子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。
子供はかまってくれない
映画「サブウェイ123」:デンゼル・ワシントンの「太っ腹」は,詰め物ではなく「自腹」とな!
数多いトニー・スコット監督作品の中で,これまで「入場料を返して欲しい」と思わなかったのは,クウェンティン・タランティーノが脚本にあたった「トゥルー・ロマンス」を除けば,デンゼル・ワシントンがジーン・ハックマンと渡り合った「クリムゾン・タイド」のみだった。とかく過剰で大げさに走る,どこかマイケル・ベイにも共通するところのある演出は,興行収入的にはド派手なアクション映画との相性が良いようだが,彼にとってこれまでのところ私は良い観客ではなかった。
ジョゼフ・サージェントが監督したオリジナル作(1974)のファンだった私が,トニー・スコットによってリメイクが行われているというニュースを聞いて,真っ先に頭に思い浮かべたのが「クリムゾン・タイド」のことだった。「男2人の対決」というシチュエーションならば,くだんの「けれん」たっぷりの演出が,良い方向に向かう可能性もないとは言えないのではないか,と思いながら劇場に出掛けたのだが,そんな期待はある程度まで叶えられた。あくまで,ある程度までではあったのだが。
アクション映画と言っても,ハイジャック犯と管制官の二人による無線の会話が上映時間の大半を占める作品である以上,この一見地味なやり取りがきちんと描かれていなければ映画として成立しないはずだったが,そこはさすがに百戦錬磨のヴェテラン,抜かりはなかった。
犯人のライダー(ジョン・トラボルタ)が喋る場面はカット毎に角度を変えたスティル・ショット,管制官のガーバー(デンゼル・ワシントン)に切り替わるとゆっくりとした円移動,更に場面が変わればその逆に,というメリハリの利いた切り返しで,じわじわと会話の緊張感を盛り上げていく手管は,見事というほかない。
これまで,作品によってかなり当たり外れがあったブライアン・ヘルゲランドの脚本も,殆ど舞台劇と言っても良いくらい動きの少ない物語にも拘わらず,ところどころに毒のあるユーモアを塗しながら,二人の間の駆け引きに生じるサスペンスを終盤まで間断なく引っ張っていく。
しかし,痩せても枯れてもトニー・スコット作品。首を傾げざるを得ない点も,やはり目に付く。それでも,オリジナル作では犯人グループのリーダー以外にもきちんとしたキャラクターが割り当てられていたのに,本作では「その他の2人」になってしまっている点や,犯人が逃走した後の暴走する地下鉄の映像を不自然に加工し過ぎて,却って緊張感を損なってしまっている点等は,まだ許せた。しかし決定的だったのは決着の付け方だ。
オリジナル作は,丁々発止の会話の締め括りに相応しい,捻りの利いた軽やかなエンディングだったのに対し,ガーバーに銃を持たせた上,力ずくで止めを刺させた本作のラストは,それまで積み上げてきた会話劇の成果を台無しにしてしまったとしか思えない。
それでも勧善懲悪のカタルシスを求めることこそが,トニー・スコット作品の真骨頂なり,と言われればそれまでなのだが,何故かスコットと何度もコンビを組んでいるデンゼル・ワシントンが,心から納得して演技していたかどうかまでは判別できなかった。天国のウォルター・マッソーは,多分オリジナル作での名台詞「お大事に」と言ってるような気がするのだが。
★★★
ジョゼフ・サージェントが監督したオリジナル作(1974)のファンだった私が,トニー・スコットによってリメイクが行われているというニュースを聞いて,真っ先に頭に思い浮かべたのが「クリムゾン・タイド」のことだった。「男2人の対決」というシチュエーションならば,くだんの「けれん」たっぷりの演出が,良い方向に向かう可能性もないとは言えないのではないか,と思いながら劇場に出掛けたのだが,そんな期待はある程度まで叶えられた。あくまで,ある程度までではあったのだが。
アクション映画と言っても,ハイジャック犯と管制官の二人による無線の会話が上映時間の大半を占める作品である以上,この一見地味なやり取りがきちんと描かれていなければ映画として成立しないはずだったが,そこはさすがに百戦錬磨のヴェテラン,抜かりはなかった。
犯人のライダー(ジョン・トラボルタ)が喋る場面はカット毎に角度を変えたスティル・ショット,管制官のガーバー(デンゼル・ワシントン)に切り替わるとゆっくりとした円移動,更に場面が変わればその逆に,というメリハリの利いた切り返しで,じわじわと会話の緊張感を盛り上げていく手管は,見事というほかない。
これまで,作品によってかなり当たり外れがあったブライアン・ヘルゲランドの脚本も,殆ど舞台劇と言っても良いくらい動きの少ない物語にも拘わらず,ところどころに毒のあるユーモアを塗しながら,二人の間の駆け引きに生じるサスペンスを終盤まで間断なく引っ張っていく。
しかし,痩せても枯れてもトニー・スコット作品。首を傾げざるを得ない点も,やはり目に付く。それでも,オリジナル作では犯人グループのリーダー以外にもきちんとしたキャラクターが割り当てられていたのに,本作では「その他の2人」になってしまっている点や,犯人が逃走した後の暴走する地下鉄の映像を不自然に加工し過ぎて,却って緊張感を損なってしまっている点等は,まだ許せた。しかし決定的だったのは決着の付け方だ。
オリジナル作は,丁々発止の会話の締め括りに相応しい,捻りの利いた軽やかなエンディングだったのに対し,ガーバーに銃を持たせた上,力ずくで止めを刺させた本作のラストは,それまで積み上げてきた会話劇の成果を台無しにしてしまったとしか思えない。
それでも勧善懲悪のカタルシスを求めることこそが,トニー・スコット作品の真骨頂なり,と言われればそれまでなのだが,何故かスコットと何度もコンビを組んでいるデンゼル・ワシントンが,心から納得して演技していたかどうかまでは判別できなかった。天国のウォルター・マッソーは,多分オリジナル作での名台詞「お大事に」と言ってるような気がするのだが。
★★★
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