子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

2009年TVドラマ春シーズンレビューその5:天海祐希の底力

2009年06月27日 23時14分13秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
飛び抜けた作品(未見のため論評できない「アイシテル」が心残りではあるのだが…)がなかった2009年春シーズンドラマがほぼ最終回を迎えた今週,とうとう「BOSS」が視聴率20%を超えてきた。

今シリーズ2度目となる2話完結の最終回は,犯人役に反町隆史,警視総監役に津川雅彦を配し,野立参事官補佐(竹野内豊)の裏切りというショッキングな筋立てを前面に打ち出したことが功を奏したのか,これまでも何度か超えそうなところまで行っていた20%という壁を,遂に破ることに成功したようだ。
しかしその内容はといえば,本来は複雑な内面を持つ得体の知れないテロリストだったはずの犯人像は,不気味の対極に位置する反町隆史の分かり易すぎる演技のおかげで,あっさりと捕まってしまう展開がお似合いの,単純な成り上がりの兄ちゃんと化してしまっており,本格警察ドラマとはほど遠い,緊迫感の欠如に苦しんでいるように見えた。
また,映画「ハゲタカ」ではそれなりの冴えを示していた林宏司の脚本は,クライマックスとなる野立射殺劇において,ジョージ・ロイ・ヒルの佳作「スティング」からのあからさまな引用が,興をそいでしまっていた。
更に言えば,仕掛けられた時限爆弾を解除する武田鉄矢と天海が腹の探り合いを行う件は,物語の進行上も必要ない上に,エピソードとしての工夫もタネもない,明らかに無駄なシーンだった。

しかしその一方で,コメディとしての「BOSS」の存在価値を提示した場面もまた,このシーンで武田に向かって天海が「むしろ,巨乳!」と声を張り上げて,胸を突き出す瞬間であり,この台詞を言わせたいがために無理矢理武田を引っ張り出してきたのだとしたら,この展開は技ありと褒め称えねばなるまい。
最終盤で,自作の「離婚弁護士」を引用して見せたシーンの茶目っ気を観る限り,確信犯なのは間違いないか。

同様のパロディで笑わせたのは,平均14.48%という手堅い数字を叩き出した「臨場」だ。
第9回で,倉石(内野聖陽)が老人ホームのヘルパー(吉本菜穂子)に対して「どっかで見たことあんなぁ」と言うのだが,それもそのはず,同じテレビ朝日系の「ゴンゾウ」で二人は上司(係長=内野)と部下(調達係員=吉本)という関係を演じていたのだった。

確かに地味ではあったが,後半に行くに従って数字を上げ,通算でも12.60%という及第点を取ったのはフジの「白い春」。
少し前のある週刊誌で「(白い春で)阿部寛が織田裕二化!」というセンセーショナルな見出しが躍っていたので,読んでみた。確かにテーマ曲の扱いに関する部分(阿部の意向で,ドラマの中では曲を流させなかったと書いてあった)は結果として事実だったが,阿部寛(と遠藤憲一)の熱意については,仮にそれが本当だったとしても,ドラマのクオリティを向上させることに貢献したことは間違いないと思わせるような出来だった。
シンプルな筋立て,少ない登場人物と台詞,クロースアップの多用,控えめに心情を綴る音楽。このドラマを際立たせていたスタイルに対する正当な評価には,少し時間が必要かもしれない。

好き勝手書いてきたが,花粉にもめげず完走した春ドラのスタッフ及びキャストの皆様,お疲れ様でした。夏もまたインドア派の私のために,楽しいドラマを一つよろしく。


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