子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

2010年TVドラマ秋シーズン・レビューNO.5:「医龍3」「獣医師ドリトル」

2010年11月27日 20時00分37秒 | TVドラマ(新作レヴュー)
「仕事」をメインに据えたドラマ群の中では,弁護士ものと並んで常に牽引力を発揮してきた医療ものの今期は,シリーズもの1作と,医療もののスピンオフとも言える獣医もの1作。どちらもコミックを原作としており,ドラマ・オリジナルの脚本がないのは多少残念ではあるが,双方共にここまで好調に数字を取ってきており,「医療もの=鉄板」というドラマ界の常識は,スタッフ・キャストの努力によって死守されているようだ。

シリーズ第3作となる「医龍」は,朝田(坂口憲二)を中心とする胸部外科の「チーム・ドラゴン」が,カテーテルを武器に殴り込みをかけてきた黒木(遠藤憲一)を迎え撃つ,という構図で最後まで引っ張るのかと思われた。しかしここへ来て(第5回以降),朝田が自ら命を絶とうとした子供を救うため心臓に大怪我を負ってしまい,一度はチームを離れた伊集院(小池徹平)が,独力で朝田を助けるという波乱の展開に持ち込まれたことで,物語的には厚みが出てきた。

第2シリーズでクローズアップされた病院経営に関しては,最近話題になっている「メディカル・ツーリズム」を盛り込み,野口(岸部一徳)対チーム・ドラゴンという慣れ親しんだ対立も健在だが,ニュートラルのように見えてどっちに転ぶか分からない院長の鬼頭(夏木マリ)と,熱血医師に覚めた目を向ける研修医(いくらなんでも少し若すぎないか?の谷村美月)の二人が,絶妙のポジションを取ることで,ドラマのバランサーとしての機能を果たしている。
朝田が縫合する時に手を高く上げすぎるのではないかとか,病理医の佐々木蔵之介は手術の論評以外に何もしないのかとか,ツッコミどころはたくさんあるが,手術室の移動撮影や最早アニメの世界に近付きつつあるように見える野口の表情など,このシリーズならではの面白さは高く評価したい。

「ドリトル先生不思議な旅」の日本版というよりも,治療する対象を人間から動物に置き換えた「ブラック・ジャック」といった趣なのが「獣医師ドリトル」だ。
「手術代は百万円」「獣医はビジネスだ」と冷徹に言い切る獣医師に扮した小栗旬は,これまでになくのびのびと演技を楽しんでいるようだし,成宮寛貴も手術の出来ないカリスマ獣医師というデリケートな役柄を,嬉々として自分のものにしているように見える。
ただ,「ブラック・ジャック」におけるピノコ役に相当する井上真央の書き込みが充分ではなく,明らかに役不足状態に陥っているのは残念だ。今が旬の若手のホープ三人のやり取りになっても,会話が躍動しないのは,明らかにキャラクターのバランスに問題があるからだ。

だがそんな問題も,獣医師会会長土門大蔵が出てくるだけで,一気に解消される。大物の医師役をやらせたら右に出るもののない國村隼が,これまでどれだけ悪徳医師として汚い金と名声を稼いできたのかは知らないが,とにかくこの貫禄といやらしさはリスペクトに値する。「医龍」の野口と,医師としての「品性対決」をやらせたら,メインプロットは吹っ飛ぶ。間違いなく。


最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。