子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。
子供はかまってくれない
映画「おかえり,ブルゴーニュへ」:クラピッシュ,田舎へ
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/17/09/3c030da25a2c36fadc069ef8ecb60437.jpg)
「百貨店大百科」という,デパート発祥の地からやって来た賑々しいタイトルに惹かれてデビュー作品を観てからもう四半世紀。三谷幸喜氏が好んで取り上げそうな題材を,三谷作品とはまったく異なる軽やかな映画的なリズム感でまとめ上げた佳品から一貫して,大都会を舞台に若者の煮え切らない,しかしリアルな生活を描いてきたセドリック・クラピッシュがブルゴーニュに脱出するとは!フランスから遠く離れた日本において主要な政策課題となった「地方創生」に倣ったのか。その謎を解くべく劇場に駆け付けたのだが,やはり作品の本質は何も変わっていなかった。ぐだぐだ悩みながらも前へ進もうとする若者は,都会と同様に美しい葡萄畑の真ん中にもちゃんといた。
父親が手塩にかけて育ててきたブルゴーニュの葡萄農園・醸造所。父から姉と弟が引き継いで経営していたのだが,父の死後遺産を整理してみると相続税が払えない程,経営が逼迫していたことが判明する。若い頃に家を出て世界を放浪し続け,母の葬式にも戻らなかったのに,何故か父の死の直前になって豪州から帰ってきた兄を含めた三人の兄妹は,そのまま農園の経営を継続するのか,弟の裕福な義父に売却するのか,重大な岐路に立たされる。
親の家業を子供が継ぐのかどうかという,世界共通の普遍的課題をストーリーの基軸に据え,兄の家庭問題や弟の義父との確執,更には出稼ぎ労働者の労務管理までもを横糸に使うという賑やかな構成ながら,ブルゴーニュの長閑な田園風景やワイン造りの細やかな描写がクッションになって,普段のクラピッシュ作品よりもややテンポを落として物語は展開していく。
ただ子供時代の想い出をカットバックで挟みながら,ゆったりとしたリズムで進むドラマからやがて浮かび上がってくるのは,兄弟愛や家庭の尊さという,本来メインになると考えたであろうテーマよりも,ワイン農家=ドメーヌの偉大さの方だ。
農業という自然相手のもの作りと,正真正銘の製造業である「ワイン造り」という異なる仕事を一手に引き受けて,なおかつ人事のマネジメントまでこなしながらワインという一種の「芸術作品」を拵える仕事に,ある意味映画作りにも通じるものをクラピッシュは感じ取ったのだろう。ワイン好きには常識なのだろうが,茎をどこまで残して発酵させるのかが味の深みを決める要点だなんて,初めて知った。「伊丹十三作品」とはまたひと味違う,お洒落な「お仕事ムービー」と言えるかもしれない。
弟役のフランソワ・シビルは,ちょっとイーサン・ホークの若い頃を思い出させて楽しみ。家にブランコのある農家,羨ましい。
★★★☆
(★★★★★が最高)
父親が手塩にかけて育ててきたブルゴーニュの葡萄農園・醸造所。父から姉と弟が引き継いで経営していたのだが,父の死後遺産を整理してみると相続税が払えない程,経営が逼迫していたことが判明する。若い頃に家を出て世界を放浪し続け,母の葬式にも戻らなかったのに,何故か父の死の直前になって豪州から帰ってきた兄を含めた三人の兄妹は,そのまま農園の経営を継続するのか,弟の裕福な義父に売却するのか,重大な岐路に立たされる。
親の家業を子供が継ぐのかどうかという,世界共通の普遍的課題をストーリーの基軸に据え,兄の家庭問題や弟の義父との確執,更には出稼ぎ労働者の労務管理までもを横糸に使うという賑やかな構成ながら,ブルゴーニュの長閑な田園風景やワイン造りの細やかな描写がクッションになって,普段のクラピッシュ作品よりもややテンポを落として物語は展開していく。
ただ子供時代の想い出をカットバックで挟みながら,ゆったりとしたリズムで進むドラマからやがて浮かび上がってくるのは,兄弟愛や家庭の尊さという,本来メインになると考えたであろうテーマよりも,ワイン農家=ドメーヌの偉大さの方だ。
農業という自然相手のもの作りと,正真正銘の製造業である「ワイン造り」という異なる仕事を一手に引き受けて,なおかつ人事のマネジメントまでこなしながらワインという一種の「芸術作品」を拵える仕事に,ある意味映画作りにも通じるものをクラピッシュは感じ取ったのだろう。ワイン好きには常識なのだろうが,茎をどこまで残して発酵させるのかが味の深みを決める要点だなんて,初めて知った。「伊丹十三作品」とはまたひと味違う,お洒落な「お仕事ムービー」と言えるかもしれない。
弟役のフランソワ・シビルは,ちょっとイーサン・ホークの若い頃を思い出させて楽しみ。家にブランコのある農家,羨ましい。
★★★☆
(★★★★★が最高)
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