山名:北穂高岳・奥穂高岳・涸沢岳
山行目的:残雪期の穂高に登ってみたい。
山行日:2012年4月29日(日)~4月30日(祝)
天気:1日目晴れのちくもり 2日目くもり
山行者:単独です。
CT:
1日目 自宅1:35=岐阜各務原IC=高山IC=あかんだなP4:15/4:50=バス=
上高地BT5:25/5:30…横尾7:39…涸沢テント場10:43~11:25…
北穂高岳14:06…涸沢テント場15:14
2日目 涸沢テント場4:57…白出のコル6:38…奥穂高岳7:15…白出のコル8:04…
涸沢岳8:35…白出のコル8:55…涸沢テント場9:36~10:33…
横尾12:16…上高地BT14:26/14:30=バス=あかんだなP15:05/15:25=
高山IC=岐阜各務原IC=自宅19:15
≪29日≫----------------------------------
あかんだな駐車場から朝一番のバスに乗る。まだ辺りは薄暗い。
上高地バス停に降り立つ、ザックを背負い歩きだす。
まだ早い時間なので河童橋辺りに観光客は見られない。
ようやく春が訪れたようで横尾へと続く林道沿いにはフキノトウが出てきている。
残雪は徳沢までは殆ど無く、横尾までくると林道脇に融けかかって
面白いオブジェのような形で鎮座していたりする。
吊橋を渡りいよいよ登山道へ。
横尾まで道に雪は無かったがすぐに雪道となった。
トレースはばっちり、グズグズの雪だが歩きやすい。
本谷橋のある辺りは完全に流れは雪渓の下となる。
ここでアイゼンとゴーグルを装着、快適に上がっていく。
横尾谷・涸沢を完全に埋め尽くしている雪渓、

これほど大きなものは生で見るのは初めて、勿論歩くのも初めて。
夏の涸沢への道はあまり歩きやすいというイメージは無かったが
雪渓があるとこうも違うのか思う程なだらかで歩きやすい。
やがて前方にパタパタとなびくモノが見えた。
涸沢ヒュッテの鯉のぼりだ。
“鯉のぼりが見えてからが長い”という事を聞いたことあるがまさにそうで、
歩けど歩けど一向に近付かない。
ヒュッテに着いたら休憩と考えていたが、結局、手前で一本入れた。
涸沢ヒュッテには直接行かず先にテント場へ。
そこには写真でしか見た事のない色とりどりのテントたち。
涸沢には夏に2度程行った事があるが、これほど綺麗には見えなかった。
雪原という白いキャンパスの上に多彩な色(テント)が
散りばめられているからこれほどまでに綺麗に見えるのであろう。

今日はテント泊なので適当な場所を探す。
まだ午前10時半だというのに結構場所が埋まっている。
ヒュッテ寄りの端の方にすでに整地してある場所を見つけそこに張る。

雪は柔らかく、竹ペグを埋めるのも、入口を掘り下げるのも楽にできた。

(入口を掘り下げると楽)
先がプラスチックのシャベルを持ってきたが十分役に立ててホッとした。
まだ昼前、生ビールと涸沢おでんで乾杯するのは早過ぎる気がしたので、
サブザックを背負いヘルメットを被って北穂高岳へ登ることにした。
下山者は結構見えるのだが、この時間から登っていく人はかなり少ない模様。
夕方までになんとか下山したいという思いを胸に涸沢小屋の脇から取り着いた。
この時期はひたすら北穂沢を詰める。
雪質はすでに賞味期限切れ、トレースのないところでは足がズボズボと埋まる。
先行者が付けたと思われるステップ、それも一番新しいやつ、そこに脚を乗せる。
踏み固められたばかりだから全く足が沈みこまない。
ややズルイ気もするが、体力温存して登頂したいのでカッコいいことは言ってられない。
標高2600m辺りとコルへの最後の登りがやたらと急で、休み休み歩を進めた。
コルに乗っかれば北穂北峰頂へはチョイチョイの距離。
グズグズの雪の中悪戦苦闘して立った頂はなんとも言えないくらい嬉しかった。
360度大展望、朝方晴れていたが雲が出て来て遠くまでは見渡せない。
富士山が見えるかと思ったが生憎見えなかった。
ヒューンという聞きなれない音、ふと空を見上げると一機のグライダー。

