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2008年秋シーズンTVドラマレビューNO.2:視聴率1位は「流星の絆」。日本のOLも頑張る

2008年11月30日 11時55分47秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
シーズン幕開け時に,「風のガーデン」への期待を込めた感想を書いて以来,忙しさにかまけて他のドラマのレビューをさぼっているうちに,いつの間にかどの作品もが佳境に入る時期となってしまった。駆け足になるが,この辺でチェック中の作品のレビューをまとめておきたい。

視聴率レースでトップを走っている(Audience Rating TV参照)のは,TBS「流星の絆」だ。東野圭吾の原作を宮藤官九郎が脚色し,2期続けてジャニーズの主演,しかもそれが今を時めく二宮和也と錦戸亮となれば,誰が見ても形振り構わずシーズンのトップを取りに来た布陣と思うだろう。逆に言えば,この顔触れが受けたプレッシャーも並大抵のものではなかったはずだ。しかしそれを撥ね除けて数字を出しているという事実,しかも殺人事件と家族の絆とロマンスという,それだけでも収拾が付かなくなりそうな材料を,「笑い」というつなぎでまとめ上げるという荒技によって叩き出してきた宮藤官九郎のチャレンジ精神は,高く評価されるべきだろう。

主演の兄弟に戸田恵梨香を加えた3人は,家族の葛藤と,それと相反するような若者特有のフットワークと感性を,新鮮なコンビネーションによって自然に体現している。傍役では,全く違う立場から親代わりを担う三浦友和と尾美としのりが,高速で進んでいく会話のテンポの調節弁のような役割を果たして,渋く光っている。
突然乱入しては,勝手に二宮の便利屋兼恋人の役を引き受ける中島美嘉が,回が進んでも依然としてうまくドラマの流れにフィットしていないように見えることや,ドラマがどんどんと濃密だが小さい世界に収縮していく「クドカン」作品の傾向と本来あまり相性が良くないという評者の位置を割り引いても,ドラマの吸引力自体はかなり高いと思う。今の数字(第6回までで16.7%)は,その内容を反映したものになっていると言えるだろう。

一方,ゴールデンタイムのドラマの中で数字はワースト3に入ってしまっているが,中国へのアウトソーシングを目論んでいる企業におけるOLの生きる道,というタイムリーかつハードな内容を引っ提げて,正統派の職業道ドラマを目指して奮闘しているのがNTV「OLにっぽん」だ。
スーパー派遣社員が活躍する「ハケンの品格」で,評判と視聴率の両方を手にした中園ミホの脚本だが,今回は硬派の物語とリアルに徹したが故に毎回ホロ苦い結末となってしまう展開が嫌われたのか,ドラマの水準に比べると相当に苦しい状況が続いている(第8回までで8.52%)。

だが私は,現実の社会には存在しないスーパーヒロインものに堕してしまっていた前作の嘘くさいカタルシスに比べると,本作の苦さの方に軍配を上げたい。
ここで示される「『これが私の生きる道』というものを見つけるには,口で理屈を並べ立てる前に,とにかく手を動かして働き,悩み,苦しむしかない」という職業倫理=人生観は,苦くはあっても潔い。

「斉藤さん」で凄みすら漂わせていた観月ありさは,一転して地に足を着け(相当に長い足ではあるが),「理想的なOL」を模索して悩む総務課のヴェテランOLを好演している。
中国人を派遣する人材会社の担当者として観月に絡む阿部サダヲの熱演が,やや熱すぎるきらいもあるが,抵抗勢力の筆頭となる主任役のモロ師岡が,どこの職場にもいそうな守旧派,という感じでドラマをきりりと引き締めている。
所々でご都合主義的な展開も散見されるが,社会・経済が追い込まれている状況とは裏腹に,どんどんドメスティックな傾向を強めていく日本人の思考や感性にくさびを打ち込むような展開を,今後も期待したい。


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