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映画「デッドプール」:大ヒットも納得の振り切れ感

かつてピープル誌で「最もセクシーな男」に選ばれ,その昔はアラニス・モリセットと婚約。その後はスカーレット・ヨハンソンと結婚し,現在は今を時めくブレイク・ライブリーの夫。この映画でも披露している鍛え上げた肉体は,ジェイク・ギレンホールと良い勝負。どんだけ恵まれたモテ男かという感じだが,私にとってのライアン・レイノルズは,本人には申し訳ないけれど,同じ名前でも「ドライブ」や「ブルー・バレンタイン」でブレイクした「ライアン・ゴズリング」の方から「哀愁」や「葛藤」や「孤独」を差し引いた俳優,というイメージしかなかった。
それがここへ来て,昨年日本公開された「黄金のアデーレ 名画の帰還」で,ヘレン・ミレンに引き回されることによって覚醒していく弁護士役が呼び水となったのか,「X-MEN」シリーズの末席に連なるマーベル作品で,とうとう大きな鉱脈を掘り当てたという印象だ。

マッドサイエンティストによって末期ガンからの生還と超人的なパワーを身に着けることと引き換えに,顔を醜く変形されてしまった男のシンプルな復讐劇なのだが,強きを挫き弱きを助ける純粋無垢な正義の味方というヒーロー像を,いちいち丁寧に二重線で訂正していくかのような主人公デッドプール(レイノルズ)の行動と台詞が,単なるパロディの枠を越えるような生命力を放っている。
昨日引退を宣言したハンマー投げの室伏広治によく似た仇敵フランシス(エド・スクライン)を圧倒するパワーを持ちながらも,「人は見かけが9割」というクリシェには簡単に打ち負かされ,「ベッカムはヘリウム声なのに,顔が良いからモテる」とふて腐れる姿こそが,まさに現代の迷える新しいヒーロー像として共感を呼んだのだろう。

監督のティム・ミラーはこれが長編デビュー作ということだが,レイノルズの汚点といわれる「グリーン・ランタン」を使った自虐ネタを筆頭に,その後の展開を「127時間」によって予告したり,「何度も娘を誘拐されるのがヘボ」と「96時間」を揶揄したりと,先輩諸氏の仕事を愛情を込めて笑い飛ばす術は,ただの鼠ではないという印象。
私が観た回は圧倒的に若い人が多かったが,ラストに流れるワム!の「ケアレス・ウィスパー」に爆笑できる世代の人にこそ薦めたい。
★★★☆
(★★★★★が最高)
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