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2008シーズンを終えたJリーグについて思うことNO.3:秋春シーズン制

(写真はJリーグ第34節札幌VS鹿島戦)

先月末突如として,犬飼日本サッカー協会会長と鬼武Jリーグチェアマンの間で,バトルが勃発した。バトルの「タイトル」は二つ。一つは秋春シーズン制への移行であり,もう一つはナビスコ杯の若手選手限定化だ。

まず後者について考えてみたい。ACLへの出場チーム数の増加に下位チームの力量接近という状況も加わって,上位から下位チームまでこぞってリーグ戦を偏重する,という傾向はこれまで以上に強くなるものと考えられる。
そうした状況は,下手をすると5~6チームが降格争いに絡む一方で,優勝の可能性は勿論,ACL出場の可能性まで含めると上位の5~6チームも最後の1勝をもぎ取ろうと,全力を振り絞ることになった今年の最終節に顕著に現れている。

これはJリーグ全体の活性化という観点からは,ある意味で非常に望ましい状態と言えるのかもしれないが,結果的に若手の修練の場は,試合数が極端に少なく本当の真剣勝負とは言い難いサテライトリーグに限定される,という結果をも招来している。若手がガチンコ勝負によって実戦経験を積む場が減ってきているという状況が,選手育成という観点から観て,リーグ全体を危機的状況に陥れるという危険性はかなり高い。
北京の惨敗を繰り返さないという反省の下,そうした状況を打破するためにナビスコを若手に開放するという案は,議論する価値のある非常に有効な案だと私も思う。だから問題は前者だ。

事の発端は,現在のJリーグのシーズン3月~12月が,サッカーの中心地である欧州のシーズン8,9月~5月とずれているために,選手の移動や代表戦のマッチメイキングに支障を生じる,という状況を何とか是正したい,という犬飼会長の希望の表明のようだ。
マスコミが煽り立てただけだったのかもしれないバトルの後,何故かあっさりと会長と手打ちをした鬼武チェアマンが,会長の意を汲んでJクラブを集め,秋春シーズン制への移行に関するヒアリングまで行ったようだ。

ただ欧州のシーズンが秋春制だと,殆どのメディアが口を揃えて書き立ててはいるが,メジャーなリーグ以外にも目を向けると,現実には一様ではないということが分かる。
冬の寒さが厳しいロシアリーグやノルウェーリーグはJと同じ春秋制だし,夏春制を採用しているスイスは,真夏の7月に開幕して冬季シーズンは試合を休む。
つまり犬飼会長が十把一絡げで取り上げた欧州の中でも,日本の東北以北と同様の積雪寒冷地では,やはり真冬のサッカーは難しい,というのが実態なのだ。

翻って2009シーズンの日本のJリーグにおける積雪寒冷地のチームとしては,札幌,新潟,山形,富山の4チームが挙げられる。平均気温や降雪量にはかなりの差があるが,少なくとも真冬に積雪があるというハンデは共通している。
Jリーグ側は人工芝での開催も示唆しているようだが,天然芝コートをホームとするチームと比べた場合の身体への負担,広いコートの除雪,更には氷点下も有り得る天候下での動員など,北国チームのハンデは限りなく大きなものとなることが予想される。

更に冬期間の動員という点については,雪国以外の地域でも相当の懸念がある。フランスやイタリア,スペインなどの地中海性気候の国々で寒さ対策に取り組んだ例は寡聞にして聞かないが,ドイツやオランダなどの内陸国ではスタンドにヒーターを施したスタジアムもあるようだ。
日本のシーズンを冬にぶつけた場合には,積雪寒冷地以外でもそういった対策を望む声が出てくることが充分に予想される。
亜熱帯に属する地域を抱える日本で真夏の夜に行う試合と氷点下の試合,それぞれにおける選手の負担と観客への影響,それにゲームの質も含めた総合的かつ慎重な評価は欠かせないはずだ。

確かに外国人選手の補強の面や,めっきり数が少なくなってしまったがJから欧州への移籍に関しては,シーズンが異なることに起因するハンデがあることは,認めなければならないだろう。国際マッチデーが主要欧州リーグの日程を基準に決められていることも,紛う事なき事実だ。
しかしここまでサッカーが世界中に普及した理由として,サッカーが他の種目に比べ特に種々の地域性が滲み出やすい競技だという特性は,無視できないはずだ。
日本サッカー協会には,欧州基準のグローバル化に安易に追随することなく,最近の流行りではないが「グローカル」な視点からJリーグを世界に羽ばたかせる,という意気込みを持ってしっかりと考えて欲しい,と願う。
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