子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

映画「ワールズ・エンド」:最強トリオの再集結作だったのだが…

2014年05月06日 10時59分11秒 | 映画(新作レヴュー)
一昨年の秀作「宇宙人ポール」で脚本・主演を務めたニック・フロストとサイモン・ペッグのコンビが帰ってきた。
加えて同作にはスケジュールの都合で参加できなかった彼らの盟友である監督,エドガー・ライトが復帰し,ゾンビ映画の金字塔「ショーン・オブ・ザ・デッド」や彼らの名前を世に知らしめた傑作「ホット・ファズ」をものしたトリオがそろい踏みするとあっては,期待するなと言う方が無理な話だ。

学生時代に成し遂げられなかった「一晩で12軒の酒場をハシゴする」というミッションを完遂すべく,中年になった5人組が故郷に再集結する。
主人公(サイモン・ペッグ)と昔関係のあった,グループの一人の妹まで加わった6人組で盛り場を飲み歩くうちに,彼らは自分たちがとんでもない事態に陥っていることに気付く。しかしミッションを完遂させるという崇高な目標の前では,怖いものなど何もなし。体内に入ったアルコールだけを武器にして,彼らは無謀な闘いを挑んでいく。

ストーリーはいかにも彼ららしい茶目っ気と仕掛けに満ちたものであり,主演コンビの演技にはジャンルを確立したという自信に満ちた貫禄さえ漂っている。
アクションにもキレがあり,「光る眼」や「ボディ・スナッチャー/恐怖の街」といった古典SFへの敬意も,其処此処に感じられる。

しかし,このトリオならやってくれるはず,というこちらの過剰な期待に応えてくれるようなブラックな笑いや展開の妙,といった要素の弾け具合は今回,残念ながら低いと言わざるを得ない。
過去作で観客をノックアウトした「そう来るか」というアイデアが使い回されているだけで,例えば「宇宙人ポール」でポールが死んだ鳥を超能力によって甦らせた瞬間に食べてしまう,という観客側の常識的な予測との落差の大きなギャグは何処にも見当たらない。
ピアース・ブロスナンの起用も,ティム・バートンの「マーズ・アタック!」に出た際のインパクトに比べると,完全に芯を外したという印象だ。

タランティーノやアルフォンソ・キュアロンの絶賛評がチラシに載っていたが,スピルバーグも認めた才能の持ち主である彼らの潜在能力は,こんなものではないはず。
次回は世間の常識を笑う刀で,自分たちのアホさ加減をも切り裂くような,鋭いお笑いを期待したい。
★★★☆
(★★★★★が最高)



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