猪木さんの訃報の後、すぐに古舘さんから「猪木さんのことを入れたい」と言われました。極論、古舘さんが今喋りたいことを披露するのが『トーキングブルース』です。観客も猪木さんの話を聞きたがるはずです。反対する理由はありません。
と思う一方で懸念もありました。ここまで「言葉」というテーマで作ってきた内容が猪木さんに全部持っていっていかれるのではないのかという懸念です。そこで折衷案として「時間は10分ぐらい」「テーマである“言葉”を絡めて欲しい」という提案をしました。
古舘さんから猪木さんブロックの初稿が上がってきたのは11月上旬でした。喋ったものを文字起こししたものなので時間もわかります。20分を超えていました。内容もかなり入り組んでいます。そこで初稿を元に打ち合わせをして内容を整理。それを録音、文字起こしという工程をして準備稿が完成しました。
![](https://blogimg.goo.ne.jp/user_image/07/ed/7ef28f82dffbe624a20a2fca3a1e7f7f.jpg?1670914394)
並行して、各ブロックも固めていきました。
「政治」ブロックはネタが膨大にあるので、その取捨選択。
「エンディング」も初稿では20分はありました。さすがにこれは長すぎるので、説明を削ぎ落としていきました。
なかなか見えなかった「鼎談」もようやく形が決まり、数回の改稿を経て、準備稿が完成しました。
初めての通し稽古は11月20日。
ここで初めて今回の全体像が明らかになりました。
数日おいて2回目の通し稽古。
ここでスタッフから新たな意見が出ました。
猪木さんブロックがちょっと淡白なのではないかという声でした。
話し合いは長時間に及びましたが、結論は出ず、古舘さんの「そんなに長くはしないから、とりあえず次回の立ち稽古でやらせてくれ。それを観て判断してほしい」という言葉で、結論は次回に持ち越されることになったのです。
3回目の通し稽古で、猪木さんブロックの後半が足されたものが披露されました。内容はもちろんのこと、時間的にも全体のバランスを崩さない仕上がりとなっていました。
よし、このかたちで行こう!…とすんなり決まると思いきや。また新たな意見が出てきました。
従来のエンディングではなく、猪木さんブロックをラストにした方がいいのでは?という意見でした。
それもわかります。猪木さんブロックで感動した後、チョムスキーの話を聞いても入ってこないかもしれない。観客は猪木さんの話で感動してそのまま帰りたいのではないか。
ですがそれをやってしまうと、今回のテーマ「言葉」が薄れてしまうことにもなります。
どちらの終わり方もありでしたが、最終的には古舘さんの判断で、本編のあのかたちになりました。
ただし猪木さんブロックからエンディングへと切り替えるためには、やはり何かが必要ということで、言葉を少し足すことにしました。
エンディングで、古舘さんの持論が酒井先生に否定されるくだりは、確かに喜劇的な展開ではありますが、まさか笑い声が上がるとは思いませんでした。たぶん、猪木さんブロックの緊張があってこその笑いだったのでしょう。
『古舘伊知郎トーキングブルース「言葉2022」』制作備忘録、
以上を持ちまして終わりとさせて頂きます。
なお、次回に向けての打ち合わせが年内には始まります。