子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

映画「セラヴィ!」:壮年ウェディング・プランナーのいちばん長い日

2018年07月14日 21時56分41秒 | 映画(新作レヴュー)
フランス国外にルーツを持つエリック・トレダノとオリヴィエ・ナカシュのコンビが監督した「最強のふたり」は,日本でも超ロングランヒットとなったが,私はあまりにもフラットで予定調和な展開についていけず,置いてけぼりを食った記憶がある。その勢いを駆って同作の主役オマール・シーと再びタッグを組んで撮った「サンバ」も,人種問題を取り上げるトーンのシリアスな比重に疑問符ばかりが浮かんできて,良い観客にはなれなかった。
この監督とは相性が悪いのか,と諦めかけたところで公開になった「セラヴィ!」だが,「三度目の正直」という諺がフランスにもあるのかどうかは分からないが,私にとっては「トレダノ=ナカシュ」コンビ監督作初の「入場料金分楽しめた」ボーダーの★三つクリア作となった。めでたし,めでたし。

壮年,しかもそろそろ会社をたたもうかと考え始めた男性のウェディング・プランナーが手掛ける,古城で行われる結婚式の一日を描いたコメディ。我が侭なクライアント,使えないスタッフ,メインディッシュが腐ってしまうというアクシデント,職場内の喧嘩と恋愛と,この手のドタバタで予想される要素が過不足なく配置され,かつてない軽快なテンポで,主役マックス(ジャン・ピエール=バクリ)の眉間の皺が深くなっていく。複数のプロットを担当する各キャラクターのポンコツ振りは,爆笑には至らないまでも,万国共通の日常的な「あるある」感覚を刺激する程度に立っていて,最後まで飽きさせない。

加えて,冒頭に出てくる挙式費用を値切ろうとする若いカップルのプロットから,教師から転職してきたパジャマ社員のエピソードに至るまで,格差社会の拡がりや移民なくしては回らなくなりつつある職場の状況と言った今のフランスが抱える根の深い社会問題を,柔らかい笑いのオブラートにくるんで転がす手管は,決して洗練されているとは言えないものの,観終わったときに胸に温かいものを残すには充分だ。
それにしてもあんな古城を舞台に生バンドを入れ,時間無制限のセレモニーを行うために必要な費用って,果たしてどのくらいなのか,誰か教えて。
★★★☆
(★★★★★が最高)


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