子供はかまってくれない

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映画「Re:LIFE リライフ」:地味なれども滋味溢れるシナリオと役者

2015年12月13日 11時58分40秒 | 映画(新作レヴュー)
プレーボーイ役が似合う二枚目俳優としてデビューしながら,いつの間にやら軽いコメディでより輝きを見せる俳優へ。歩んできた道程だけを見ると,まるで現在「下町ロケット」で顔芸の幅を広げるトレーニング真っ最中の阿部寛みたいだ。ライトなコメディ路線の延長上で,軽やかに人生の重さを語る作品を作り上げる。やはりこれは今のヒュー・グラントでなければ出来ない作品かもしれない。

15年前のアカデミー賞受賞という輝かしい実績以降,業績を積み上げられずに燻り続ける脚本家が,マネジャーの計らいで地方の大学で教鞭を執ることになる。しかしやる気ゼロの授業は生徒からも支持されず,クラスの女生徒と関係を持つという軽率な行為によって,やっとありつけた職も失いそうになる。当然予想されるのは,そんな状況を逆手に取って講師生活をネタにした脚本で一発逆転を図る,という筋書きなのだが…。

育ちの良さから思うがままについつい余計なことを口走ってしまうのだが,決して心底憎まれることはなく,逆に「しょうがない人ね」と相手の口元に微笑みをもたらしてしまう。そんなヒュー・グラントの持ち味が最大限に活かされている。グラントのファンならば,これまで何度も目にしてきた展開であっても,おそらくはかつて「男はつらいよ」に欠かさず通った寅さんファンと同様に,「またやってやがるわ,ヒューの野郎」という一人言を呟きたいがために劇場に足を運ぶ,そんなファンを満足させることは間違いないだろう。

ただもう既にグラントとのコンビが4作目になる監督のマーク・ローレンスが手掛けた脚本は,主人公が書く脚本とは違って,細部の詰めを怠らない。今回はマリサ・トメイ演じるシングル・マザーの苦学生とのラヴ・アフェアよりも,J・K・シモンズとアリソン・ジャネイという重量級の二人の役者を配した大学の上司・同僚との関係が物語の基礎をしっかりと支えているという印象だ。
シモンズは先行して公開された「セッション」での鬼教師役が評判を呼んだことで,ここでの涙もろい学部長役との落差によるおかしさが,まさに棚ボタ的な効果を生み出しているのは想定外だったかもしれないが,ジェーン・オースティンを研究する堅物教師にジャネイを充てたのは監督の慧眼だろう。「ザ・ホワイトハウス」での首席補佐官役で見せた仕事人が,アイドルの文字が入ったショルダーバッグを嬉々として持つ姿は,ヒューに負けずチャーミングだった。「リライト(原題)」を重ねたであろう脚本とそれに応えた役者たちの勝利だ。
★★★★
(★★★★★が最高)


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