山里ひぐらしの小径

木曽路の入り口、岐阜県中津川市から
人と自然とのかかわりをテーマに、山里、植物、離島など。

山奥の用水の水が青かったことなど

2021-06-11 | 山里

用水の流れを調節するところ。

手前右側は田んぼの方に水を流す口。向こうの2つは、余った水を下の沢に放水する口。

 

山麓の集落の一番奥まで行ったら、用水があった。

とはいえ、一番奥まで行かなくても、用水はある。

ただ、こういった山奥の用水は、沢から取り入れた本当にきれいな水を流しているので、見ていて気持ちがよくなる。もう少し下の平地になったところでは、雨水や沢水を一旦溜池に入れて、そこから田んぼへ水を引いている場合が多い。が、この辺りには溜池はほとんどない。

恵那山からの水は絶えず流れっぱなしになっていて、とりわけ春先から5月頃にかけて水量が増えるのは雪解け水がどんどん流れてくるためである。また、雨の日の後も水量が多い。裏木曽や木曽では川がとても青いのだが、こんなコンクリート張りの水路でも水が青く見えるので驚く。水の中のミネラルの関係なのだろうか。

用水でも青い水。水色の棒に付いた板を上下させて、水の出入口を開けたり閉めたりする

山から来る沢はあちこちにあるが、こうしてこんな山奥から水路を引き田んぼに安定供給している仕組みを作った先人はすごい。今でこそコンクリート張りになったり黒い塩ビ?パイプを使ったりしているが、昔は重機もない中でツルハシを使って土を掘ったり石を積んだりしたのである。前に山形県の山奥の用水を見たことがあるが、山奥の大きな岩を穿ってトンネルを掘って用水を通してあった。こういったことが日本中の山里でくまなく行われてきたのだ。

奥から流れて来ている水を一旦この箱に入れて分配しているようだ。左側の上のパイプは道路の下を通って反対側に行っている。

田んぼというのは畑に比べてはるかに手間のかかるインフラが必要になってくる。田んぼ自体を作るのにも、斜面を切って水平面を作ってから、粘土を入れて踏み固め、さらに糸を張って厳密に高さを測って平らにして、畦を作って水が溜まるようにし、そこへ水が来るように水路を作らなければならない。

田んぼをやめるとか田んぼをつぶすというのはそういった手間暇のかかった設備を壊すということになるので、「先祖代々の田んぼを守る」という意識があるのは当然だろう。がその意識も今は受け継がれなくなって、田んぼなどない方がいい、さっさと売ってお金にしたいという人が多くなっている。米を出荷するときの価格が安すぎるのだから仕方がない。

日本中のこういった設備がなくなっていけば風景も変わってくる。

なんだか書いているうちに気分が落ち込んできた。私は農業者ではないので、文句を言う資格はない。

この用水で耕作している田んぼ

広い土手の草もきれいに刈られている。これだけ刈るのは気が遠くなるほど大変だと思う

 

川を隔てた反対側の用水は、途中に小水力発電所ができていた。ただ流していただけの用水の途中で発電して、使った水をまた用水として下流に流す(当然)。この発電所を作ったことで、用水に使っていた管などが更新され、用水自体がより良くなったと看板に書いてあった。

小水力発電所

 

発電所のすぐ下の用水

 


牧場によくあるヒメスイバ

2021-06-10 | 植物

栗の木とヒメスイバの野原

ヒメスイバもまた、何度見ても撮りたくなる草。逆光で見たときのサラサラ透ける繊細な感じが好みだ。

まあ、大方の人はただの草だと思って見向きもしないだろう。というところで、自分が少数派でありそうだというだけのことで無駄にかすかな優越感を抱いたりする。こんな人に見向きもされないものが好きな自分って、スゴイ……。みたいな。別にすごくはない。ただの変わり者である。

ヒメスイバ Rumex acetosella ギシギシ属 タデ科

(2021年6月岐阜県中津川市)

前にも記事にした気がするが、牧場のふちなんかに一面に生えていることがある。帰化植物なので山の奥深くにはない。人里の農地の刈り込まれたところ、すなわち日当たりの良いところである。このヒメスイバも4月の終わりごろから出てきて、5月中頃一度きれいに刈られたのだが、また伸びてきた。刈りこまれてもすぐにまた伸びて咲けるのだから多年草というのは根に結構な養分を蓄えていられるものだと感心する。人間で言うとお金が全部なくなっても何らかの資産を元手にすぐまた生活費をふんだんに捻出していい暮らしができるような感じである。このヒメスイバに対して人間が奪ったのは地上部だけであり、地下に埋蔵資産があるのである。スバラシイ。

しかしもう数年もすれば地上部の財産を奪い取る人間もいなくなってしまうかもしれない。そうするとほかの草が生い茂ってヒメスイバも衰退する危険をはらんでいる。

 

