goo

映画「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」:愛と絆とワーカホリック

「ドルトン・トランボとの仕事を打ち切れ!」と圧力をかけてきた男に対して,B級映画の制作会社のオーナーであるフランク・キングが,自分の仕事部屋にも拘わらずバットを滅茶苦茶に振り回して追い払ってしまうシーンがある。そのキングを,かつて「夢を生きた男/ザ・ベイブ」で,伝説のホームラン王ベーブ・ルースに扮したジョン・グッドマンが演じる。もうこれだけでOKという気持になってしまう。
赤狩りで映画界を追われた脚本家ダルトン・トランボの半生を描いた「トランボ ハリウッドに最も嫌われた男」は,ライトなコメディ映画を数多く撮ってきたジェイ・ローチならではのアプローチで,赤狩りの真実に迫った秀作だ。

「ローマの休日」でアカデミー賞に輝いた脚本は,当時ハリウッドを追放されていた「ハリウッド・テン」のひとりダルトン・トランボが,他人名義で書いたものだった。今となっては誰もが知っているエピソードを中心に据えてトランボの半生を描いた本作は,筋を追っただけではその面白さが伝わらない,失礼ながら意外に底の深いドラマとなっていた。
プロットとしては,非米活動委員会対トランボという対決構図が表面上の中心になっているのだが,その裏でトランボを映画界から追放するきっかけとなった記事を書いたコラムニスト,ヘッダ・ホッパー役にヘレン・ミレンを据えることによって,対決ドラマとしての迫力が増したという印象が強い。「クイーン」のイメージが鮮烈なミレンが,トランボの正面に立ちはだかる偏向ジャーナリズムの代表者として光を放てば放つ程,「信念の人」というトランボ(ブライアン・クランストン,好演)のキャラクターがその光を反射して輝くというフレームが効いている。

そんな一種の「アクション映画」としての面白さに加えて,映画界から追放され表舞台から消えた後,生活のため,トランボが追放された仲間と共にB級映画の脚本をひたすら書きまくるプロットの熱量が凄い。浴室でバスユニットにすっぽりとはまり込んでタイプライターを叩きながら「今,この家が火事になっても(風呂のお湯に守られている)私は生き残る」と嘯く姿は笑える。
仕事に熱中するあまり,自分の誕生祝いにも顔を出さない父に愛想を尽かす娘(エル・ファニング)との愛憎劇,仲間の病気や裏切りといったお決まりのサブ・プロットに加えて,冒頭に記したキングとのビジネスを介した友情劇が,ドラマを巡る血流量を増す重要な役割を果たしている。
大した作品ではなさそうだが「黒い牡牛」,観てみようかな。
★★★★
(★★★★★が最高)
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )
« 映画「ヤング... 2016年J2リー... »
 
コメント
 
コメントはありません。
コメントを投稿する
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません
 
名前
タイトル
URL
コメント
コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

数字4桁を入力し、投稿ボタンを押してください。