昨日のニュースによると、インドネシア海軍の潜水艦が沈没して、水圧に艦ごと押し潰されて乗組員全員死亡したという。
潜水艦というのは、海洋調査用の潜水艇と違い、どこまでも深く潜れるわけではないのだ。
艦のなかで水圧に襲われる恐怖というのはいかがなものだろうか。
というのも、ちょうど昨日GYAOの映画配信で、1981年のドイツ映画「Uボート(ディレクターズカット版)」を見たのである。
名作の誉高い作品で見た方も多いと思うけど、僕は初めて見た。
3時間以上に及ぶ長編だけど、まったく退屈させない緊迫感と恐怖にあふれる映画だった。
いわゆる戦争映画なのだが、陸戦や軍艦による海戦と違い、潜水艦の戦いというのはかなり独特で、映画のほとんどは潜水艦内でのドラマである。
狭い艦内に50人近い人間が乗り込み、数ヶ月そこで生活をする。
個人のスペースなどなく、極小のベットも交代勤務で共用、トイレは一つ、シャワー無し、あちこちにパンやソーセージが置かれ、何日も経つと艦内は悪臭が漂うようになる。
映画の前半で、いかに艦内は劣悪な艦橋であるかが、とてもリアルに描かれるのだ。
後半、敵の攻撃に耐えられなくなり、ついに潜水艦は制御不能になって海底に沈んでしまう。
幸い艦の限界ギリギリの深度ではあるものの、あちこちから浸水があり、今にも水圧に押しつぶされそうになりながら、懸命に修理をせねばならなくなる。
水圧にボディが軋み不気味な音が響き渡る。
この緊張感、この恐怖、まるで自分も潜水艦内にいるかのようである。
そして薄くなっていく酸素、見てるこちらまで息苦しくなってくる。
この映画を撮っている間、役者たちはヒゲ剃り禁止、太陽の光を浴びるのも禁止だったという。
特殊メイクなしで、リアルに疲労困憊の顔となる。
ラストシーンは衝撃というより、戦争というのはこういうものだ、というある種の現実感があり、ため息が出る結末となる。
40年も前の映画だけど、安っぽさ、作り物っぽさはなく、ストーリーもよく出来ている。
映像も音響も秀逸な出来で傑作映画の評価通りだと思った。