様々なシチュエーションを駆使して,家族の形を追求し続けてきたウェス・アンダーソンが,ストップ・モーション・アニメーションという極めて映画的且つアナログな手法を用いて,ロアルド・ダールの原作の映画化に挑戦した作品。
近年はすっかり当たり前になってしまった感のある,滑らかなコンピューター・グラフィックスとは明らかに異なる画面の質感を楽しめる観客ならば,拍手喝采すること請け合いだ。
登場人物が何故かみんな,真正面を向いて我が心情を語るという,アンダーソン作品の特徴はここでも健在。無謀にも人間に対して戦を挑む,侠気溢れる主人公のFOX(声:ジョージ・クルーニー)然り,変わり者の息子ASH然り。
加えて「ライフ・アクアティック」でトライした「潜水艦輪切りカット」の成功によって新たな決め技に加わった「構築物輪切りカット」も,FOX邸から始まって,宿敵の砦まで,存分に展開してみせる。
そんなアンダーソン色が濃厚な125,280もの膨大なカットに生命を与えているのが,前述のクルーニーを筆頭とするヴァラエティ豊かな声優陣だ。
アンダーソン作品皆勤賞のビル・マーレイは言わずもがな,同じくチームに欠かせない1番バッター的存在のオーウェン・ウィルソンに,ウィレム・デフォーまで,マイクを前にして楽しんで役になりきっていたであろう彼らの姿を想像しながら観るのは,実に楽しかった。
そんな中でも一番の驚愕は,FOXの恋女房に扮したメリル・ストリープだった。年齢的にはクルーニーと同じ干支で一回り上(1949年生 VS 1961生)にも拘わらず,ドキッとするような艶っぽい声で,姉さん的な女房役をものの見事に作り上げていた。やはり人間は,幾つになっても「艶っぽさ」を忘れてはいけないのだということを,深く深く肝に銘じるような名演(声)技に拍手。
チラシによれば,アンダーソンは子供の頃に原作を読んで「恋に落ちた」そうだが,そう聞いてアメリカにおけるロアルド・ダールの存在感の大きさというものを改めて感じた。ティム・バートンの「チャーリーとチョコレート工場」に,ダニー・デビートの「マチルダ」に,「ジャイアント・ピーチ」と続く作品群を見ていると,日本における宮沢賢治級の存在なのかなぁと思いを致しつつ,同じくダールのファンであるという宮崎駿による映画化作品も観てみたいなぁと想像を膨らませてみるリラ冷えの5月。
★★★★
(★★★★★が最高)
近年はすっかり当たり前になってしまった感のある,滑らかなコンピューター・グラフィックスとは明らかに異なる画面の質感を楽しめる観客ならば,拍手喝采すること請け合いだ。
登場人物が何故かみんな,真正面を向いて我が心情を語るという,アンダーソン作品の特徴はここでも健在。無謀にも人間に対して戦を挑む,侠気溢れる主人公のFOX(声:ジョージ・クルーニー)然り,変わり者の息子ASH然り。
加えて「ライフ・アクアティック」でトライした「潜水艦輪切りカット」の成功によって新たな決め技に加わった「構築物輪切りカット」も,FOX邸から始まって,宿敵の砦まで,存分に展開してみせる。
そんなアンダーソン色が濃厚な125,280もの膨大なカットに生命を与えているのが,前述のクルーニーを筆頭とするヴァラエティ豊かな声優陣だ。
アンダーソン作品皆勤賞のビル・マーレイは言わずもがな,同じくチームに欠かせない1番バッター的存在のオーウェン・ウィルソンに,ウィレム・デフォーまで,マイクを前にして楽しんで役になりきっていたであろう彼らの姿を想像しながら観るのは,実に楽しかった。
そんな中でも一番の驚愕は,FOXの恋女房に扮したメリル・ストリープだった。年齢的にはクルーニーと同じ干支で一回り上(1949年生 VS 1961生)にも拘わらず,ドキッとするような艶っぽい声で,姉さん的な女房役をものの見事に作り上げていた。やはり人間は,幾つになっても「艶っぽさ」を忘れてはいけないのだということを,深く深く肝に銘じるような名演(声)技に拍手。
チラシによれば,アンダーソンは子供の頃に原作を読んで「恋に落ちた」そうだが,そう聞いてアメリカにおけるロアルド・ダールの存在感の大きさというものを改めて感じた。ティム・バートンの「チャーリーとチョコレート工場」に,ダニー・デビートの「マチルダ」に,「ジャイアント・ピーチ」と続く作品群を見ていると,日本における宮沢賢治級の存在なのかなぁと思いを致しつつ,同じくダールのファンであるという宮崎駿による映画化作品も観てみたいなぁと想像を膨らませてみるリラ冷えの5月。
★★★★
(★★★★★が最高)