子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

2008年春シーズンTVドラマレビューNO.2

2008年06月19日 22時54分26秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
(承前)
今クールにおいて2大学園ドラマに続いて話題をさらったのは,今,正にこの時間帯に最終回が放送されている「ラスト・フレンズ」だろう。しかし「のだめ~」の上野樹里が役者根性を見せたことを除くと,私の興味からは3万光年くらい隔たっていたために,最初の2回でめげてしまった。しかし,世間の感じ方は違ったようだ。終わりに近づくにつれて,尻上がりに上昇傾向を見せていた視聴率は,ついに先週,フジのもう一つの話題作「CHANGE」を抜いて,20%を超えてしまった。
気晴らしに観ているはずのTVドラマで,登場人物の痛くて辛い思いを共有したい人間などそう多くはないのではないかと思ったら,長澤まさみにいらいらしながら,ついついチャンネルを合わせてしまう,という人は私の周りも含めて,随分多かったようだ。

初回を1ヶ月以上ずらしてまで数字を取りに来たと覚しき一方の話題作「CHANGE」は,現実の与党の状況に軌を一にするように,期待通りには支持率(視聴率)を伸ばせていないようだ。
「HERO」や「ガリレオ」などで,着実に「はみ出しヒーロー路線」を歩んできた脚本家福田靖が挑んだ「新人国会議員,総理になるの巻」は,数字だけでなくドラマの活力の方も,長老議員の策略にはまった訳ではあるまいに,勢いを失ってきているように見える。
確かに深津絵里,阿部寛,加藤ローサ,大倉孝二らとの絡みは,リズミカルで楽しい。すっかり首相官邸になってしまった朝倉総理(木村拓哉)の私宅は,「疑似大家族」というこれからの日本における,新しい家庭の一つの可能性を示しているようで,これを突き詰めていけば「レアメタル(希少価値のある金属)」を探り当てられるような気さえしてくる。
しかしこれは,どんなにコメディ・パートを充実させたとしても,本質はあくまで政治を舞台にした,ビルドゥングス・ロマン(教養小説)のはずだ。
その意味で,朝倉がベテラン政治家やアメリカの外交官を「理想」を語ることによって,彼らを感化し,政治を変えていくという,ドラマの肝になる部分の描写が,余りに薄くて軽い。「兄」役の阿部寛や,先導役になり得る石黒賢を配しておきながら,権謀術数渦巻く魔界を「純粋さ」だけで泳ぎ切らせるという作者の狙いは,適度なリアリティすら放棄してしまう危険性をも秘めている。

一方その「リアリティ」という検索条件で抽出すると,今季最も点数が高かったのは,NHKの土曜ドラマ「トップ・セールス」だった(写真)。何のことはない,ドラマが真に迫っていたという訳ではなく,私と主人公の年齢が近かったため,登場するエピソード,服装・風俗を含む時代背景全てが,尽く懐かしかったということが大きく影響しているのだが…。
夏川結衣の固いのか柔らかいのか判然としない柄を活かした主人公のキャラクターも良かったのだが,高度成長期からバブルを経て現代へという「時代」そのものを,小細工をせずに正面に据えたことが,現代の大河ドラマのような雰囲気を醸し出すことに繋がっていた。

最後に触れておきたいのは,40歳前後の女性の生き方を立体的に描いて,「ROOKIES」や「絶対彼氏」を凌ぐ視聴率を叩き出していた「Around40」だ。
「アラフォー」という言葉は,女性雑誌の特集にも普通に使われているようだが,相変わらず凛々しい天海祐希,デビュー時以上に乗っている大塚寧々,そしてBIG MAMA松下由樹の絡みが,リアルに喧しかった。
しかしこのドラマで特筆すべきは,毎回彼女たちに素晴らしい料理を提供し,貧乏ビストロを経営しながら,秘めたる想いを燃やし続ける独身シェフ(筒井道隆)のキャラクターだろう。彼女たちのように自己実現を金科玉条とはせず,世の中には認められずとも,愚かにも世の理不尽に立ち向かい,静かに厨房に立ち続ける彼に幸あれ。(この項終わり)


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