子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。
子供はかまってくれない
映画「ボーダーライン ソルジャーズ・デイ」:より深く激しくなる対立
過酷な麻薬戦争を描いて,エミリー・ブラントに「闘うヒロイン」という強烈なイメージを附加した「ボーダーライン」は,監督のドニ・ヴィルヌーヴにとってもその激しいアクション描写によって「ブレードランナー2049」へと繋がる道を切り拓いた重要な作品だったと言っても良いだろう。ただ,敵は誰であろうと徹底的に叩き潰す,というメッセージが鮮烈だったラストに,続編が作られる気配は感じ取れなかった。加えて監督も交代し,エミリー・ブラントは出演しないと聞いて,どんな作品になるのだろうかと少々訝りながら劇場に向かったのだが,結果は続編がオリジナルを上回るという,極めて稀なグループに属する作品となっていた。鍵は脚本だった。
中東のテロリストがメキシコ経由でアメリカに密入国しているという情報をCIAのマット(ジョシュ・ブローリン)が入手する。その手引きをしていると思われる麻薬カルテルのボスを潰すために,ボスの娘イサベルを誘拐し,それが敵対するカルテルの仕業と見せかけるというミッションを,マットはアレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)に依頼する。ところがそのミッションを遂行中に,メキシコ警察が娘を奪還すべく誘拐チームを急襲する。米国防省はCIAに証拠隠滅のためアレハンドロと娘の暗殺を命じるが,アレハンドロたちを先に見つけて捕らえたのは,国境で移民の密入国を手伝っていた少年ミゲルだった。
物語の本線は1本道なのだが,冒頭の自爆テロに関するプロットから,メキシコの国境付近で生きる貧しい家族のエピソードまで,輻輳して本線に絡んでくる幾つものプロットを手際よく捌いて観客を椅子に縛り付けるのは,第一作から続投している脚本家のテイラー・シェリダンの力業だ。国家レヴェルの麻薬戦争を,疑似親子のロードムービーとして自立させるという偉業は,まるで「これはヴィルヌーヴではなく私の物語なのだ」とでも言いたげなシェリダンの職人的な技巧あってこそ。そこへまさに「厳つい」を絵に描いたような二人の男=ブローリン&デル・トロを立たせただけで,劇場にはメキシコ国境の砂が舞うような錯覚さえ覚えさせるような無常観が漂い出す。こうなると1本の続編どころか,麻薬戦争を超える新たな「国境紛争サーガ」として,メキシコ版「仁義なき戦い」が成立してしまったような印象も受ける。
殺したはずのアレハンドロが生きていることを知って驚くミゲルに,アレハンドロが手をさしのべるラストは,誰もが暴力の果てに輝く蝋燭の光を見るような気持ちになるはず。トランプ大統領だけは無理だろうけど。
★★★★
(★★★★★が最高)
中東のテロリストがメキシコ経由でアメリカに密入国しているという情報をCIAのマット(ジョシュ・ブローリン)が入手する。その手引きをしていると思われる麻薬カルテルのボスを潰すために,ボスの娘イサベルを誘拐し,それが敵対するカルテルの仕業と見せかけるというミッションを,マットはアレハンドロ(ベニチオ・デル・トロ)に依頼する。ところがそのミッションを遂行中に,メキシコ警察が娘を奪還すべく誘拐チームを急襲する。米国防省はCIAに証拠隠滅のためアレハンドロと娘の暗殺を命じるが,アレハンドロたちを先に見つけて捕らえたのは,国境で移民の密入国を手伝っていた少年ミゲルだった。
物語の本線は1本道なのだが,冒頭の自爆テロに関するプロットから,メキシコの国境付近で生きる貧しい家族のエピソードまで,輻輳して本線に絡んでくる幾つものプロットを手際よく捌いて観客を椅子に縛り付けるのは,第一作から続投している脚本家のテイラー・シェリダンの力業だ。国家レヴェルの麻薬戦争を,疑似親子のロードムービーとして自立させるという偉業は,まるで「これはヴィルヌーヴではなく私の物語なのだ」とでも言いたげなシェリダンの職人的な技巧あってこそ。そこへまさに「厳つい」を絵に描いたような二人の男=ブローリン&デル・トロを立たせただけで,劇場にはメキシコ国境の砂が舞うような錯覚さえ覚えさせるような無常観が漂い出す。こうなると1本の続編どころか,麻薬戦争を超える新たな「国境紛争サーガ」として,メキシコ版「仁義なき戦い」が成立してしまったような印象も受ける。
殺したはずのアレハンドロが生きていることを知って驚くミゲルに,アレハンドロが手をさしのべるラストは,誰もが暴力の果てに輝く蝋燭の光を見るような気持ちになるはず。トランプ大統領だけは無理だろうけど。
★★★★
(★★★★★が最高)
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