子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。
子供はかまってくれない
映画「ダークナイト ライジング」:ダークなのに開放感を強く感じさせる大団円が見事
ティム・バートンとマイケル・キートンという,今から見たら「何故?」と首を傾げたくなるようコンビから始まり,途中ジョエル・シューマッカーとジョージ・クルーニーという,これまた適性という点では微妙なチームを挟んだ後,クリストファー・ノーランとクリスチャン・ベール(ブルース・ウェイン=バットマン)の現コンビに落ち着いて早3作目。コミックの映画化という出自にも拘わらず,映像に注ぎ込まれた膨大なエネルギーと熱狂的な人気において,「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズにも匹敵する成果を挙げたトリロジーが遂に完結した。
公開直前にコロラド州で起こった悲惨な事件によって,不吉なイメージをまとわされてしまった最終作だが,ヒース・レジャーの名演技と善悪の曖昧な境界で繰り広げられる闘いという,従来のアメコミヒーローものでは考えられなかった設定を活かした重厚な作りで歴史に名を刻んだ第2作に勝るとも劣らない,見事な作品となった。
ただ作品の細部に注目すると,「うん?」と首を傾げてしまうような場面は多かった。敵役となるベイン(トム・ハーディ)とミランダ(マリオン・コティヤール)が幽閉された監獄を巡るエピソードや,セリーナ(アン・ハサウェイ)の立ち位置と改心に到った動機,ドラマの中盤で突如として姿を消してしまう執事(マイケル・ケイン)の行方,更にはこれまでハリウッド作品で何度も繰り返されてきたのと同様の核爆発の安易な描写など,「インセプション」において物語のダイナミズムを超えて,ひたすら複数の時間軸の整合性に心を砕いたノーランの仕事とは思えない大雑把な展開に,興ざめした観客もいたかもしれない。
だが世評が高かった「インセプション」を,熟成までに年月をかけ過ぎてかえってスピード感を失ってしまった「SO」以降の,ピーター・ゲイブリエルの諸作品のように感じた私にとっては,この「ダークナイト ライジング」のごちゃごちゃしているけれども,最後は勢いで押し切ってしまおうぜ的な姿勢の方が,圧倒的に買いだ。
手間を惜しまずあえて多くしたと思しき実写とCGとのバランス,ノーラン一家棚卸しみたいな大勢のキャストのキラキラ感,そして「ダークナイト」同様,バイクの疾走感を軸にした数多のアクションのキレ,どれを取っても超一流の出来映えだ。「メメント」以降の全ての作品でノーランと組んでいるウォーリー・フィスターの精密な撮影を,監督が薦める「IMAX」で鑑賞することが叶わなかったことが返す返すも悔やまれる。
ここ日本においては興行的に外してしまったようだが,前作まで追いかけてきていながら,本作でブルースがゴードン市警本部長(ゲーリー・オールドマン)にヒーローの定義を語る,まさに涙なくしては見られない名場面を見逃した皆さん,残念でした。
★★★★☆
(★★★★★が最高)
公開直前にコロラド州で起こった悲惨な事件によって,不吉なイメージをまとわされてしまった最終作だが,ヒース・レジャーの名演技と善悪の曖昧な境界で繰り広げられる闘いという,従来のアメコミヒーローものでは考えられなかった設定を活かした重厚な作りで歴史に名を刻んだ第2作に勝るとも劣らない,見事な作品となった。
ただ作品の細部に注目すると,「うん?」と首を傾げてしまうような場面は多かった。敵役となるベイン(トム・ハーディ)とミランダ(マリオン・コティヤール)が幽閉された監獄を巡るエピソードや,セリーナ(アン・ハサウェイ)の立ち位置と改心に到った動機,ドラマの中盤で突如として姿を消してしまう執事(マイケル・ケイン)の行方,更にはこれまでハリウッド作品で何度も繰り返されてきたのと同様の核爆発の安易な描写など,「インセプション」において物語のダイナミズムを超えて,ひたすら複数の時間軸の整合性に心を砕いたノーランの仕事とは思えない大雑把な展開に,興ざめした観客もいたかもしれない。
だが世評が高かった「インセプション」を,熟成までに年月をかけ過ぎてかえってスピード感を失ってしまった「SO」以降の,ピーター・ゲイブリエルの諸作品のように感じた私にとっては,この「ダークナイト ライジング」のごちゃごちゃしているけれども,最後は勢いで押し切ってしまおうぜ的な姿勢の方が,圧倒的に買いだ。
手間を惜しまずあえて多くしたと思しき実写とCGとのバランス,ノーラン一家棚卸しみたいな大勢のキャストのキラキラ感,そして「ダークナイト」同様,バイクの疾走感を軸にした数多のアクションのキレ,どれを取っても超一流の出来映えだ。「メメント」以降の全ての作品でノーランと組んでいるウォーリー・フィスターの精密な撮影を,監督が薦める「IMAX」で鑑賞することが叶わなかったことが返す返すも悔やまれる。
ここ日本においては興行的に外してしまったようだが,前作まで追いかけてきていながら,本作でブルースがゴードン市警本部長(ゲーリー・オールドマン)にヒーローの定義を語る,まさに涙なくしては見られない名場面を見逃した皆さん,残念でした。
★★★★☆
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