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Coldplay「Viva La Vida」:バットの真芯で捉えた弾丸ライナー

コールドプレイのファースト・アルバムを聴いていなかった私が,バンドのフロントマンであるクリス・マーティンの名前を最初に聞いたのは,ブラッド・ピットと別れた女優のグウィネス・パルトロウが,結婚相手に選んだロック・ミュージシャンとしてだった。だからと言って「申し訳ない」と感じる筋合いはないのだが,チャレンジ精神と大衆性を高いレベルで止揚させたニューアルバムを前にして,私は素直に頭を垂れている。いやー,大した旦那様でした。

新作のプロデュースがブライアン・イーノと聞いて真っ先に思い浮かべたのは,やはりU2のことだった。深いリバーブ音を活かした独自の音作りが,「優れたポップソングを書くアイルランドの怒れる若者達」だった彼らを,1990年代のロックシーンにおける最大のイコンに昇華させるにあたって,多大な貢献をしたことは誰もが認めるところだ。

しかしこの新作では,U2のアルバムからある程度予想された音色の感触と同時に,同じくイーノのプロデュース作であるトーキング・ヘッズの大傑作「リメイン・イン・ライト」で開放感に満ちたアフリカン・リズムを導入した手法を想起させる,メリハリの利いたリズムへのチャレンジが,アルバム全体の印象に強い影響を与えている。
ポップソングとしての体裁を重んじてバランス良く楽曲をまとめることよりも,そんなリズムの力を信じることを優先させた結果,既に定評があったセンスの良いメロディが,強いビートに彩られてこれまで以上の輝きを発しているのだ。

ビートルズからジョイ・デヴィジョンまで,イギリスにおける大衆音楽の歴史を紐解くようなコンセプトを持った様々な曲を詰め込み,アルバムとして俯瞰した時にようやく全体像が掴めるような制作姿勢が,見事な結果に繋がったと言える。
U2の「The Unforgettable Fire」を想起させるようなアンビエントな響きが印象的な「Death And All His Friends」で締め括られるアルバムを聴き終えた時,その響きがそのまま1曲目の「Life In Technicolor」(昨年デビューしたMikaに対する,ヴェテランの歓迎歌のようなタイトルだ!)のイントロになだれ込むという,至福のリピートから抜け出せない人が世界中で発生しているはずだ。お気の毒様,私も含めて。
★★★★1/2
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