子供はかまってくれない

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コンサドーレ札幌VS水戸ホーリーホック【2:1】コンサドーレがJ1に残るために

2007年12月04日 21時23分56秒 | サッカーあれこれ
先週の土曜日,コンサドーレ札幌が12位の水戸を振り切って5年振りのJ1昇格を決めた。私は行列に並ぶことが,絵文字入りのメールを読むことと同じくらい苦手なのだが,この日の結末は寒空の下でキックオフ3時間前から並んだ甲斐があった,と言えるものになった。

2万8千人の歓声は,コンサの試合ではこれまで聞いたことがないくらい大きく,熱く,昇格の歓びを分かち合おうというニュアンスに溢れて,感動的とさえ言えた。
ただ,本当の闘いはこれから始まる。そんなことを昇格の日に考えたのも,とても歓びに浸っていられないくらい,試合内容がお寒いものだったからだ。それは氷点下の外気温以下と思えるくらいに。

まず4枚のバックラインは,全員が横に拡がったCBとばかりにラインを崩さない。現代のサッカーにおいては,サイドに時折生まれるスペースを目の前にして,攻め上がる誘惑に駆られないサイドバックはいないはずだ。しかし禁欲的なコンサドーレ札幌のDF陣は違う。どんな誘いにも動じない訓練を受けた彼らは,あくまでラインを守ってハイボールを弾き返し,中盤を省略したロングフィードを繰り返した。

ボランチは両サイドのアタッカーを追い越すことは許されず,時折DFラインに吸収されることはあっても,トップに入ったくさびを拾ってシュートする,という場面はあってはならないかのようだった。FWを追い越す動きは,一試合に一度だけ,サイドプレーヤーのみに許された特権であるかのように。

更にFWの一枚,中山元気選手はその名の如く,自らのガソリンが切れるまで相手のフィードを邪魔する役目を全うしなければならなかったようだ。シュートにチャレンジする,という項目は,彼の役目が書かれたメニューの一番最後に書かれてあるが,優先度は曽田のヘッドよりも遙かに低かったに違いない。

と,揶揄するように書いてきたが,実際にあの試合を結果に関係なく観戦した観客の中に「面白かった」とか「スリリングで満足した」と感じた観客は皆無だっただろう。
しかし48試合(来年から42試合になる)という長丁場のJ2を勝ち抜くためには,チームが有機的に連動してボールを動かし,ポゼッションとスピードを両立させながら勝ち点を稼ぐというよりも,とにかく失点を少なくして省エネに徹し,如何にして効率良く1点差の試合を拾っていくか,ということが大切だったのだ。

そして今年のコンサは,この水戸戦が象徴するように,その通りのサッカーを最後まで貫いた。フッキが抜けて明らかに得点力が落ち,他のポジションの目立った上積みはなかったのにも関わらず,勝ち点を拾い続けられたのは,三浦監督の統率力と辛抱第一の試合展開を耐え忍んで乗り切った選手の頑張りの賜物に他ならない。

しかし来年はJ1だ。レギュラーシーズンは34試合に減る代わりに,1試合,1試合がJ2とはレヴェルの違う重みと消耗度で,我らが赤黒の勇者を待ち構えている。
かといって,人件費はマックスでも浦和クラスの富裕クラブの1/3から1/4くらいで闘わざるを得ない事情を考慮すると,今年と180度違う戦術を選択する余裕がある訳もない。やはりベースは,しっかりと守って,カウンターのチャンスを活かしていくという,面白みには欠けるが,残留ラインと考えられる勝ち点36を現実的な数字として思い描ける戦法を取る他はないはずだ。

土曜日の試合で見られた戦い方を,各ポジションで少しずつベースアップしていくための課題は,素人の目にも明らかなほど山積している。
DFでは解雇が決定したブルーノ・クワドロスに替わって,高さはなくともスピードで佐藤寿人クラスに振り切られないCBを連れてくること。サイドバックの上がりには,少なくともハーフ毎に2回はチャレンジして欲しい。道内有数の進学校から国立大に進んだにも関わらず,お世辞にも頭脳的CBとは言えない選手の,実は非常に高いフィード能力を活かした組み立てを確立すること,等々。

攻撃面では,室蘭大谷宮沢君の動向は分からないが,外国人のツートップだけは勘弁して欲しい,という気持ちはある。それで1年残れても,チームに残るものは何もないはずだ。
その代わりに,揃いも揃って開花寸前状態の藤田,西,岡本,石井の若手カルテットで,甲府(降格は残念)や千葉を上回るボール廻しにチャレンジして欲しい。それが見られそうだという,萌芽はあった。間違いなく。
芳賀と組むボランチも大切だが,噂されている福西に6,500万円の値打ちはないはず。全国を捜せば,身体が強くて頭の良い大学生は一人くらいいるような気がするのだが,どうだろう。

課題を色々と挙げてきたが,いずれも解決不能なレベルのものではないはず。
とにかく勝ち点36,10勝6分け(何と18も負けられる!)を目指してセーフティー・ファーストで行くことは勿論だが,今年のサッカーに,ボールを動かすという意識を付加しなくてはJ1でゲームを作ることは難しい。
新シーズンには,債務超過を解消するという喫緊の課題解決とともに,新しく生まれ変わるのではなく,少しだけ逞しくお洒落になった姿を見たいと切に願う。


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