Music Mania

No Music No Life

海底から伸びる手

2013年07月28日 | 日常

子供の頃、夏になると友達と怪談などの怖い話をして盛り上がったものだが、その中の一つにこういう話がある。
「7月のある日だけは絶対に海へ行ってはいけない、なぜなら、その日に海へ行くと海底から幽霊の手が出てきて引きずりこまれるから。」

最近、会社でもこのことを言ってる人がいたので、何か根拠や元となった話があるのだろうか?と調べてみた。

すると、7月28日に津の海で泳ぐとモンペや防空頭巾をかぶった幽霊が出てきて海に引っ張られるという。
そして、昭和30年7月28日には、死者36人とい日本の海難事故としては類をみない大惨事があったらしい。
このときもモンペや防空頭巾の幽霊が多数出てきて人々を襲ったといわれる、

昭和30年7月28日、その日は津市の橋北中学の生徒が水泳の授業のため海へ来ていた。
この日参加した生徒は200人ほどで、遠浅で波の穏やかな津の海岸は、水泳の練習をするのに最適だったと思われる。
子供でも足が充分に届く範囲で水泳の練習が始められたのだが、まもなく事態は急変する。
なんとそんな穏やかな海で半数の人が溺れたのだ。
そこから自力で助かった人が半分、残り半分はなんとか救助されたものの36人が帰らぬ人となる。

このとき九死に一生を得た生徒の証言によると、「海の底からたくさんの女の人がひっぱりに来た」という。
別の生徒は「モンペをはいて防空頭巾をかぶった女性が何十人と現れた」と証言している。
さらに、そのとき浜辺にいた人の中にも、モンペ、防空頭巾の人物を見た人がいるらしい。

モンペ、防空頭巾といえば戦時中だ。
なんと昭和20年の7月28日、津で大規模な空襲があり多くの人が亡くなったのだった。
このとき津の街は焼け野原となり、多くの死体の処分に困ったらしい。
真夏ということもあって、すぐになんとかしなきゃいけないということで、中河原海岸に大きな穴を掘って埋めたという。
中河原海岸とは、後の昭和30年に大水難事故のあった海岸なのだった。

三重県津市中河原海岸奇譚


現在、昭和30年の事故については、ある程度化学的な解明がされているようだ。
この辺りには異常流という、突然水の流れが速くなったり、水位が上昇することが、たまにあるらしい。
そのため、今は遊泳禁止区域になっている。

では、幽霊は?

ここからは僕の考えなのだが、昭和30年当時中学生だった、ということは空襲があったときは2~5歳くらいだということだ。
そんな幼い時期に、空襲にあい、街が炎につつまれ、逃げ惑う、多数の死傷者が出る、という壮絶な体験をすれば、心に大きな傷痕をつけるのではないだろうか?
おそらく親、兄弟、友達、知り合いを亡くした子も多かっただろう。
このときの心の傷が、水泳中の異常流によって溺れたとき、フラッシュバックとして蘇ったとしてもおかしくはない。
命の危険にさらされる空襲時の心理状態と、溺れて命の危険にさらされた時の心理状態、似ているといえば似ている。
そこへ「10年前のこの日は、空襲で多くの人が亡くなった日」という予備知識もあったはずだ。

金曜日の夕方、僕は事件のあった中河原海岸へ行ってみた。
通勤路を少しそれると、すぐに堤防へ出る。
海水浴シーズンなのに誰もいない海は、今日も穏やかに波が打ち寄せていた。

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イタリアンデザインはお好き?

2013年07月27日 | クルマ
昨日の朝、個性的なクルマとすれ違った。
遠くからでもそれとわかる斬新なデザイン、しかしアクの強すぎるセンスは賛否両論というより圧倒的に否が多いと思われる。

そのクルマは「フィアット・ムルティプラ」。



スポーツカーや未来をイメージしたショーカーではなく、一般の人が乗る普通のクルマとしては、大胆すぎるデザインといっていい。
イタリアから正規に輸入が開始されたが、売れ行きは悪く、あまり見かけることはない。
よく言われるのは、「保守的な日本人には、このデザインは理解出来ないのだろう」という意見だ。
だが、僕の見解は少し違う。

