子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。
子供はかまってくれない
映画「コーダ あいのうた」:手話で綴る「家族の光と影」
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/13/f7/d354d2aabcf2ae9ec6a3b1fe7a9b93b0.jpg)
マーリー・マトリン。懐かしい名前だ。「愛は静けさの中に」で当時史上最年少でアカデミー賞を受賞した35年前に,インキンタムシに罹患した夫とのセックスを我慢できずに悶える中年の母親役を演じるとは,想像できなかったはずだ。多分。
フランス映画「エール!」のアメリカ版リメイクである本作は,母親役の彼女と同様に聾者である父と兄との声なき,けれども「騒々しい」4人家族で育った健聴者の少女が,家族の愛と絆の下で育まれた才能をガイドに,逞しく自立していく姿を描いた作品だ。
引っ込み思案で,人前で好きな歌を唄うことも出来ずに,合唱クラブの入部初日に教室を逃げ出したルビー(エミリア・ジョーンズ)は,かつてメキシコ移民だったV先生(エウヘニオ・デルベス)の指導の下で,次第にその才能を開花させていく。自分の出身校であるバークリーへの進学を勧める先生に対して,漁業でなんとか生計を立てていた家の経済的な状況から進学は出来ないと拒むルビーだったが,一方で聾者であるが故に搾取され続けることを拒んで独立を画策する家族から,家業の手伝いをするよう求められる。好きだった同級生と心を通わせ,彼と共に進学することを希望するルビーは,彼女の望みを叶えることを決心した家族が「聞こえる」ように,バークリーのオーディションで手話を使いながら渾身の歌声を響かせるのだった。
ルビーを囲む家族の達者な演技は実に自然で力強い。氷代の支払いさえも滞るような経済状態なのにも拘わらず,酒にはうるさく,日本の基準で言えば「豪邸」と言えるような,古いけれども大きな家に住む,という労働者階級のリアルな描写も実に細やかだ。けれどもゆったりと進んでいく物語が内包する,いつかどこかで見たような既視感を乗り越え,こうなっていくだろうなという予想を上回る驚きの展開は残念ながら,最後まで起こらない。
それでもクライマックスとなるオーディション・シークエンスのカット・バックで思わず落涙してしまったのは,ひとつにはエウヘニオ・デルベス演じるV先生が現出させた,生徒を信じ切り最後まで諦めないという,理想の先生の姿に胸を衝かれたから。もうひとつは何と言ってもジョニ・ミッチェルの「青春の光と影」を21世紀のクラシックとして甦らせたエミリオ・ジョーンズの歌声の力だ。極めてサンダンス映画祭的な佳作だが「いやー,謳い上げ系の映画のヒロインって,本当に良いですね」という水野晴郎の声が聞こえてきても,それは決して空耳ではないはずだ。
★★★☆
(★★★★★が最高)
フランス映画「エール!」のアメリカ版リメイクである本作は,母親役の彼女と同様に聾者である父と兄との声なき,けれども「騒々しい」4人家族で育った健聴者の少女が,家族の愛と絆の下で育まれた才能をガイドに,逞しく自立していく姿を描いた作品だ。
引っ込み思案で,人前で好きな歌を唄うことも出来ずに,合唱クラブの入部初日に教室を逃げ出したルビー(エミリア・ジョーンズ)は,かつてメキシコ移民だったV先生(エウヘニオ・デルベス)の指導の下で,次第にその才能を開花させていく。自分の出身校であるバークリーへの進学を勧める先生に対して,漁業でなんとか生計を立てていた家の経済的な状況から進学は出来ないと拒むルビーだったが,一方で聾者であるが故に搾取され続けることを拒んで独立を画策する家族から,家業の手伝いをするよう求められる。好きだった同級生と心を通わせ,彼と共に進学することを希望するルビーは,彼女の望みを叶えることを決心した家族が「聞こえる」ように,バークリーのオーディションで手話を使いながら渾身の歌声を響かせるのだった。
ルビーを囲む家族の達者な演技は実に自然で力強い。氷代の支払いさえも滞るような経済状態なのにも拘わらず,酒にはうるさく,日本の基準で言えば「豪邸」と言えるような,古いけれども大きな家に住む,という労働者階級のリアルな描写も実に細やかだ。けれどもゆったりと進んでいく物語が内包する,いつかどこかで見たような既視感を乗り越え,こうなっていくだろうなという予想を上回る驚きの展開は残念ながら,最後まで起こらない。
それでもクライマックスとなるオーディション・シークエンスのカット・バックで思わず落涙してしまったのは,ひとつにはエウヘニオ・デルベス演じるV先生が現出させた,生徒を信じ切り最後まで諦めないという,理想の先生の姿に胸を衝かれたから。もうひとつは何と言ってもジョニ・ミッチェルの「青春の光と影」を21世紀のクラシックとして甦らせたエミリオ・ジョーンズの歌声の力だ。極めてサンダンス映画祭的な佳作だが「いやー,謳い上げ系の映画のヒロインって,本当に良いですね」という水野晴郎の声が聞こえてきても,それは決して空耳ではないはずだ。
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