子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

V.A「Garth Hudson Presents A Canadian Celebration Of The Band」

2010年12月02日 22時34分34秒 | 音楽(新作レヴュー)
初期にはバンド内の音楽教師としてメンバーを鍛え上げ,キーボードから各種の管楽器まで様々な楽器を操り,音楽監督のような立場でザ・バンドの偉大な歴史に足跡を刻んだガース・ハドソンが,カナダ人のアーティストを起用してまとめたザ・バンドのトリビュート盤。トリビュートされるバンドのメンバーが音頭を取っているものを,果たして「トリビュート盤」と形容して良いのかどうかは分からないが,これまで私にとってはまるで縁のなかったアーティスト(ニール・ヤングとブルース・コバーンを除けば,カウボーイ・ジャンキーズくらいしか知らなかった)の,ザ・バンドが残した楽曲に捧げるリスペクトの強さには,紛れもなく「トリビュート」という言葉が相応しい。

ザ・バンドに対するトリビュート盤としては「Endless Highway - The Music Of The Band」という素晴らしい作品があった。今を時めくマイ・モーニング・ジャケットの「It Makes No Difference」には涙が出たし,ジョー・ヘンリーの「Bessie Smith」などは,本家の出来を凌いでしまったんじゃないだろうか,というくらい見事な演奏だった。だがこれが主にアメリカ人のアーティストが中心になって作られた作品であったということに,カナダ人のアーティストが対抗心を燃やした(レヴォン・ヘルムを除く4人の出身がカナダだった)のかどうかは分からないが,まるでバスク人だけで構成されたスペインのサッカーチーム,アスレティック・ビルバオの向こうを張るかのように,カナダ人だけによる演奏を集めた本盤の登場と相成った。

タイトルからも分かるとおり,メンバーの4割=二人が冥界に旅立った後もソロ・アルバム(主に奥さんとのデュオ)で唯一無比の音楽性に磨きをかけてきたガース・ハドソンが,プロデュースだけに留まらず,全曲で演奏に参加しているが,それによって特にオリジナル色が濃厚になるという訳でもなく,伝説の人との共演はどれも自然と笑みが浮かんでくるような楽しさとドライブ感に満ちており,予想以上に楽しめた。

「ザ・バンドの曲の中でどれがお気に入りか?という質問に,とうとうガース・ハドソンが答えた!」という,「!」まで付けなくても良いのではと思われる文章が,ジャケ裏に載っているが,確かに選曲もユニークだ。「地下室」から3曲を選んでいるのも驚きだが,これまで殆ど顧みられることのなかった「ラスト・ワルツ」のスタジオ録音曲や,グループの歴史に汚点を残したとまで言われた「アイランド」の曲,更には再結成後の曲も2曲が取り上げられている。ここまでやれば,ロビー・ロバートソンに対する対抗意識のなせる業,と言われても仕方ないだろうが,結果的にはスリリングでイキの良い演奏を引き出すことに繋がっており,これならば私は賛成票を投じる。
白眉は,初期作のうち二つのライブ盤で取り上げられることのなかった隠れた名曲をブルース・コバーンが取り上げた「SLEEPING」。あまり評価の高くない「Stage Flight」に収録されたミドル・テンポの曲だが,聴く度に胸を締め付けられるような美しいメロディが,ブルースの渋い声と美しいギターの音色で鮮やかに甦った。これは最高。
★★★★
(★★★★★が最高)


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