ところで数日前に書いていたキイチゴ(モミジイチゴ)のことだけど、毎日食べても次の日には新しいいい実が生産されているので、散歩の合間にキイチゴを食べるのが忙しい。林道を歩くと道端にずーっとキイチゴが鈴なりになって続いているのである。夢中になって食べている自分にふと我に返り、クマってこういう感じかなと思う。

うちの横のキイチゴ藪は奥の方にすばらしい実がいっぱいあるのだけど、とげがあって奥に入れない。今日は葉の上にチャドクガの幼虫が2匹いたので、もう明日からは手を出すのをやめたほうがいいかもしれない。


ヒメジョオンの季節到来 ハルジオンとの違い

2021-06-09 | 植物

ヒメジョオン Erigeron annus  2021年6月上旬

ムカシヨモギ属 キク科

今の時期、ハルジオン→ヒメジョオンに移り変わっている。

すなわち、終わりかけのハルジオンと、始まりかけのヒメジョオン、どちらも咲いている。

何かの図鑑に「いつのまにかハルジオンとヒメジョオンが入れ替わっていて、ずっと同じものが咲いていると思っている人がいる」という趣旨のことが書いてあったけど、ほんとうにその通り。ずっと同じものだとは思ってないけど、「あら、いつのまにかヒメジョオンばっかり」みたいになっている。そんな感想にはたいてい「暑ぅ……」を伴う。

で、これってどっち?と花をポッと持ってこられて、しばし迷うこともある。もし誰かに植物の名前を聞くときは、できるだけ地上部全体を持っていった方がいい。

自分ではパッと見で感覚的にどっちか分かるのだけど、その違いを説明するのに苦慮することもある。そこでうまく説明できるようにいろいろと写真を探していたらめんどくさくなって記事が書けなくなっていた。

気を取り直し。

〇まず、咲く時期。

とある図鑑には、ヒメジョオンが1カ月遅いと書いてあるけど、私の感覚では2カ月遅い。また、ハルジオンは4月から6月の間の2カ月ぐらいしか咲いてないけど、ヒメジョオンは6月から秋までずーっと咲いている。これから先見るのはヒメジョオンばっかりだ。見かける期間としてヒメジョオンの方が圧倒的に長い。

4~6月上旬 ハルジオン | 6~10月頃 ヒメジョオン

咲く時期がずれているので、基本、それだけで分かるのだが、今(6月上旬)の時期だけ混じるから面倒なことになる。

〇とにかく決定打 茎が中空か

ハルヒメ

茎が中空になっているのがハルジオン。中空とは、完全にストローみたいなこと。

茎の中に白い髄があるのがヒメジョオン。上の方では髄の中に小さい穴ができているのだが、こういうのは中空とは言わない。

 

〇花 花びらの幅と長さがもう一つの決定打

見た感じが全然違う しかし人によっては同じに見える

ハルヒメ

ハルジオンは花びらが長くて細くて糸みたい。真ん中の黄色いところよりも花びらが長い。

ヒメジョオンは花びらの幅が1ミリぐらいありへら型になっている。真ん中の黄色いところと同じぐらいか少し短く見える。

ハルジオンの花色濃いタイプ

ハルジオン(上の写真)は淡紅色がかるものが多い。でもかなり白いのもある。

ヒメジョオンは決して赤色がかることはない。真っ白。

ハルジオン(上の写真)の花弁は長くて細いせいか、絡まり合った感じで乱れている場合が多い。蕾の段階でもかなりヨレヨレともつれあってる感がある。ヒメジョオンではそこまでよれよれにならない(少しはなってるものがある)。

 

〇うなだれているか……雰囲気の問題なので説明するには苦しい

ハルはうなだれている。ヒメはうなだれていない。と言われる。

確かにそうなのだ。

ハルは雰囲気的に大きくうなだれていて、ヒメは雰囲気的にうなだれていない。だからそれで分かる。

ハルヒメ

ところがヒメも観察すると、つぼみがうなだれているのだ。「つぼみがうなだれている」という言葉だけで説明することは困難だ。

 

〇立ち姿と雰囲気 

すっくと立って背が高いのがヒメ 夏の空家の庭に生い茂る

ハルヒメ

1枚目(左)ハル、2枚目(右)ヒメ。やはりこの真っ直ぐピンと立ってる感じが一目でヒメジョオン!なのだ。

ただ、まだ小さいヤツはもしかしてハルかも?などと思って目を凝らすことになる。

ハルジオンは軟らかそう。ヒメジョオンは堅そう。(に見える。実際の触感ではない)

ハルジオンは私の観察では70㎝を超えることはない。ヒメジョオンは放っておくと平気で1.2mとかもっととか高くなる。夏の空家の荒れ果てた庭に生い茂っているのはヒメジョオンである。いや、ヒメジョオンが生い茂ると「荒れ果てている」と認定される。

