子供はかまってくれない

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映画「グレイテスト・ショーマン」:「人を幸福にする」というミッションの成否は?

2018年02月17日 12時59分18秒 | 映画(新作レヴュー)
ゴールデン・グローブ賞を受賞し,アカデミー賞にもノミネートされている歌曲「This is Me」を初めて聴いたのは,荻野目洋子まさかの復活劇の立役者,大阪府立登美丘高校のダンス・プロモーション・ヴィデオだった。パッツンパッツンの前髪を下ろし,肩パットバリバリのスーツの代わりに普通の制服姿で楽しげに踊る彼女たちの姿は,「ダンシング・ヒーロー」とはひと味違う躍動感に溢れていて,授業に「ダンス」が取り入れられたことの意義を深く理解したのだったが,オリジナル作品のプロの業はやはり素晴らしかった。ダンス・シーンの持つエネルギーと映像的なセンスは,作品のモデルとなったP.T.バーナムの「人を幸福にするものこそ崇高な芸術だ」という言葉の「幸福」を「笑顔」に置き換えたとしたら,高いレヴェルでそれを達成していると言える。

セシル・B・デミルが監督した「地上最大のショウ」が「静かなる男」を押しのけて1952年のアカデミー賞作品賞と脚本賞を受賞したことについては当時も「何故だ?」という声が上がったらしいが,そのオリジナルとも言えるサーカスを生み出した実在の興行師バーナムの生涯を映画化した作品。「ラ・ラ・ランド」が大当たりしたことを受け,急遽その作曲家チームを使って,柳の下の二匹目のドジョウを狙った企画という印象を受けたのだが,実際にはジャスティン・ポールとベンジ・パセックが制作陣から作品に使う楽曲の制作依頼を受けたのは「ラ・ラ・ランド」公開よりも遥か以前だったという。2009年にアカデミー賞の司会を務めたヒュー・ジャックマンを観ていて,作品のアイデアを思いついたというローレンス・マークと脚本にも名を連ねるビル・コンドンの慧眼には恐れ入る。

監督のマイケル・グレイシーは音楽ヴィデオのディレクターを長く務めてきたという経歴を活かして,曲の持つビート感とショットの切り返しのシンクロ,更に空中ブランコの円運動から生み出される浮遊感を,これまでにないアングルで切り取って,見事に映像化している。
そうした幾つものダンスシーンを家族愛や身体的に「ユニーク」な人々への優しいまなざしでつなぐ構成に,踊りを超える更なる深いドラマを見出すことは出来ないものの,「笑顔」で劇場を後にすることは保証できる。バーナムも「それで充分」と満足しているはず。唯一歌わない俳優,レベッカ・ファーガソンの歌声シンクロ演技に☆をひとつ追加。
★★★☆
(★★★★★が最高)


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