子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。
子供はかまってくれない
映画「コンペティション」:駆け引きてんこ盛りの中,一番の「嘘」は今年49歳というペネロペの年齢か?
「笑う故郷」で主演のオスカル・マルティネスにベルリン国際映画祭の主演男優賞をもたらしたガストン・ドゥプラットとマリアーノ・コーンというアルゼンチン人の監督コンビニよる新作「コンペティション」を観ながら、何故か「1スジ2ヌケ3動作」という牧野省三が語った映画の極意を思い出していた。「スジ」プロット・脚本がしっかりしていて、「ヌケ」映像が美しく、「動作」俳優の所作が決まっている。ペネロペ・クルスとアントニオ・バンデラスという、まるで原節子と笠智衆級にどハマりしたキャスティングから想像されるレヴェルを超えた面白さに溢れた本作は、日本映画の父と呼ばれた往年の大監督が観ても「やるじゃないか」と拍手したに違いない。
才能と同量の強い癖を持つ映画監督(クルス)が、富豪の気まぐれで制作されることになった作品のリハーサルを、世代の異なる二人のスター(マルティネスとバンデラス)と共に行う様子を描いた「バックヤード」もの。
全編ほぼ3人のみによる虚実入り乱れた駆け引きてんこ盛りの芝居が繰り広げられるのだが、トライアングルを形成する3辺の濃淡と長短が、自由自在に変化していく様がなんともスリリング。監督がリハーサル中の男優二人の頭上にクレーンで巨岩を吊したり、二人をビニールでぐるぐる巻きにして動けない状態にしておいて、彼らの俳優としてのキャリアの集大成とも言えるトロフィーや思い出の品を彼らの目の前で破砕機にかけて粉々にするシーンなどは、「笑う故郷」のいたたまれなさに通じるユーモアとアイロニーに満ちている。
バンデラスが「自分は病気に罹っており余命幾ばくもないのだ」という嘘を二人に語って同情を誘うプロットは,そもそも毎秒24コマのフレームが連続してスクリーンに投影されたものが「活動」して見えるという,人間の視覚的な特性を利用した映画というメディアが抱える根源的な「嘘」を,鮮やかに転写したものとして迫ってくる。どうやら性的指向をオープンにしてはいない気配の監督が,部屋でひとりTikTok的な激しいダンスをするシーンが醸し出す開放感とは裏腹に,バンデラスの重大な秘密に気付いていながらも,それを封印したまま作品を撮り上げる監督のしたたかな決意が観客の心をグリップする握力の強さに,興行というコンペティションの審査員として一票を投じたい。
★★★★
(★★★★★が最高)
才能と同量の強い癖を持つ映画監督(クルス)が、富豪の気まぐれで制作されることになった作品のリハーサルを、世代の異なる二人のスター(マルティネスとバンデラス)と共に行う様子を描いた「バックヤード」もの。
全編ほぼ3人のみによる虚実入り乱れた駆け引きてんこ盛りの芝居が繰り広げられるのだが、トライアングルを形成する3辺の濃淡と長短が、自由自在に変化していく様がなんともスリリング。監督がリハーサル中の男優二人の頭上にクレーンで巨岩を吊したり、二人をビニールでぐるぐる巻きにして動けない状態にしておいて、彼らの俳優としてのキャリアの集大成とも言えるトロフィーや思い出の品を彼らの目の前で破砕機にかけて粉々にするシーンなどは、「笑う故郷」のいたたまれなさに通じるユーモアとアイロニーに満ちている。
バンデラスが「自分は病気に罹っており余命幾ばくもないのだ」という嘘を二人に語って同情を誘うプロットは,そもそも毎秒24コマのフレームが連続してスクリーンに投影されたものが「活動」して見えるという,人間の視覚的な特性を利用した映画というメディアが抱える根源的な「嘘」を,鮮やかに転写したものとして迫ってくる。どうやら性的指向をオープンにしてはいない気配の監督が,部屋でひとりTikTok的な激しいダンスをするシーンが醸し出す開放感とは裏腹に,バンデラスの重大な秘密に気付いていながらも,それを封印したまま作品を撮り上げる監督のしたたかな決意が観客の心をグリップする握力の強さに,興行というコンペティションの審査員として一票を投じたい。
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