奥穂~槍の上空を行ったり来たりしている。
大きな翼をもったそれは空中散歩を楽しんでいるようで、何とも羨ましかった。
眺望を一通り楽しんだ後下山に取りかかる。
山頂直下はやはり急で慎重に下りて行く。
シリセードで下りて行こうかと思ったがあまりにも急で
滑落しそうな予感がしたので止めておいた。
ある程度下って緩やかな所でシリセード、
登りは2時間40分掛かったが下りは50分で涸沢に下り立った。
結局ヒュッテで生ビールとおでんセットは諦めて
テントの中で運び上げた缶ビールで乾杯し、夕食後早々にシュラフに入った。
しかし、近くのテントで酒に酔って夜10時まで騒いでいる輩がいたために
なかなか寝付けなかった。
酒はほどほどに、陽が落ちたらお静かに…。
≪30日≫----------------------------------
朝から曇っている、天気予報通りだ。
昼前から稜線に雲が掛かりやすくなるとのことなので、早めに登頂したい。
5時に出発、まずは白出のコルに向けて登っていく。
ふと振り返ると、自分の後ろには長い長い行列ができていた。
自分も前に居る登山者の後ろをついて行くように登っていく。
この日の朝の雪質はクラストしていて、アイゼンの刃がよく利き登りやすい。
しかし、この雪質も多分昼まで持たないであろう、
賞味期限が切れる前に頂いちゃおう。
右手にザイテングラードを見ながらあずき沢を登っていく。
上に行けばいくほど急になっていく斜面。
恐怖感はあまり感じないが、息が上がり、ときどき立ち止まる。
十数歩進み、足を停める、また十数歩進み、足を停める。
僕との差をどんどん開いている先行者も同じことしている。
そうか皆辛いんだ僕だけじゃないんだ。
やっとの思いで白出のコルに立つ。
穂高山荘は営業していて玄関までは雪のスロープになっているが、
建物そのものは雪に埋まっている感じだ。
さあ、ここからが本番、目の前の岩壁、その上へと続く雪壁を見上げる。

すでに取り付いている登山者を眺める、
岩壁は鎖と梯子があるからどうにか行けそうな気はするが、
その上の雪壁は噂通りの急登でヤバそうだ。
どうする?やめるか、いくか…うーんと1分程考えて行くことにした。
岩壁は○や矢印を頼りに登っていく、足元は完全に凍りついている。
鎖や岩をつかんで、アイゼンを氷に慎重に置いて登っていく。
梯子は2本、1本目から2本目に移る所が嫌らしかった。
2本目の梯子を登りきって、岩場をチョイチョイ、そしていよいよ雪壁へ。
今まで体験したこと無い様な雪壁、ステップが付けられているがまだ救い?
アイゼンワーク、ピッケルのピックを差し込みながら慎重に登っていく。
格好は構っていられない、四つん這い状態といってもいいぐらいだ。
雪壁上部まで来ると傾斜が緩くなって、ようやく二本足で立てるようになった。
その後も頂まで、10m程の雪壁が一ヶ所、
飛騨側が完全に切れ落ちていて片足一本分しか足を置くスペースがなく
おまけに凍っていて鎖もないからヒヤヒヤな箇所もあった。
なんとか頂の社が目の前に現れた時は安堵した。
前日登った北穂高岳より84m高い3190m、眺望はそれ程変わらない。

(麓は上高地、左手に霞沢岳、奥に乗鞍、御嶽と続く)

(頂付近から槍ヶ岳望む)
ジャンダルムの方へ目をやると、今まさにそこを歩いてこちらへ向かってくる人がいた。
信じられない!今の僕には無理です。今の僕には。
奥穂高岳に登頂出来た事は嬉しいが、まだ落ち着けない。
登りは我武者羅にでも登ってこれたが、肝心なのは下りの方だ。
聞いた話によると登れたはいいが下れない人が出るとのこと。
最初の難関は10m雪壁、雪壁に向き合いながら下っていく。
たった10m程なのにとても長く感じた。
暫くは緩やかな斜面だったが、いよいよ最後の難所に来てしまった。
白出のコルに建つ穂高山荘の存在が高度感を引き立てる。

