子供はかまってくれない

子供はかまってくれないし,わかってくれないので,映画と音楽と本とサッカーに慰めを。

映画 2018年上半期レビュー落ち穂拾い(その1)

2018年07月07日 20時44分24秒 | 映画(新作レヴュー)
15時17分,パリ行き:★★★
四捨五入したら既に90代という大御所イーストウッドが,このところ頻繁に取り組んでいるノン・フィクション系列の1作品。今回は当事者の事件前のエピソードと,列車ハイジャック時の描写とで,明らかにヴォリュームのバランスを欠いている点が特徴。世界中のどこでも起こり得るテロの恐怖とそれに巻き込まれる普通の人々の姿を対象としながら,一般的な社会的評価は決して芳しくない人間が,思いもかけない事件に遭遇し,勇気と行動力を奮い起こすことによってヒーローとなる,というアメリカン・ドリームの変形に陥ってしまっているように見える。構造的な配分も,当代きってのシネアストである御大のこと,当然,確信犯的なチャレンジだと思われるが,残念ながら成功したとは言えない結果となった。

ウィンストン・チャーチル:★★
ゲイリー・オールドマンのメイクアップによってオスカーに輝いた日本人のメイク・アップ・アーティスト辻一弘氏の仕事が話題となった作品。実際メイクは素晴らしい出来映えだったし,オールドマンの演技もメイクに引っ張られるかのように見事ななり切り感を醸し出していたが,映画自体の出来はと言えば,ジョー・ライト作品としては極めて凡庸なレヴェルに留まっている。チャーチル自身の戦争継続の判断が「地下鉄パブコメの結果だった」というクライマックスは,実際そんなエピソードがあったとしても,明らかに腰砕け。出番は少ないのに妻役のクリスティン・スコット=トーマスと秘書役のリリー・ジェームスの佇まいの方が記憶に残っているという事実が,作劇的な失敗を証明している。

フロリダ・プロジェクト:★★☆
殆どの映画評が絶賛に近い高評価を与えていたが,同じ貧困家庭を扱った日本の「万引き家族」とは異なり,描かれた貧困家庭(こちらは母子二人)に対して共感できなかったことがすべて。勿論,この種の映画の成功例に漏れず子供の演技は達者で,パステルカラーに彩られたディズニーランドと文字通り板一枚離れた場所で進む貧困の実態もリアルに捉えられてはいた。それでも,今よりも狭いことが明白な出口を敢えて選んで孤立していく母と,そんな母親を愛さずにはいられない娘の姿に涙していた観客の姿は,私には遠いものだった。ウィレム・デフォーの「管理人はつらいよ」な眉間の深い皺に☆をひとつ追加。


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