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TALKING HEADS「Remain In Light」:ニューヨークの画学生VSアフリカ大陸

当時の私にとっては,ニューヨークのパンク・グループという漠然とした括りの中にあって,ちょっとはみ出た位置に立ち,エキセントリックかつ飄々とギターをカッティングし続けるびっくり眼のヴォーカル,という印象しかなかった,トーキング・ヘッズの4枚目のアルバム。

しかしそれは,4曲目のタイトル「Once In A Lifetime」が象徴するとおり,正に天地がひっくり返るような衝撃となって,私の前に出現した。ザ・バンドの解散以降の数年間,漫然という以外の姿勢で音楽に接することが出来なくなっていた当時20歳の私は,このアルバムを聴いた瞬間,この世には「一体何だ,これは?」という種類の感動もあるということを知ったのだった。

1曲目の「Born Under Punches (The Heat Goes On)」,ギターが刻む鋭角的なビートにキーボードが絡み,それがデヴィッド・バーンの呪術的なヴォーカルと一体となって醸し出す空間には,何度聴いても身体の芯を弾かれるような何者かが潜んでいる。

後から聴き直して分かったことだが,既に以前のアルバムでもアフリカ的なファンクビートに挑戦していた彼らが,本作ではナイジェリアのフェラ・クティが得意とするようなうねるビートを大胆に導入し,それを最新の電子楽器とエイドリアン・ブリューのしなるギターにぶつけることによって生じた火花は,仕掛け人のブライアン・イーノが予想した以上の効果を生み出した。

イーノとバーンが組んで世界中の音をコラージュしたリアルな音のドキュメント「My Life in the Bush of Ghosts」,更に次作を挟んで行ったライブをジョナサン・デミが映像として完璧にパッケージした「ストップ・メイキング・センス」と続いたこの時期,デヴィッド・バーンの仕事は本当に凄かった。
結局バンド自体は,本作がもたらした大きなインパクトに窒息しているかのような印象と足跡を残しつつ1991年に解散したが,パンク以降のギターバンドにリズムの持つ力を再認識させ,80年代以降のロックの方向性を示唆したとも言える本作は,永く後世に伝えられるべき偉業だ。
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