・イタリア車の持つイメージ
・輸入車全般の値段の高さ
・このデザインが受け入れられなかったのは日本人だけではない

まずイメージだが、かつてイタリア車といえば「壊れる」と同義語と言われるほど品質が悪い印象があった。
同じイタリア車で、誰が見てもカッコイイと思われるアルファ・ロメオでさえ、品質の低さゆえに購入をためらう人は多い。
さすがに、現在ではかなり改善されていると思われるが、ムルティプラが発表された当時は、まだまだ壊れるイメージが強かっただろう。

次に輸入車の価格設定だが、仕方がない部分があるとはいえ、まだまだ高すぎるように思う。
この値段だと、ちょっと面白そうだから買ってみようか、という気にならない。
そして、ドイツ車や一部の高級車を除いて、下取り値段は恐ろしく安い。
10年以上輸入車に乗っていた僕に言わせれば、日本で乗るクルマとして日本車に勝るものはないわけで、それが安価で買えて故障もしないのなら、外車の出番はない。

3番目のデザインについてだが、これが受け付けないのは日本人だけではないのだ。
イギリスの自動車雑誌にて「世界一醜いクルマランキング」というアンケートをとったところ、ムルティプラは2位なのだ。
古今東西、あらゆるクルマの中で2位というのは、ほとんどの人間が「このクルマのデザインは酷い」と思っているということだ。
さらに、フィアットの人間ですら「このクルマを運転するのは素晴らしい。特に車内にいるのがベスト。なぜならその酷い姿を見なくてすむからね」と言っている。

しかし、ここまでボロンチョに言われるクルマは、一部の少数派の人に大変人気があるのも事実だ。
よーく見ていると、ちょっとシロイルカみたいで愛らしい気さえしてくる。



ただ、あまりにも売れ行きが悪かったため、マイナーチェンジで普通になってしまった。
僕は非常に残念な気分になったのだった。



(おまけ)
「世界一酷いクルマランキング」の1位はどんなクルマなのか?
僕は深海生物か、怪奇植物みたいなオドロオドロしいクルマを想像したが、そうでもなかった。
ポンティアック・アズテック。
たしかに変ではあるが、ムルティプラにはかなわないな。


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琵琶奏女はメタル

2013年07月21日 | 日常
日本の動画を海外の人はどう評価しているのか、を紹介している「パンドラの憂鬱」というサイトから転載だ。
ある琵琶の弾き語りの動画を見ての反応だが、この感性に僕は驚いた。
動画を見る前に、先にコメントを見てもらおう。

・こんなに傑作と呼ぶにふさわしいメタルは初めて見た、スゲー!(アメリカ)
・オレも全く同じことを考えてた。ビワの演奏者は中世のメタルアーティストって呼べると思う。凄くヘヴィで刹那的で歌詞もまた素晴らしい(スウェーデン)
・4分52秒のところなんてギターみたいだもんな、マジでカッコイイわ(アメリカ)
・本当に興味深い。それに凄く力強くて、彼女の感情が100パーセント感じられる。日本のロックとしてビワを聴いてみたい。絶対にクールだ(国籍不明)
・これはハードコアの傑作だ。日本がロックンロールを生み出したなんて初めて知ったぜ(アメリカ)
・ビワロックというジャンルが誕生した瞬間だ(オーストラリア)
・こりゃロックだわ、冗談抜きで初期のブラック・サバスを思い出した(アメリカ)
・あの凄まじい演奏がデーモンを呼び出したんだろうな(アメリカ)

ロックだ、メタルだと絶賛している。
では動画をご覧いただこう。
演奏者は櫻井亜木子さんで、曲は「壇ノ浦」。


Roving Ronin Report Presents Japanese Biwa Player


いかがでしたか?
ロックやメタルを感じられただろうか?

「壇ノ浦」とはご存知、平安時代末期、平家と源氏の最終決戦となった「壇ノ浦の合戦」のことだ。
こういう戦争を題材にした音楽というのは、今もメタルやハードロックの一部にある。
歌詞の内容はわからなくとも、演奏者の心が聞き手に伝わり、「これはロックだ、メタルだ」と感じるのだろう。
演奏者の櫻井さんにとって、そのように感じてもらえるのは本望なのではないだろうか?

ちなみにこの櫻井さんという人、琵琶法師の家系でも、親が和楽器演奏者でもなく、大学で「何かの手違い」で琵琶を始めたという。
その後、やはり何かの手違いから琵琶を仕事として演奏することになり、自ら「琵琶奏女(びわそうめ)」という造語を名乗っている。
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「産んでくれてありがとう」って?