あまりに急で、途中から下が全く見えない。
下からパーティが登ってくる。
ここにずーっといたら永遠に下りられない。
エイとさっき10m壁と同じように下った。
雪壁の雪の状態はベストコンディション、
緩くもなく硬くもなくアイゼン・ピッケルの刃がよく利いてくれる。
左足を下ろし蹴り込む、右足を下ろし蹴り込む、
右手のピッケルのピックを打ち込むの繰り返し、
10m壁よりもスリルを感じ、長く感じた時間。
ようやく岩場のところまで下りて、一瞬のホッ。
岩場は凍りついたままで、最後まで気が抜けなかった。
2本目から1本目の梯子へ移る時下から上がってきた人とすれ違う状況になる。
逃げる場所が一瞬分からず焦る。
なんとか逃げる場所を見つけしがみ付きやり過ごす。
最後の梯子を下りて岩場を下って白出のコルの降り立った時本当の安堵がやってきた。
登れるかどうか解らなかった奥穂、
登ったら登ったで無事に下りれるか不安だったが、
無事コルに下り立てて涙が出そうになった。
GWの奥穂をやれるかどうかは1番は安全第一とコンディション、
この日は雪質も良く、曇っていたからか風も穏やかだった。
2番目は勇気かな?行く勇気もあるけど撤退する勇気も。
計画よりも早く進行しているので、
前菜の北穂、メインディッシュの奥穂ときたので、
最後にデザートの涸沢岳を頂いた。

往復35分程、最後に頂から素晴らしい景色を堪能させてもらった。
本日、3度目の白出のコルに降り立ったら目の前の岩壁と雪壁の間あたりに
滑落防止?の細かい網を設置する作業を山岳警備隊が行っていた。

これで滑落者の生存があがるだろうか。
白出のコルから涸沢への下山、雪は賞味期限が切れそうになっていた。
登る時間も重要だなと思った。
涸沢に降り立ちお祝いの生ビールをと思ったが、
今日はテント撤収して下山して車運転して帰らなあかんのでコーヒーで我慢した。
でも、うまかったな、インスタントだったけど。
涸沢から速攻下山で上高地に4時間弱で下山。
帰りの高速はどっぷり渋滞にハマって4時間以上掛かって無事帰宅した。
今回の山行は1泊2日でとてもハードスケジュールだったけど、
とても有意義で僕の登山人生によい経験をもたらしてくれたと思った。
それと、この山行計画に一応許可を出してくれた山の会メンバに感謝、
家族にも感謝かな。

(下山後の御褒美、徳沢園のソフトクリーム。)
山行目的:残雪期の穂高に登ってみたい。
山行日:2012年4月29日(日)~4月30日(祝)
天気:1日目晴れのちくもり 2日目くもり
山行者:単独です。
CT:
1日目 自宅1:35=岐阜各務原IC=高山IC=あかんだなP4:15/4:50=バス=
上高地BT5:25/5:30…横尾7:39…涸沢テント場10:43~11:25…
北穂高岳14:06…涸沢テント場15:14
2日目 涸沢テント場4:57…白出のコル6:38…奥穂高岳7:15…白出のコル8:04…
涸沢岳8:35…白出のコル8:55…涸沢テント場9:36~10:33…
横尾12:16…上高地BT14:26/14:30=バス=あかんだなP15:05/15:25=
高山IC=岐阜各務原IC=自宅19:15
≪29日≫----------------------------------
あかんだな駐車場から朝一番のバスに乗る。まだ辺りは薄暗い。
上高地バス停に降り立つ、ザックを背負い歩きだす。
まだ早い時間なので河童橋辺りに観光客は見られない。
ようやく春が訪れたようで横尾へと続く林道沿いにはフキノトウが出てきている。
残雪は徳沢までは殆ど無く、横尾までくると林道脇に融けかかって
面白いオブジェのような形で鎮座していたりする。
吊橋を渡りいよいよ登山道へ。
横尾まで道に雪は無かったがすぐに雪道となった。
トレースはばっちり、グズグズの雪だが歩きやすい。
本谷橋のある辺りは完全に流れは雪渓の下となる。
ここでアイゼンとゴーグルを装着、快適に上がっていく。
横尾谷・涸沢を完全に埋め尽くしている雪渓、

