子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。
子供はかまってくれない
映画「ラッシュ/プライドと友情」:ロン・ハワード,爆音と共に帰還
運転技術だけでなく,メカにも通じ,細部を詰めて勝利を掴み取るニキ・ラウダ。一方のジェームス・ハントは酒と女に彩られた,ロックスターもかくやという生活をしながら「壊し屋」の異名を取る感覚型の運転で彼の前に立ちはだかる天才ドライヴァー。
まるでレーサーものの少年マンガのような設定ながら,実話の映画化,しかも登場人物の多くが存命中という制約を逆手に取ったリアリティ溢れる展開は,特にF1に興味のない観客(私を含めて)をも,サーキットの熱気で包み込む。
ロン・ハワードは「ニクソン×フロスト」と同様に,対決ものにありがちな過剰にドラマティックな雰囲気を煽るような演出を抑制することで,エンジンオイルが焦げる匂いが伝わってくるようなサーキットの描写から,見事に深みのある人生劇を引き出している。
「ニクソン×フロスト」でもロン・ハワードと組んだピーター・モーガンの脚本は,二人が直接絡むエピソードを中心に据えるのではなく,敵意と嫉妬と敬意とが混じり合った複雑な感情が醸成されていく過程を,フルスロットルで両雄が対峙し続けるレースの描写を積み重ねることによって,丁寧に描き出していく。
そのレースの描写も,両者の位置関係を俯瞰で捉えるショットはあえて捨て,耳をつんざく爆音を伴った,地面すれすれのレーサーの視点で切り取ることによって,二人だけが体験できる異次元の修行のような趣を感じさせる。轟音の合間から聞こえてくるスティーヴ・ウィンウッドの「ギミ・サム・ラヴィン」が持つ,文字通りのドライブ感も,ハンス・ジマーの作り出すビートと違和感なく溶け合っていて見事だ。
二人の間に芽生える友情を直接描いたシーンは,復帰したラウダの火傷のことをあげつらった記者を,ハントが袋だたきにするシークエンスくらいなのだが,それ故にかえって他者には窺い知ることの出来ない強い絆の存在を浮き彫りにする渋い演出に拍手。闘いを終えた浅田真央とキム・ヨナにこそ,本作を薦めたい。
★★★★☆
(★★★★★が最高)
まるでレーサーものの少年マンガのような設定ながら,実話の映画化,しかも登場人物の多くが存命中という制約を逆手に取ったリアリティ溢れる展開は,特にF1に興味のない観客(私を含めて)をも,サーキットの熱気で包み込む。
ロン・ハワードは「ニクソン×フロスト」と同様に,対決ものにありがちな過剰にドラマティックな雰囲気を煽るような演出を抑制することで,エンジンオイルが焦げる匂いが伝わってくるようなサーキットの描写から,見事に深みのある人生劇を引き出している。
「ニクソン×フロスト」でもロン・ハワードと組んだピーター・モーガンの脚本は,二人が直接絡むエピソードを中心に据えるのではなく,敵意と嫉妬と敬意とが混じり合った複雑な感情が醸成されていく過程を,フルスロットルで両雄が対峙し続けるレースの描写を積み重ねることによって,丁寧に描き出していく。
そのレースの描写も,両者の位置関係を俯瞰で捉えるショットはあえて捨て,耳をつんざく爆音を伴った,地面すれすれのレーサーの視点で切り取ることによって,二人だけが体験できる異次元の修行のような趣を感じさせる。轟音の合間から聞こえてくるスティーヴ・ウィンウッドの「ギミ・サム・ラヴィン」が持つ,文字通りのドライブ感も,ハンス・ジマーの作り出すビートと違和感なく溶け合っていて見事だ。
二人の間に芽生える友情を直接描いたシーンは,復帰したラウダの火傷のことをあげつらった記者を,ハントが袋だたきにするシークエンスくらいなのだが,それ故にかえって他者には窺い知ることの出来ない強い絆の存在を浮き彫りにする渋い演出に拍手。闘いを終えた浅田真央とキム・ヨナにこそ,本作を薦めたい。
★★★★☆
(★★★★★が最高)
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