子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。
子供はかまってくれない
映画「おとなのけんか」:ケイト・ウィンスレットが脱ぐ代わりにやったこと
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昨年のキネマ旬報ベストテンで,栄えある外国映画部門の第1位に選ばれた「ゴースト・ライター」は,ロマン・ポランスキーの「物語至上主義」的特質がよく出た傑作だった。リアルかどうかということよりも,次はどうなる?という観客の期待感を煽ることを第一に考え,そのために研ぎ澄まされてきた技と感覚には,一切の衰えが感じられなかった。その冴えは,一幕ものの舞台劇を79分という尺に凝縮した本作「おとなのけんか」においても,十分に発揮されている。
子供たちの間で喧嘩が起き,加害者の両親(クリストフ・ヴァルツ&ケイト・ウィンスレット)が被害者の家(両親:ジョン・C=ライリー&ジョディ・フォスター)を訪れて,子供同士を仲直りさせるための話し合いを行う。ことの顛末をまとめた文章に対して,加害者である子供の親が「武装した,という言葉は強すぎるのでは?」と疑問を差し挟むところからスタートするバトルは,次第に子供の喧嘩から離れて,親同士から同性同士へ,更には4人が各々抱えている不満や考え方を巡る「仁義なき個人の戦い」へと雪崩れ込んでいく。
一見「ゴースト・ライター」とは枠組みも肌合いも異なるように見えながら,性別や職業,社会問題に関して心の奥底に潜んでいた偏見が,対話によって徐々に炙り出されていく過程を冷静に見つめるポランスキーの観察眼は,諦念を湛えつつ巨悪を糾弾しようとした前作のスタンスと基本的には変わりない。全体を見通すパースペクティブと,カメラが切り取る小さな対象のバランスは絶妙で,携帯電話やドライヤーからフジタの画集まで,画面を彩るあらゆるものが,次第に熱を帯びていく4人の台詞の伴奏者として見事に機能している。
4人の出演者の中では,俗物弁護士に扮したクリストフ・ヴァルツの嫌みなスマートさと,演技なのか地なのかよく分からなかったジョディ・フォスターの最後の絶叫が,今も耳にくっきりと残っている。キャスティングの段階で,監督のヴィジョンが具体化されるかどうかの決着がついてしまった,貴重な例と言えるだろう。
「ゴースト・ライター」のラストには,やや取って付けたようなドタバタ感があったのに比べると,子供たちが遊ぶ風景をロングショットで捉えた,静かな幕切れのこちらの方が,控えめな分,余韻は残る。
いつもは「とにかくまずは服を脱ぐ」という印象があるケイト・ウィンスレットが,口論しているうちに「吐きそう」と言い出し,最後には吐いてしまうシーンが,舞台ではどんな演出だったのか非常に気になったのだが,怪作「ブライズメイズ」同様に匂いのする映画でなくて良かった。本当に。
★★★☆
(★★★★★が最高)
子供たちの間で喧嘩が起き,加害者の両親(クリストフ・ヴァルツ&ケイト・ウィンスレット)が被害者の家(両親:ジョン・C=ライリー&ジョディ・フォスター)を訪れて,子供同士を仲直りさせるための話し合いを行う。ことの顛末をまとめた文章に対して,加害者である子供の親が「武装した,という言葉は強すぎるのでは?」と疑問を差し挟むところからスタートするバトルは,次第に子供の喧嘩から離れて,親同士から同性同士へ,更には4人が各々抱えている不満や考え方を巡る「仁義なき個人の戦い」へと雪崩れ込んでいく。
一見「ゴースト・ライター」とは枠組みも肌合いも異なるように見えながら,性別や職業,社会問題に関して心の奥底に潜んでいた偏見が,対話によって徐々に炙り出されていく過程を冷静に見つめるポランスキーの観察眼は,諦念を湛えつつ巨悪を糾弾しようとした前作のスタンスと基本的には変わりない。全体を見通すパースペクティブと,カメラが切り取る小さな対象のバランスは絶妙で,携帯電話やドライヤーからフジタの画集まで,画面を彩るあらゆるものが,次第に熱を帯びていく4人の台詞の伴奏者として見事に機能している。
4人の出演者の中では,俗物弁護士に扮したクリストフ・ヴァルツの嫌みなスマートさと,演技なのか地なのかよく分からなかったジョディ・フォスターの最後の絶叫が,今も耳にくっきりと残っている。キャスティングの段階で,監督のヴィジョンが具体化されるかどうかの決着がついてしまった,貴重な例と言えるだろう。
「ゴースト・ライター」のラストには,やや取って付けたようなドタバタ感があったのに比べると,子供たちが遊ぶ風景をロングショットで捉えた,静かな幕切れのこちらの方が,控えめな分,余韻は残る。
いつもは「とにかくまずは服を脱ぐ」という印象があるケイト・ウィンスレットが,口論しているうちに「吐きそう」と言い出し,最後には吐いてしまうシーンが,舞台ではどんな演出だったのか非常に気になったのだが,怪作「ブライズメイズ」同様に匂いのする映画でなくて良かった。本当に。
★★★☆
(★★★★★が最高)
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