子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

2008年夏シーズンTVドラマレビューNO.2

2008年07月22日 21時15分03秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
(承前)
まだ全体像がはっきりしないのはテレビ朝日の「四つの嘘」。初回の冒頭で,主役の一人と思われる羽田美智子が死んでしまい,そのナレーションでドラマが進んでいく。他の3人は皆40代前半(41歳か?)で,若い男に入れ込む女,キャリアウーマン(医者)に,専業主婦…。

えっ?これって,米国ABC制作の人気ドラマ「デスパレートな妻たち」そのまんまではないか。ヴェテランの大石静の原作・脚本ということだが,いくら何でもありのTV界とはいえ,これはちょっと度を超しているのではないか,と言うのが普通の感覚だろう。しかし,今更そんなことに拘っていては話が進まないので,取り敢えずそうした疑問は置いておき,中身に目をやると,まず目に付くのは永作博美だ。
最近は映画に軸足を移し,民放の連続TVドラマは4年振りとなるが,本作での設定通り「魔性の女」としての存在感はいや増すばかり。今年38歳になるとは思えない若々しさで,ドラマには余り縁がない層を取り込むというポテンシャルは充分に持っている。
同様に,これまでは映画中心の活動だった寺島しのぶと合わせて,連ドラ的には新味を感じるキャスティングが,手垢の付いた設定の中で生命力をもって動き出すかどうか,こちらも少し様子を見てみたい。

こんなに若くて美形の医者や看護婦に囲まれた病院があったとしたら,それ自体が緊急事態なのでは,と思わせるくらいにリアリティのない配役が危ぶまれた「コード・ブルー」も,「四つの嘘」と同様に,NBCのドラマ「ER」を下敷きにしている事は明らかだ。
過去に何度も日本TVドラマ界が挑んでは跳ね返されてきたこの「ER」の壁だが,手術シーンのスピード感やリアリティという代表的な特徴以外の部分で,思いがけない健闘を見せている。それは登場人物に,過剰な自信を持たせ,失敗させ,落ち込ませ,妬ませ,競争相手を追い落とそうとさせることによって,生身の人間の臭いをまとわせている点だ。
駆け出しの医者なら,経験や技術の不足によってもたらされるはずの失敗から,当たり前に生まれるであろう葛藤や衝突が,今のところ極めて自然に表現されていることについては,正当な評価が与えられるべきだと思う。特にスーパー・クールな看護師を演じるとびきりの美女,比嘉愛未の眉間を引きつらせての啖呵は,お見事だった。
取り敢えず山Pとガッキー人気に支えられての出足平均18%だとは思うが,ドラマの内実が数字に伴っていく可能性は充分にありそうだ。

リアリティという点で言えば,巷で話題の「モンスターペアレント」を,そのままタイトルに持ってきたフジのドラマも,無理にまとめない,という姿勢に好感が持てる。まぁ,まとめようと思っても簡単に収束できない事柄だからこそ,ドラマになるのかも知れないが,こちらは「CHANGE」とは逆に,理想論を唱える佐々木蔵之介が,現実対応を主張する主役の米倉涼子ときちんとぶつかることによって,問題の根深さが視聴者に伝わる構造になっている。その分,展開に華はないが,TVドラマには珍しく,毎回米倉涼子が平岡悠太と連れだって外を歩くシーンが,バストショット(上半身だけのショット)ではなく,フルショット(全身が映るショット)で捉えられている。大したことではないのだが,ちんまりしたサイズの絵を見慣れている目には,これが結構新鮮だ。

で,最後に触れておきたいのは,映画「ALWAYS三丁目の夕日」や「キサラギ」で話題の脚本家古沢良太が,「相棒」シリーズに続いて刑事物に挑んだ「ゴンゾウ~伝説の刑事」だ。
「相棒」にはとんと縁のない私なので,両作の比較は出来ないが,本作に関する限り,1クールを通して挑む大きな謎,現場と会議室の乖離,叩き上げ同士のスクラム等々,3ヶ月間ドラマを牽引していくエンジンは揃っているようだ。
「踊る大捜査線」以来定番となったキャリアとノンキャリアの対立だけでは,最早視聴者の興味を引き続けられないという認識から出発して,辿り着いた先に生まれた敏腕刑事の再生物語は,内野聖陽と筒井道隆という渋いツートップの頑張りによって,順調なスタートを切ったように見える。
お久しぶりの小谷美沙子が歌うテーマも,前クールのトータス松本「涙をとどけて」のような哀愁を漂わせて,良い。

以上が序盤を一回り見渡しての感想だが,昨日から始まった今クールの本命,坂元裕二が手掛ける「太陽と海の教室」については,少し回数を重ねた後に,頁を改めて書いてみたい。
(この項終わり)


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