12月13日放送のディスカバービートルズは、「ザ・ビートルズ」からD面だった。
2枚組アルバムの最後の面は、代表的な名曲はなく、マニア向けな内容になっている。
ここでは「レボリューション」を取り上げてみよう。
1曲目の「レボリューション1」は、レボリューションシリーズではもっとも早くレコーディングされたもので、元のバージョンはかなり長かったらしい。
そのため、前半と後半に分けられて、前半は「レボリューション1」、後半はミュージックコンクレートの素材の一つとして「レボリューション9」となる。
ジョンは「レボリューション1」をシングルとして出したがったが、ポールとジョージに反対され、再度レコーディングし直すことになる。
当初「レボリューション2」とされたこのバージョンは、2が取れて「レボリューション」となり、「ヘイジュード」のB面としてシングル発表されるに至る。
ホワイトアルバムのスーパーデラックス盤には、レボリューションシリーズのいろいろなデモ音源が入っていて、とくに「レボリューション1 テイク18」の後半部分には、「レボリューション9」で聴けるジョンの叫び声なんかが入ってるのを聴くことが出来るのと、この段階ですでにミュージックコンクレート的な音源が挿入されているのがわかって興味深い。
「レボリューション9」はビートルズの作品中最も前衛的で、音楽としてはかなり難解な部類に入る。
革命の様子をいろいろなテープをつなぎ合わせて表現しているのだけど、最初聴いたときはまるでわけがわからなかった。
今でもわけがわからないけど、この放送で久しぶりにきちんと聴いたら、やろうとしていることくらいは分かったと思う。
「ライブ・アット・ザ・ハリウッドボウル」
数年前このアルバムが発売されたとき、買うつもりだったものの、サンプル音源聴いただけで満足してしまい、結局買わなかった。
今はサブスクで聴けるので、じゃあ聴かねばなるまいと、35年ぶりくらいにフルで聴いたのだった。
長らく廃盤だったこのライブアルバムは、昔と同じくあついあつい内容で、とても良かった。
よく元のLP盤は、観客のキャーという悲鳴が大きすぎて音楽として楽しめないと言われてたけど、僕はぜんぜんそんなことはなく、ロックンロール魂に満ちた若きビートルズのライブが聴ける好盤だった。
今回、ものすごいお金と労力と現代の技術の進歩により、LP時代の熱気はそのままに、バンドの歌と演奏がよりクリアになって蘇った。
とくにジョージのギターが生々しくとても存在感が増しているように思う。
この頃のビートルズは、リバプールやハンブルク時代のロックンロールバンドとしての味がまだ残っていて、超満員の大歓声を前にしても乱れることなく、自分たちのノリで演奏をこなしてるのがよくわかる。
まずなんといっても、バンドとして演奏がすごく上手い。
モニターがなく、しかもうるさすぎる大歓声で全く自分たちの音が聴こえないなか、恐るべき演奏力である。
そして歌のうまさ、コーラスのうまさ。
歌唱力というのとはちょっと違う、ライブバンドとしての安定感がすごいのだ。
それにしても、この発狂してるような大歓声はちょっと異様である。
とくに、ジョージやリンゴのボーカル曲になると、おそらく肩身の狭いジョージファンやリンゴファンがここぞとばかりに大声で悲鳴をあげている。
もうほとんど命がけと言っていいくらいの絶叫で、帰り道では喉も体力も気力も尽き果てて抜け殻になったに違いない。
今回のリマスターで少し気になったこと。
「オール・マイ・ラビング」で、ギターソロのあとジョージが主旋律を歌いポールは上でハモるというライブアレンジになる。
元のLP盤だと、ジョージの声よりポールのハモリの方が大きく入っていて、それがいい味を出してたのに、今度のはポールの声が小さくなりジョージ中心になってること。
前の音に慣れてると、ちょっと違和感を感じてしまうが、初めて聴く人なら問題ないだろう。
ビートルズの全盛期を伝える正式なライブ盤はこれだけである。
映像なら他にシェイスタジアム公演や武道館公演があるし、YouTubeには数多くのライブ映像があるから、とくに不満はないけれど、やはりライブアルバムとして、音だけに集中して聴きたいこともあるのだ。
最後に、ボーナストラックとして、旧盤には入ってなかった4曲が追加されている。
元の曲順を尊重して、最後に付け加えたんだろうけど、僕としては実際のライブでの曲順を考慮した配置の方が良かったのにと思う。