これほど大きなものは生で見るのは初めて、勿論歩くのも初めて。
夏の涸沢への道はあまり歩きやすいというイメージは無かったが
雪渓があるとこうも違うのか思う程なだらかで歩きやすい。
やがて前方にパタパタとなびくモノが見えた。
涸沢ヒュッテの鯉のぼりだ。
“鯉のぼりが見えてからが長い”という事を聞いたことあるがまさにそうで、
歩けど歩けど一向に近付かない。
ヒュッテに着いたら休憩と考えていたが、結局、手前で一本入れた。
涸沢ヒュッテには直接行かず先にテント場へ。
そこには写真でしか見た事のない色とりどりのテントたち。
涸沢には夏に2度程行った事があるが、これほど綺麗には見えなかった。
雪原という白いキャンパスの上に多彩な色(テント)が
散りばめられているからこれほどまでに綺麗に見えるのであろう。

今日はテント泊なので適当な場所を探す。
まだ午前10時半だというのに結構場所が埋まっている。
ヒュッテ寄りの端の方にすでに整地してある場所を見つけそこに張る。

雪は柔らかく、竹ペグを埋めるのも、入口を掘り下げるのも楽にできた。

(入口を掘り下げると楽)
先がプラスチックのシャベルを持ってきたが十分役に立ててホッとした。
まだ昼前、生ビールと涸沢おでんで乾杯するのは早過ぎる気がしたので、
サブザックを背負いヘルメットを被って北穂高岳へ登ることにした。
下山者は結構見えるのだが、この時間から登っていく人はかなり少ない模様。
夕方までになんとか下山したいという思いを胸に涸沢小屋の脇から取り着いた。
この時期はひたすら北穂沢を詰める。
雪質はすでに賞味期限切れ、トレースのないところでは足がズボズボと埋まる。
先行者が付けたと思われるステップ、それも一番新しいやつ、そこに脚を乗せる。
踏み固められたばかりだから全く足が沈みこまない。
ややズルイ気もするが、体力温存して登頂したいのでカッコいいことは言ってられない。
標高2600m辺りとコルへの最後の登りがやたらと急で、休み休み歩を進めた。
コルに乗っかれば北穂北峰頂へはチョイチョイの距離。
グズグズの雪の中悪戦苦闘して立った頂はなんとも言えないくらい嬉しかった。
360度大展望、朝方晴れていたが雲が出て来て遠くまでは見渡せない。
富士山が見えるかと思ったが生憎見えなかった。
ヒューンという聞きなれない音、ふと空を見上げると一機のグライダー。

奥穂~槍の上空を行ったり来たりしている。
大きな翼をもったそれは空中散歩を楽しんでいるようで、何とも羨ましかった。
眺望を一通り楽しんだ後下山に取りかかる。
山頂直下はやはり急で慎重に下りて行く。
シリセードで下りて行こうかと思ったがあまりにも急で
滑落しそうな予感がしたので止めておいた。
ある程度下って緩やかな所でシリセード、
登りは2時間40分掛かったが下りは50分で涸沢に下り立った。
結局ヒュッテで生ビールとおでんセットは諦めて
テントの中で運び上げた缶ビールで乾杯し、夕食後早々にシュラフに入った。
しかし、近くのテントで酒に酔って夜10時まで騒いでいる輩がいたために
なかなか寝付けなかった。
酒はほどほどに、陽が落ちたらお静かに…。
≪30日≫----------------------------------
朝から曇っている、天気予報通りだ。
昼前から稜線に雲が掛かりやすくなるとのことなので、早めに登頂したい。
5時に出発、まずは白出のコルに向けて登っていく。
ふと振り返ると、自分の後ろには長い長い行列ができていた。
自分も前に居る登山者の後ろをついて行くように登っていく。
この日の朝の雪質はクラストしていて、アイゼンの刃がよく利き登りやすい。
しかし、この雪質も多分昼まで持たないであろう、
賞味期限が切れる前に頂いちゃおう。
右手にザイテングラードを見ながらあずき沢を登っていく。
上に行けばいくほど急になっていく斜面。
恐怖感はあまり感じないが、息が上がり、ときどき立ち止まる。
十数歩進み、足を停める、また十数歩進み、足を停める。
僕との差をどんどん開いている先行者も同じことしている。
そうか皆辛いんだ僕だけじゃないんだ。
やっとの思いで白出のコルに立つ。
穂高山荘は営業していて玄関までは雪のスロープになっているが、
建物そのものは雪に埋まっている感じだ。
さあ、ここからが本番、目の前の岩壁、その上へと続く雪壁を見上げる。

