子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。
子供はかまってくれない
映画「LOOPER ルーパー」:勢いだけで「ブレードランナー」的位置を奪取するのは難しい
未来からタイムマシンで送り込まれた自分を殺そうと奔走する殺し屋が,超能力を授かった母子と出会い,まるで「デッドゾーン」と「レザボア・ドッグズ」を合体したような三すくみのクライマックスに突入する。
大がかりな仕掛けに頼ることなく,さりとて厳密なタイム・パラドックスにがんじがらめにされることもなく,アイデアと役者を推進力にして,至る所で待ち構える難所のカーヴもフルスロットルで突っ切ろうとするかのような,志は非常に高い作品だ。
ノリに乗っているジョゼフ・ゴードン=レヴィットが,ブルース・ウィリス(30年後の世界からタイムマシンで送り込まれてくる将来の自分)と共演することで話題を呼んでいるが,悩める若者の姿を豊かな想像力と繊細な造形力で描き出してきたレヴィットにとって本作の役柄が,果敢なチャレンジであったことは想像に難くない。更に,役者としての柄と過去の役に囚われ続けながらも,ショービズ界でサバイバルしてきたしぶとい先輩の背中から学んだものも少なくないはずだ。
しかし本作自体は,今と30年後の二つの時代に加えて,現代の出来事も視点を変えながら何度も描かれるため,観客は特に序盤において時制を整理しながら物語に付いていく努力を強く求められることも事実だ。
タイム・パラドックスに関してはロバート・ゼメキスならば眉間に皺を寄せるであろうかなり強引な解釈によって,後輪をスリップさせながら進んでいくような印象があるため,厳密なSFファンからは抗議の声が上がってもおかしくない出来だ。
エミリー・ブラントと「ブリキの太鼓」のオスカルにそっくりな子供の親子が出てきてからは,追跡劇とは別の物語に取って代わられてしまうような展開も,好みが分かれるところだろう。
私は先に記した2作品に加えて,「X-MEN ファースト・ジェネレーション」的な雰囲気を持った時間軸を操るクライマックスの緊張感に惹かれてしまったため,ウィリスの独壇場とも言える銃撃シーンのやかましさの方を邪魔に感じてしまった観客の一人だ。
レヴィットが未来からやって来た人間を始末するシーンのこけ脅かし的演出と音響のけたたましさも含めて,緻密さに欠けたプロダクションが,せっかくのユニークなアイデアを活かすことを放棄して,自覚的に粗雑なアクション映画の枠に留まろうとしている姿勢こそ,主人公が「始末」すべき対象だったかもしれない。
★★★
(★★★★★が最高)
大がかりな仕掛けに頼ることなく,さりとて厳密なタイム・パラドックスにがんじがらめにされることもなく,アイデアと役者を推進力にして,至る所で待ち構える難所のカーヴもフルスロットルで突っ切ろうとするかのような,志は非常に高い作品だ。
ノリに乗っているジョゼフ・ゴードン=レヴィットが,ブルース・ウィリス(30年後の世界からタイムマシンで送り込まれてくる将来の自分)と共演することで話題を呼んでいるが,悩める若者の姿を豊かな想像力と繊細な造形力で描き出してきたレヴィットにとって本作の役柄が,果敢なチャレンジであったことは想像に難くない。更に,役者としての柄と過去の役に囚われ続けながらも,ショービズ界でサバイバルしてきたしぶとい先輩の背中から学んだものも少なくないはずだ。
しかし本作自体は,今と30年後の二つの時代に加えて,現代の出来事も視点を変えながら何度も描かれるため,観客は特に序盤において時制を整理しながら物語に付いていく努力を強く求められることも事実だ。
タイム・パラドックスに関してはロバート・ゼメキスならば眉間に皺を寄せるであろうかなり強引な解釈によって,後輪をスリップさせながら進んでいくような印象があるため,厳密なSFファンからは抗議の声が上がってもおかしくない出来だ。
エミリー・ブラントと「ブリキの太鼓」のオスカルにそっくりな子供の親子が出てきてからは,追跡劇とは別の物語に取って代わられてしまうような展開も,好みが分かれるところだろう。
私は先に記した2作品に加えて,「X-MEN ファースト・ジェネレーション」的な雰囲気を持った時間軸を操るクライマックスの緊張感に惹かれてしまったため,ウィリスの独壇場とも言える銃撃シーンのやかましさの方を邪魔に感じてしまった観客の一人だ。
レヴィットが未来からやって来た人間を始末するシーンのこけ脅かし的演出と音響のけたたましさも含めて,緻密さに欠けたプロダクションが,せっかくのユニークなアイデアを活かすことを放棄して,自覚的に粗雑なアクション映画の枠に留まろうとしている姿勢こそ,主人公が「始末」すべき対象だったかもしれない。
★★★
(★★★★★が最高)
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