草丈と花の大きさとのバランスで、ハルの方が豪華な感じがする。ヒメは緑が勝つので花は地味に感じる。

 

〇葉……茎を抱くとかなんとか、スルーすべし。

ハルヒメ

ハルジオンは葉の基部が茎を抱く、ヒメは抱かないと言うけれど、ヒメも上の方の葉は結構茎を抱いている。これで見分けるには植物全体の葉を上から下まで見るべきであり、一部だけ見てあーだこーだ言うと間違うことになる。そもそも、茎が中空かどうかと花弁の長さを見れば済むことなので、こんなめんどくさいところで判別しようなどと考えなくて良い。

〇地下茎とか春先の葉

また、春先にロゼットで広がって地下でつながっているのがハルジオン。だから春早いうちにみっしり地上に葉がある。

単独で立ってるのがヒメジョオン。

抜きたくなるのがハルジオン。刈りたくなるのがヒメジョオン。(意見には個人差があります)

上の写真。ハルジオン。何となくやさしい感じ。

ヒメジョオンに失礼を承知で言ってしまうと、写真撮りたくなるのがハルジオン。ならないのがヒメジョオン。


謎のアマドコロナルコユリ

2021-06-08 | 植物

見たことのないものが。

最初ツツジ科の何かかと思いました。

標高700mあたり。

一番近いものはミヤマナルコユリなんだけど、私の知っているミヤマナルコユリとかなり違う。

図鑑(北龍館)によると、ミヤマナルコユリは高さ30~70㎝。これはせいぜい15㎝。

花は2、3個ずつ付くとあるが、片側に1個ずつしかついていない。

なにか、雑種……?

ヒレフシタミヤマナルコユリ?

主三脈がある。ミヤマナルコユリの特徴。茎に稜があるかは調べてないけどこの感じでは何となくありそう。

アマドコロ属(Polygonatum)ではあると思う。

これがクサスギカズラ科(アスパラガス科)なんだから困ってしまう。

いずれにしても庭に植えたいかわいい花。でも採ってきたりはしません、ゼッタイ。

 


展葉のち太陽光発糖 マムシグサとヤマウルシ

2021-06-07 | 植物

オオマムシグサ Arisaema takedae Makino  

テンナンショウ属 サトイモ科(2021年6月中津川市)

 

オオマムシグサの葉が開いた姿が上から見たら意外とかわいい。

なかなか上から見る機会がなかったので気づかなかった。

植物は太陽光を浴びたら葉緑素の働きによって糖を生産している。

光を効率よく取り入れるために、複数の葉を面的に広げることが多い。樹木だと一枝全体が上向きや横向きの面を作っているのをよく見る。

そして、葉が重なり合ったら無駄が出るので、なるべく重ならないように。人間も梅干を干したり洗濯物を干したりするときは重ならないようにする。

ヤマウルシ Rhus trichocarpa  ウルシ属 ウルシ科(2021年6月中津川市)

ヤマウルシっていうのは本当に葉が端正できれいなもので、幼木があるとすぐに撮ってしまう。これが紅葉するとまたきれいなのだけど。今の時期でも葉軸の赤と葉の緑の補色の組み合わせに正統派の美みたいなものを感じる。

中心から周りに向かって丸く葉を拡げていて、中心部分は重なりをうまく避けるように(ということを狙っているのかどうかは知らないけど)葉(小葉)が小さくなっている。

周りをとりまいているのはダンコウバイの葉。

なんてきれいなの!

 

さて、オオマムシグサ。林の中にすっくと立っていた。その姿はバレリーナというか片脚立ちのタンチョウ鶴というか。マムシグサは曲がらない。いつも真っ直ぐだ。これがこの植物の一番の特徴だろう。

マムシグサ(テンナンショウ)は種類が多いけど *(先日の記事)マムシグサも立派に 

うちのあたりで一番よく見かけるのはこのオオマムシグサ。ときどきスルガテンナンショウ。

オオマムシグサ Arisaema takedae Makino  

テンナンショウ属 サトイモ科(2021年6月中津川市)

オオマムシグサは舌みたいなのが上から垂れ下がり、またその部分が長くて、濃い紫茶色に薄緑の縞が入る。中の棍棒は全体赤紫茶色で上の方が太くなっているけど玉にはならない。


薄紫のコアジサイは梅雨の花

2021-06-06 | 植物

うす暗い人工林の林床にもよくあるコアジサイ。あるところには林内一面にコアジサイが咲いている。

具体的に言うならば、恵那市の笠置山の登山道を笠置町方面から登って行くと、あたり一面コアジサイである。

 

