には未婚であるといった実生活と重なる部分までもを,時に自虐的に描くことで,芸域を拡げてきた「男前の女優」だっただけに,この選択には正直言って首を傾げた。そして,そんな天海の姿勢に関する心配は,これまでのところ残念ながら良くない方向で当たってしまっているようだ。

部下にも仕事にも厳しいが,そんな仕事っぷりのすき間に,ガテン系のユーモアが滲み出る,というのが本来の天海(=大澤室長)のキャラクターであるはずなのに,今回の続編では最初からずっこけキャラクターが全開で,犯罪捜査が二の次になってしまっている。たとえ本質がキャラクター命のヴァラエティ系「警察もの」であっても,兎にも角にも一応は「犯罪捜査もの」にカテゴライズされる以上,そのメイン・プロットをしっかり書き込まないと,連続ドラマとして見せるのはきつい。
その一方で力を入れて笑いを取りに来ているはずの天海と課員とのやり取りも,切れ味,センス共に冴えないのも致命的だ。

前クールの吉瀬美智子に代わって,今回は新たに長谷川京子が仲間に加わっているが,本来は「ほのぼの」キャラのヒロイン経験者は,身の置き所を見つけられずにウロウロするばかりで,ドラマに新たな色を加えるには至っていない。
ゲイのキャラクターを演じるケンドー・コバヤシが,NHKで放送が始まった「glee」のように,セクシャル・マイノリティーの存在を堂々と打ち出すような展開を見せれば,ひょっとするとドラマの奥行きも深まるかもしれないが,このままでは数字は取れても(第3回までは平均で15.57%で「JIN」に次ぐ好成績)笑えない凡庸なコメディに終わってしまう気配は濃厚だ。

「守り」に入った作品と言えば,同局の「名前をなくした女神」もOLのイジメを描いた1年前のドラマ「泣かないと決めた日」の実質的な続編的作品だ。ママ友同士の嫉妬や空疎なプライドに端を発する陰湿ないじめを正面から取り上げており,毎週観ているこちらの眉間の皺は深くなる一方だ。
だが,「BOSS」と違って視聴者に下手な笑いで媚びを売ることはなく,ほとんどホラーと言っても過言ではないくらいのダークな要素で真っ向勝負していることが,いっそ潔い。

「泣かない~」で共演した杏と木村佳乃が,キャラクターを変えて再びコンビを組んでいるほか,尾野真知子やりょうといった芸達者が脇を固めており,ドラマのフレームは,今季の同局の作品群の中でも最もしっかりとしているようだ。特に若いヤンキーママに扮した倉科カナの成りきり振りは見事。
その一方で男優陣は総じて冴えないが,ママ・チームの恐ろしさを強調するという意味では,キャスティングのミスと思われる配役も含めて意図的と思えないこともなく,ここは素直に制作陣の深慮遠謀を楽しむのが得策かもしれない。頑張れ,杏!


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