子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。
子供はかまってくれない
映画「しあわせな人生の選択」:難しい邦題の選択だが,原題「トルーマン」に一票かな
青春ど真ん中,恋や針路や友情に思い悩むハイティーンを主人公に据え,勢いのある男女の俳優を順列組み合わせでカップリングした「青春映画」が花ざかりのこの国で,この地味な「終活映画」がどの程度受け容れられたかどうかは知らない。毎週発表される週末の興行収入ベストテンに,熟年男性二人の友情がテーマのスペイン映画なぞ,間違っても入ることはないのだから。しかしたとえどんなに設えが地味であったとしても,セスク・ゲイ監督の「しあわせな人生の選択」は,毎週数多封切られる国産の「青春映画」にも,「爽やかさ」という項目の評点でなら決して負けていない,と断言できる。
題名とは異なり,作品の冒頭で主人公のフリアン(リカルド・ダリン)は,癌の病状が思わしくないことを知って,既に延命治療を拒否するという「選択」を終えている。フリアンを見舞うためにカナダからやって来た親友のトマス(ハビエル・カマラ)は,フリアンに心変わりを促す素振りを見せつつも,本心ではそれが無理と知っており「最後の別れ」を告げに来たようだ。自分の病状や余命を知らないはずの息子が,既に母親からすべてを教えられており,父親との久しぶりの再会がおそらく最後となることを予感して,別れの挨拶を交わした後に再び戻ってきて抱擁するシーンはとても切ない。
だが作品自体のトーンは極めて抑制的で,本人は勿論のこと,フリアンの周囲の人間たちも揃って,時に人生の理不尽に涙することはあっても「避けられない死」は「朝起きたときの空腹」とそう変わることはないもの,という態度を崩さない。象徴的なのは原題となった「トルーマン」だ。それはフリアンの飼い犬の名前なのだが,フリアンは日を追って深刻さを増していく病状に堪えながら,自分亡き後のトルーマンの新たな飼い主を必死になって探し続ける。そんな一見愛犬家の美談の体裁を取った物語の裏側で,本業である俳優業以上に,何としても死ぬ前に果たさなければならない仕事を自分に課すことで,迫り来る「死」の恐怖に対するシールドとするフリアンの心の叫びが,広く静かに響き渡る。
フリアンを演じるリカルド・ダリンの思いっきりオリーブオイル顔と,トマス役ハビエル・カマラのこれまた渋い塩顔の対比が絶妙。スペイン人(+アルゼンチン人)だって,引いて守ることもあるのだ,と納得する。
★★★☆
(★★★★★が最高)
題名とは異なり,作品の冒頭で主人公のフリアン(リカルド・ダリン)は,癌の病状が思わしくないことを知って,既に延命治療を拒否するという「選択」を終えている。フリアンを見舞うためにカナダからやって来た親友のトマス(ハビエル・カマラ)は,フリアンに心変わりを促す素振りを見せつつも,本心ではそれが無理と知っており「最後の別れ」を告げに来たようだ。自分の病状や余命を知らないはずの息子が,既に母親からすべてを教えられており,父親との久しぶりの再会がおそらく最後となることを予感して,別れの挨拶を交わした後に再び戻ってきて抱擁するシーンはとても切ない。
だが作品自体のトーンは極めて抑制的で,本人は勿論のこと,フリアンの周囲の人間たちも揃って,時に人生の理不尽に涙することはあっても「避けられない死」は「朝起きたときの空腹」とそう変わることはないもの,という態度を崩さない。象徴的なのは原題となった「トルーマン」だ。それはフリアンの飼い犬の名前なのだが,フリアンは日を追って深刻さを増していく病状に堪えながら,自分亡き後のトルーマンの新たな飼い主を必死になって探し続ける。そんな一見愛犬家の美談の体裁を取った物語の裏側で,本業である俳優業以上に,何としても死ぬ前に果たさなければならない仕事を自分に課すことで,迫り来る「死」の恐怖に対するシールドとするフリアンの心の叫びが,広く静かに響き渡る。
フリアンを演じるリカルド・ダリンの思いっきりオリーブオイル顔と,トマス役ハビエル・カマラのこれまた渋い塩顔の対比が絶妙。スペイン人(+アルゼンチン人)だって,引いて守ることもあるのだ,と納得する。
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