子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

2010年TVドラマ秋シーズン・レビューNO.3:「ナサケの女」「黄金の豚」

2010年10月30日 21時14分35秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
ダブル「涼子」の対決と騒がれた「調査官もの」同士の激突は,17.6%と15.3%という非常に高いレヴェルでの僅差の争いながら,初回は「米倉涼子」に軍配が上がった。
共に税金に関する調査官であり,男勝りで,組織に属しながら組織を信じない一匹狼というキャラクター,という被り具合もなんのその,年齢もほぼ同じ(篠原37歳,米倉35歳)二人の涼子の勢いは,まるで今期のドラマ群のスタートダッシュにおける,近年にない充実度合いを象徴しているかのようだ。

テレビ朝日の「ナサケの女」が,今は亡き伊丹十三が作り上げたヒット作「マルサの女」シリーズのTVドラマ版を狙っていることは,ナレーターに映画版で宮本信子の相手役を勤めた津川雅彦を起用していることからも明らかだ。初回では,米倉の美貌とスタイルを武器として展開の中でうまく活かせるかどうかが,映画版の宮本信子との差別化に繋がるポイントであることを,米倉本人もスタッフも承知の上で臨んでいることがはっきりと打ち出されていた。
米倉はその点を意識しながら,走って,着替えて,啖呵を切って,今世界中で話題の日本の主婦トレーダー「ミセス・ワタナベ」=菊池桃子と対決してみせた。
「ハケンの品格」の中園ミホの脚本は,これまでと同様,外連味たっぷりにクライマックスから逆算したような展開で,取り敢えずは視聴者を飽きさせない。

第1回では,国税局の同僚・上司にずらりと揃えた若手・中堅どころ(塚本高史から鈴木浩介まで)の描き分けは出来ていなかったが,特に今後は「任侠ヘルパー」以来出ずっぱりという印象のある夕輝壽太の成長振りを見てみたいところ。
10年前には今の米倉と似たポジションに立っていた飯島直子も起用しているが,「7歳違いのライヴァル」という微妙な立ち位置を,物語の中で自然に活かすのは簡単そうに見えて,どうして至難の業ではなかろうか。既にお茶の間には「こども店長の母」というイメージが定着しつつある飯島を活かすには,子育てを終えた女性の職場復帰のシンボルにする,というような斬新な切り口が必要かもしれない。

一方,第2回の視聴率ではこれまた僅差で「ナサケの女」を逆転した日本テレビ「黄金の豚」は,「会計検査院」をモデルにしたと思しき「会計検査庁」という架空の省庁を舞台にして,篠原涼子が同局のヒット作「ハケンの品格」のキャラクターそのままに,税金を食い物にする悪徳役人をぶった切るドラマ。「水戸黄門タイプの勧善懲悪ストーリー」の変形だが,現場に圧力をかけてくる権力を,如何に芯子(篠原涼子)がかわしていくかという要素が新しいグラデーションとして加わっているところが,今回の肝かもしれない。

だが,職場にたどり着くまでの芯子の来歴が謎に包まれているという設定から,元恋人役に大泉洋を配し,宇津井健が父親代わりとなる松方弘樹の後釜に納まっているキャスティングまで,ドラマの設えはどう見ても「ハケン~」の二番煎じ。TBSの「SPEC」が「ケイゾク」の続編であるという以上に,本作の中身は「ハケン~」を引き摺っているようだ。

ただ面白いのは,「ハケン~」の脚本を書いた中園ミホが,今期はライヴァルと目される「ナサケの女」に回ったこと。山田太一の娘である宮本理江子が,父のライヴァルとも言える倉本聡の「風のガーデン」を演出した時はのけぞったが,こういった目まぐるしい攻守の展開が見られるのも,TVドラマ界の面白さのひとつかもしれない。
しかし全体的に出だし好調の今期,上記二つのうちどちらかを切らないと,週末のTV視聴用時間が足りなくなるのは明らかなのだが,いまだに踏ん切りを付けられない私の煮え切らなさこそ「摘発対象」か。


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