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映画「人生はシネマティック!」:inspired byコニー・ウィリス?

2017年12月29日 14時16分59秒 | 映画(新作レヴュー)
ドイツの空襲を受け,徐々に廃墟と化していくロンドン。ダンケルクからの撤退をサポートすべくドーヴァー海峡に集結した民間の漁船。描き方も視点もタッチも異なるとは言え,第2次世界大戦中の二つのエピソードが一つの物語の中で同居する。これは完全にコニー・ウィリスの傑作長編「ブラックアウト」そのものではないか,というのが最初の印象だった。どちらも,戦火をくぐり抜け,逞しく生き抜こうとして奮闘するのが主に女性である,という点でも,スタイルだけは極めてよく似た作品だった。ロネ・シェルフィグの新作「人生はシネマティック!」,掴みは上々だった。

戦争で傷を負った画家の夫に代わり,映画脚本家として家計を支えようとするヒロイン(ジェマ・アータートン)が,ダンケルクでの実話を基にした映画の制作現場で奮闘する物語(のはずだった)。
予告編を観た限りでは,映画制作の裏話を核にした今世紀版「アメリカの夜」のような作品になるのではないか,という淡い期待を持って映画館に向かったのだが,残念ながらかなり早い段階で鮮やかな肩透かしを食らわされることとなった。物語のメインプロットはヒロインのカトリン(ジェマ・アータートン)が,未経験の脚本作りという作業を通じて育むバックリー(サム・クラフリン)との恋であって,当方が勝手にフォーカスしていた映画作りや1940年という混乱の時代描写という要素は,あくまでその恋路の背景として使われているに過ぎなかったのだ。それが明らかになった時点で早くも「エンドマーク」が見えた私にとって,117分という上映時間はかなりの長尺だったと言わざるを得ない。

ラブ・ストーリーの主役となる二人に華がない,というのがまず決定的。上手ではあってもここまで地味な俳優を輝かせるには,恋路を邪魔するさまざまなトラップに工夫が必要だが,カトリンと夫との関係描写がこれまた紋切り型と来ては打つ手なし。映画制作現場のトラブルに関しても,米国の参戦を促すために無理矢理動員された,でくの坊の二枚目俳優や,プライドの塊である自己中な老俳優,劇中作品のモデルとなった姉妹の脚色に対する異議など,物語を少しは立体化し得たであろう複数の要素も,ことごとく平面的な処理を施されてしまい,物語は最後までドーバー海峡のようには波立たない。

邦題で「シネマティック!」と謳った以上,ダンケルクの撮影現場で使われた大勢の兵士を書き込んだガラス板のトリックのようなマジックを,せめてあとひとつふたつは見せて欲しかった。
採点は「題名に偽りあり」との気分を込めて。
★★
(★★★★★が最高)



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