子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。
子供はかまってくれない
映画「フィクサー」:生身の人間が織り上げた,汲めども尽きぬ味わい
スティーブン・ソダーバーグ制作の社会派作品と聞いて,即座に「エリン・ブロコビッチ」のテイストを想起したのだが,結果は,半分は当たって,半分は外れた,という印象だ。一瞬たりとも緩むところのない脚本を,落ち着いた色調でじっくりと撮り上げたトニー・ギルロイは,同じく脚本家から監督に転身した「クラッシュ」のポール・ハギスと同様,監督としても見事なデビューを飾った。
予想が外れたのは,「エリン~」が根本的にはジュリア・ロバーツを輝かせる「スター映画」としての枠組みの中で,躍動的なドラマを作り上げていたのに比べて,こちらは決してジョージ・クルーニーの「ブロマイド的フィルム」にはなっていない点だ。
確かにクルーニーは眩いばかりの輝きを放っている。エンド・クレジットに重なる,タクシーの後部座席に座ったクルーニーの表情は,まるで「卒業」のラストで,目標を失って呆然とバスに座るダスティン・ホフマンの裏返しのようだった。
しかしこの作品の基調は,あくまで4人の役者のアンサンブルにある。4人の芸達者が,細かく書き込まれた登場人物の陰影を鮮やかに描き出したことによって,作品の奥行きはぞくぞくするくらいに深まっている。
オスカーを獲得したティルダ・スウィントンは,やや技巧が勝っているという印象を与えるが,「オルランド」でのナイフのような鋭さが,こんな風に成熟したのを見せつけられて,同い年の私はただひれ伏すだけだ。
ただ今回,4人の中で扇の要に鎮座しているのは,他でもないシドニー・ポラックだろう。「アイズ・ワイド・シャット」を始めとして,印象に残る演技は数々あるが,この作品での貫禄は,彼の監督作のうちでも最良の部類に匹敵するものだ。
ただ,ラストの切り返しは,宣伝で言われているほど,鮮やかという風には感じなかった。むしろ,クルーニーが,殺されたトム・ウィルキンソンの部屋を訪れて,相手を追い詰める証拠を握るシーンの細やかさや,朝靄の中で,放たれた馬とクルーニーが対峙する場面の緊張感に,活動屋の気概を感じた。
基本的に若者が主たるターゲットとなっているマーケットでありながら,このような大人に向けた社会派ドラマのポジションがちゃんと確保されている,という点だけとっても,アメリカ映画界の熟度が見えるようだ。日本でもヒットして欲しい。
(ちなみに,昨年の秋から暮れにかけて,この作品が各種の賞レースの候補として取り上げられ始めた頃,「マイケル・クレイトン」という原題から,あの「ジュラシック・パーク」の原作者の伝記なのか?と早とちりしたのが,私だけでなければ良いのだが…)
予想が外れたのは,「エリン~」が根本的にはジュリア・ロバーツを輝かせる「スター映画」としての枠組みの中で,躍動的なドラマを作り上げていたのに比べて,こちらは決してジョージ・クルーニーの「ブロマイド的フィルム」にはなっていない点だ。
確かにクルーニーは眩いばかりの輝きを放っている。エンド・クレジットに重なる,タクシーの後部座席に座ったクルーニーの表情は,まるで「卒業」のラストで,目標を失って呆然とバスに座るダスティン・ホフマンの裏返しのようだった。
しかしこの作品の基調は,あくまで4人の役者のアンサンブルにある。4人の芸達者が,細かく書き込まれた登場人物の陰影を鮮やかに描き出したことによって,作品の奥行きはぞくぞくするくらいに深まっている。
オスカーを獲得したティルダ・スウィントンは,やや技巧が勝っているという印象を与えるが,「オルランド」でのナイフのような鋭さが,こんな風に成熟したのを見せつけられて,同い年の私はただひれ伏すだけだ。
ただ今回,4人の中で扇の要に鎮座しているのは,他でもないシドニー・ポラックだろう。「アイズ・ワイド・シャット」を始めとして,印象に残る演技は数々あるが,この作品での貫禄は,彼の監督作のうちでも最良の部類に匹敵するものだ。
ただ,ラストの切り返しは,宣伝で言われているほど,鮮やかという風には感じなかった。むしろ,クルーニーが,殺されたトム・ウィルキンソンの部屋を訪れて,相手を追い詰める証拠を握るシーンの細やかさや,朝靄の中で,放たれた馬とクルーニーが対峙する場面の緊張感に,活動屋の気概を感じた。
基本的に若者が主たるターゲットとなっているマーケットでありながら,このような大人に向けた社会派ドラマのポジションがちゃんと確保されている,という点だけとっても,アメリカ映画界の熟度が見えるようだ。日本でもヒットして欲しい。
(ちなみに,昨年の秋から暮れにかけて,この作品が各種の賞レースの候補として取り上げられ始めた頃,「マイケル・クレイトン」という原題から,あの「ジュラシック・パーク」の原作者の伝記なのか?と早とちりしたのが,私だけでなければ良いのだが…)
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