ちなみに笠置山の反対側斜面にはマルバノキが一面にある。山頂に近い登山道から北側を見下ろす斜面にマルバノキがある。

話がそれた。

コアジサイ Hydrangea hirta アジサイ科 (2021年6月中津川市)

この薄紫色は、薄いラベンダー色と言ってもよく、本当にやさしいきれいな色で、私の大好きな花だ。赤みと青みのバランスが絶妙で、うっとりするような薄紫。

なんでも、東日本にはないらしい。図鑑を見ると、関東以西と書いてある。東限はどこなのだろう。

そしてさらに、植え替えできないという噂がある。やってみたことがないから分からないけど。日本庭園にはすごく合うと思うので、もっと植えられたらいいと思う。せいぜい山に行ったらタネを採ってくることだ。

今頃はうちよりもうちょっと奥の沢にはヤマアジサイも咲いているだろう。そしてもうすぐタマアジサイの時期。ヤマアジサイはあまりないけどタマアジサイはいやというほどある。

 

そして、ちょっと似た感じだけどこちらはガマズミ。ガマズミ科なので、アジサイとはもはや親戚とは言いづらいが、まあ全くの赤の他人とまで言わなくても、遠い遠い、ちょっと親戚っぽい人って感じ。織田信長と織田信成ぐらいか。いや、もうちょっと濃いか。

ガマズミ Viburnum dilatatum  ガマズミ科 (2021年6月中津川市)

かつてスイカズラ科だったガマズミだが、APG体系の分類でガマズミ科という地位を得た。梅雨時に咲き、葉が大きくて垂れ下がっている、すなわち側面に向いている葉で、横から光を取り入れている。よって林縁によくあり、日当たりのいいところで元気に育つ。

コバノガマズミとミヤマガマズミはこれより1カ月早く咲き、小型でかなり雰囲気が違う。

 

コアジサイの動画あります

 

https://youtu.be/oIafgIke-v8

 


ノビルの花を見たことがない気がする 花茎は食べられる

2021-06-05 | ネギの仲間 アサツキ・ラッキョウ・ノビル・ヒトモジ…

ノビルが真丸のノビル坊主をつけていた。これは胚珠といういわば果実の中の大事なところで、開花しないでいきなりこんなことになってしまう。閉鎖花とはまた違うみたいで、植物の仕組みとか花と果実の構造って知れば知るほど種類がたくさんあって覚えきれない。

私が見るノビルはいつもこんなのなので、ノビルは花が咲かないものだと思っていた。それが、ネットで見ると結構花の写真がアップされていてびっくり。ネギ属の花らしく花火みたいになっている。

道端に1本、すごく大きくなっているノビルがあり。この状態で茎(花茎)を摘めば、ニンニクの芽みたいな感じでおいしく食べられるのだけど、ちょっと本数が足りない。これぐらい太くて大きいと食べでもあるので、畑で育てたらいいんじゃないか。(ノビル坊主のところは取り去って茎だけ食べる)

かなり見づらいけど、ノビルが伸びてる。

ノビルは葉が立ち上がって途中で分かれてしなだれているのが目立つ。そこがアサツキやラッキョウとの違い。アサツキもよく見ると途中から2つに分かれたりしているのだが、葉がこういうふうにはしなだれないので、分かれているのが目立たない。ラッキョウは地際のところからしなだれるので、こういうふうに立ち上がってから分かれてる感じにはあまり見えない。

今年は春先落ち着かなくてノビルを食べそこなってしまった。野山から得られるものを少しでも取り入れることができたら楽しいと思う。

そういえば今日は6月5日。朴葉餅も作らねばならない。けど準備できてない。朴の葉は青々と茂っている。


赤いキイチゴのニガイチゴも食べられる。一応。

2021-06-04 | 植物

見るからにおいしそうな赤いイチゴ。

口に入れると、甘っ。と思ったら、その後、かすかに苦い味がタネのところからして、その後、微妙に変な味……。

ニガイチゴと呼ばれてしまうほど苦くはありません。普通に食用にして大丈夫で、平気でこの実をパクパク食べる人もいますが、私は遠慮しておきます。

 

ニガイチゴ Rubus microphyllus  2021年6月上旬 岐阜県中津川市

この種名のラテン語 microphyllus って小腸という意味らしいのだけど、「小腸のキイチゴ」? なぜでしょうか。

実が赤いので、キイチゴの王様のモミジイチゴよりもイチゴらしく感じます。

  モミジイチゴに関する記事→ 今が旬。キイチゴの見つけ方・見分け方   キイチゴの季節

 

葉の縁に鋭い鋸歯があって、鋸歯も葉の周りも赤いのがかなり特徴。

こんな荒れた感じのところに生えています。いや、キイチゴ属が生えていると荒れた感じがするということか。

ソーラーパネルとキイチゴが太陽光による生産性を競い合っているようです。