2013年07月20日 | 日常
最近よく「産んでくれてありがとう」という言葉を目にする。
自分の母親に対してだったり、姑が嫁に対してだったり、彼氏が彼女の母にだったりする。
言いたいことはわかるが、どうもしっくりこない。

この中で、自分の母親に対して「産んでくれてありがとう」というのは、わからないでもない。
今の自分の幸せがあるのは、母が自分を産んだからに他ならないからだ。
しかし、僕は「産んだ」ことより「育てた」ことのほうが重要な気がする。

姑が嫁に対して「孫を産んでくれてありがとう」というと、たいていの嫁はイヤな気分になるという。
「あなたのために産んだんじゃない」とか「○○家の子孫繁栄のために産んだんじゃない」と思うからだ。
昔ながらの「家」重視の思想だが、こういうのはすでに時代錯誤な考えで、若い人が嫌がるのもムリはない。
酷い姑になると、息子夫婦の家に来て「うちの孫がお世話になってます」などというらしい。
あまりにもズレていて思わず笑ってしまった。

また、ヒップホップ系の歌詞で「産んでくれた君のママに感謝」みたいな言葉を耳にすると、やはり違和感を感じる。
もちろん、ママが彼女を産まなければ存在そのものがないわけだが、今現在の彼女を形成しているのは、育児、家族、友人、学校など、育ちそのものだろう。

ジョン・レノンは偉大なロッカーだが、ファンはジョンの母に感謝しなければいけないのだろうか?
ジョンの母は男子を一人産んだが、「あのジョン・レノン」を育成したのは、ポール・マッカートニーやジョージ・ハリスンらがお互いに影響しあった結果ではないのだろうか?
マイケル・ジャクソンの母は男子を産んだが、「あのマイケル・ジャクソン」を育成したのは、父や兄弟たちではないだろうか?
第2次大戦中、多くのユダヤ人が亡くなったのは、ヒトラーの母が彼を産んだからか?違うだろう?

もちろん女性にとって、人間を産むというのは、人生の中でも最重要な事件であり、命がけのチャレンジでもある。
軽々しく扱いことは不謹慎だ。
それを承知の上で言わせてもらうと、子を産むというのは人間に限ったことではなく、犬も猫も、魚も虫も、子や卵を産む。
これは生物である以上、当たり前のことだと言える。
繰り返しになるが、重要なのはどう育てたか、どう育ったか、だと思う。
そしていつか、素直に「ここまで育ててくれてありがとう」といえる大人に成長出来たらいいと思うのだった。


John Lennon - Mother (Live) (HD)
ジョン「次の曲はローリング・ストーンズを脱退してからの作品の一つだ」←ストーンズちゃうやろっ!と突っ込んでください

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富士山

2013年07月14日 | 日常
富士山が世界遺産に登録された。
世界的に見ても屈指の美しい山である富士山は、古くから日本の象徴の一つになっている。

富士山はいい。

僕は富士山に登ったことはないが、その美しい姿は何度か見ている。
朝から晩まで眺めていても飽きない、とは言わないが、もし自宅の窓から富士山が見えた場合、10年経っても20年経っても「今日は富士山が綺麗だな」と思うことだろう。

僕が実際に生で富士山を見たのは大人になってからだ。
それまで何度かそっち方面に行ったことはあったが、天気が悪かったり、晴れていても季節的に見えにくい時期だったりできちんと見たことがなかった。
旅行の場合、前もって宿をとったりするのだが、その日がいい天気だとは限らない。
なので、ある日の秋晴れの朝、思い立ってクルマを飛ばして見に行った。
ほとんど雲一つない秋晴れの富士山は、物凄い迫力で僕を迎えてくれた。
はっきりいって感動した。
もう20年くらい前のことである。






その後も何度か見ているのだが、本当に空気の澄んだ日だと夜でも富士山が見えた。
月明かりが山頂の雪を照らし、瞬く星をバックに佇む富士山の美しさは、まさに絶景だった。

現在、富士山はいつ噴火してもおかしくない状態だという。
もし噴火したら、火口の場所にもよるが、あの美しい姿がなくなるかもしれない。
美しいうちにもう一度見たいものだ。

(おまけ映像)
シャケこと小暮武彦が富士山の麓での生活を語っている。
ダラダラと1時間くらい喋っているので、興味のある人のみどうぞ。

11/18(金)Akemi's Bar ゲスト木暮shake武彦
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