子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。
子供はかまってくれない
映画「ダーク・プレイス」:「ゴーン・ガール」の原作者という魅力
ロザムンド・パイクの熱演とデヴィッド・フィンチャーの周到な演出という要素も大きかったとは言え,「ゴーン・ガール」の鮮烈なヒロイン像は,やはり原作者であるギリアン・フリンの筆力に負うところが大きいと感じた観客は多かったはず。文字通り身体を張って生き延びるんだという執念の強さにおいて,夫を出し抜いたヒロインのビッチ振りは,ミステリーの映画化作品の歴史に残る強烈なものだった。
その原作者が再びミステリーに挑んだと聞いて,「ゴーン・ガール」にノックアウトされた一人である私も,勇躍劇場に駆け付けてみたのだが…。
今回のヒロインはシャーリーズ・セロン。8歳の時に自宅で,兄の手で母と姉を殺されるという事件に巻き込まれながらただ一人生き残ったリビー(セロン)は,成人した後も事件の残滓によって食いつなぐような生活をしている。そこに現れたのは未解決の事件を趣味で捜査する民間人のグループ「殺人クラブ」の主宰者の若者ライル(ニコラス・ホルト)。収監されている兄は,果たして本当の犯人だったのか。母が死ぬ直前にリビーに囁いた「愛しているわ」という言葉の意味は何だったのか。徐々に事件の真相が明らかになっていく,という展開は,確かに「ゴーン・ガール」を彷彿とさせる物語と言えなくもない。
ジョージ・ミラー奇跡のカムバック作「マッドマックス 怒りのデス・ロード」から連続となるシャーリーズ・セロンとニコラス・ホルトという組み合わせ自体は,キャラクターの凸凹の噛み合わせという点で,うまく機能していると言える。リビーには「ゴーン・ガール」におけるエイミーのように自ら血まみれとなってまでサバイブしようとする強いエネルギーはないものの,自らが書き換えた記憶と母への思慕,そして罪を被った兄に対する自責の狭間で揺れる複雑な役柄を,セロンは余裕すら感じさせるアプローチでじっくりと立体化している。一方のホルトも,オタク的な興味を推進力に真実を追求する在野の良心という,「マッドマックス〜」における狂気の戦士とは遥かに隔たった役柄をクールに演じて見応えがある。
しかし,肝心の謎解き部分が決定的に弱い。劇中の時制と物語の経過とが一致していた「ゴーン・ガール」では,ヒロインの行動をストレートに絵解きすればそれで良かったのだが,過去の犯行時に遡って犯人を明らかにしなければならない本作の場合,ミステリーを解き明かす鍵こそが物語のクライマックスに据えられるべきだったのに,それが「犯人が分かった」というライルの電話一本に収斂させるという展開は,腰砕け以外の何物でもない。消化不良と言わざるを得ないクロエ・グレース=モレッツの扱いも含めて,気持ちだけは「ダーク」になった。
★★☆
(★★★★★が最高)
その原作者が再びミステリーに挑んだと聞いて,「ゴーン・ガール」にノックアウトされた一人である私も,勇躍劇場に駆け付けてみたのだが…。
今回のヒロインはシャーリーズ・セロン。8歳の時に自宅で,兄の手で母と姉を殺されるという事件に巻き込まれながらただ一人生き残ったリビー(セロン)は,成人した後も事件の残滓によって食いつなぐような生活をしている。そこに現れたのは未解決の事件を趣味で捜査する民間人のグループ「殺人クラブ」の主宰者の若者ライル(ニコラス・ホルト)。収監されている兄は,果たして本当の犯人だったのか。母が死ぬ直前にリビーに囁いた「愛しているわ」という言葉の意味は何だったのか。徐々に事件の真相が明らかになっていく,という展開は,確かに「ゴーン・ガール」を彷彿とさせる物語と言えなくもない。
ジョージ・ミラー奇跡のカムバック作「マッドマックス 怒りのデス・ロード」から連続となるシャーリーズ・セロンとニコラス・ホルトという組み合わせ自体は,キャラクターの凸凹の噛み合わせという点で,うまく機能していると言える。リビーには「ゴーン・ガール」におけるエイミーのように自ら血まみれとなってまでサバイブしようとする強いエネルギーはないものの,自らが書き換えた記憶と母への思慕,そして罪を被った兄に対する自責の狭間で揺れる複雑な役柄を,セロンは余裕すら感じさせるアプローチでじっくりと立体化している。一方のホルトも,オタク的な興味を推進力に真実を追求する在野の良心という,「マッドマックス〜」における狂気の戦士とは遥かに隔たった役柄をクールに演じて見応えがある。
しかし,肝心の謎解き部分が決定的に弱い。劇中の時制と物語の経過とが一致していた「ゴーン・ガール」では,ヒロインの行動をストレートに絵解きすればそれで良かったのだが,過去の犯行時に遡って犯人を明らかにしなければならない本作の場合,ミステリーを解き明かす鍵こそが物語のクライマックスに据えられるべきだったのに,それが「犯人が分かった」というライルの電話一本に収斂させるという展開は,腰砕け以外の何物でもない。消化不良と言わざるを得ないクロエ・グレース=モレッツの扱いも含めて,気持ちだけは「ダーク」になった。
★★☆
(★★★★★が最高)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 映画「帰って... | 映画「ブルッ... » |
コメント |
コメントはありません。 |
コメントを投稿する |
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません |