子供はかまってくれない

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映画「タンタンの冒険 ユニコーン号の秘密」:ペッグ&フロストコンビの脚本で出直しを

2011年12月30日 11時07分22秒 | 映画(新作レヴュー)
大貫妙子の歌でその存在を知ってからおよそ四半世紀。この間,愛らしいキャラクターがあしらわれたシャツや文房具を目にしたり,「インディ・ジョーンズ」シリーズのネタではないかという論争を聞いたりしたことはあったものの,結局全世界における発行部数2億3千万部を誇るというオリジナルの原作は書店で立ち読みした程度で,その人気の秘密というのはよく分からないというのが,正直な感想だった。そんな状態でスピルバーグが映画化した本作に相対することとなったのだが,結論から言えば,モーションキャプチャーを駆使したアニメーションによる映像化というアプローチは正しかったようで,絵から受ける印象はほぼストレートに「モーション・ピクチャー」に移し替えられていると言って良いだろう。そんな技術的なチャレンジの成否が,映画作品としての評価とイコールではないことは勿論だが,前作「インディー・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国」の出来に比べれば,遙かに安心して観ていられる水準に到達している。

特にラスト近く,秘宝のありかが書かれた羊皮紙を巡って繰り広げられる車とバイクの追跡劇は,一度観ただけでは一体何が起こっているのか,その概要を掴むことすら困難なくらい膨大な情報量が詰め込まれていて,圧倒される。
好奇心に溢れていながら,駄洒落ではないがどこか「淡々」と危険な冒険へと足を踏み入れていく「タンタン」独特の雰囲気を活かしつつ,「アバター」をも凌ぐ流麗なカメラワークによって,アクションの自由度を拡げて見せた功績は大きい。
このところなりを潜めていたコメディ的な要素が,復活の兆しを見せていることも喜ばしい。

だが先に挙げた論争ではないが,先行して創り上げた「インディ・ジョーンズ」シリーズの存在によって,「いつか観たような」という既視感が至る所で顔を覗かせることは否めない。
特に今作では,タンタンが物語の主人公というよりも,はるか昔に海賊対船長として対峙した時代からの因縁を引きずるハドック対サッカリンの引き立て役に甘んじているという筋立てもあって,冒険譚が持つべき高揚感に欠けるのは致命的だ。
「宇宙人ポール」でも見事な仕事を見せたサイモン・ペッグ&ニック・フロストの才人コンビが,役者(声優)に徹して脚本に参加していない(その代わりに盟友エドガー・ライトが脚本チームに加わってはいるが)のが,返す返すも悔やまれる。

ただ私が観たのが2D版だったため,3D版でくだんの追跡劇を観たなら,そんな不満を吹き飛ばすほどの巧緻な技を見せつけられた可能性も否定できないので,採点はあくまで2D版限定ということで。
★★★
(★★★★★が最高)


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