すでに取り付いている登山者を眺める、
岩壁は鎖と梯子があるからどうにか行けそうな気はするが、
その上の雪壁は噂通りの急登でヤバそうだ。
どうする?やめるか、いくか…うーんと1分程考えて行くことにした。
岩壁は○や矢印を頼りに登っていく、足元は完全に凍りついている。
鎖や岩をつかんで、アイゼンを氷に慎重に置いて登っていく。
梯子は2本、1本目から2本目に移る所が嫌らしかった。
2本目の梯子を登りきって、岩場をチョイチョイ、そしていよいよ雪壁へ。
今まで体験したこと無い様な雪壁、ステップが付けられているがまだ救い?
アイゼンワーク、ピッケルのピックを差し込みながら慎重に登っていく。
格好は構っていられない、四つん這い状態といってもいいぐらいだ。
雪壁上部まで来ると傾斜が緩くなって、ようやく二本足で立てるようになった。
その後も頂まで、10m程の雪壁が一ヶ所、
飛騨側が完全に切れ落ちていて片足一本分しか足を置くスペースがなく
おまけに凍っていて鎖もないからヒヤヒヤな箇所もあった。
なんとか頂の社が目の前に現れた時は安堵した。
前日登った北穂高岳より84m高い3190m、眺望はそれ程変わらない。

(麓は上高地、左手に霞沢岳、奥に乗鞍、御嶽と続く)

(頂付近から槍ヶ岳望む)
ジャンダルムの方へ目をやると、今まさにそこを歩いてこちらへ向かってくる人がいた。
信じられない!今の僕には無理です。今の僕には。
奥穂高岳に登頂出来た事は嬉しいが、まだ落ち着けない。
登りは我武者羅にでも登ってこれたが、肝心なのは下りの方だ。
聞いた話によると登れたはいいが下れない人が出るとのこと。
最初の難関は10m雪壁、雪壁に向き合いながら下っていく。
たった10m程なのにとても長く感じた。
暫くは緩やかな斜面だったが、いよいよ最後の難所に来てしまった。
白出のコルに建つ穂高山荘の存在が高度感を引き立てる。

あまりに急で、途中から下が全く見えない。
下からパーティが登ってくる。
ここにずーっといたら永遠に下りられない。
エイとさっき10m壁と同じように下った。
雪壁の雪の状態はベストコンディション、
緩くもなく硬くもなくアイゼン・ピッケルの刃がよく利いてくれる。
左足を下ろし蹴り込む、右足を下ろし蹴り込む、
右手のピッケルのピックを打ち込むの繰り返し、
10m壁よりもスリルを感じ、長く感じた時間。
ようやく岩場のところまで下りて、一瞬のホッ。
岩場は凍りついたままで、最後まで気が抜けなかった。
2本目から1本目の梯子へ移る時下から上がってきた人とすれ違う状況になる。
逃げる場所が一瞬分からず焦る。
なんとか逃げる場所を見つけしがみ付きやり過ごす。
最後の梯子を下りて岩場を下って白出のコルの降り立った時本当の安堵がやってきた。
登れるかどうか解らなかった奥穂、
登ったら登ったで無事に下りれるか不安だったが、
無事コルに下り立てて涙が出そうになった。
GWの奥穂をやれるかどうかは1番は安全第一とコンディション、
この日は雪質も良く、曇っていたからか風も穏やかだった。
2番目は勇気かな?行く勇気もあるけど撤退する勇気も。
計画よりも早く進行しているので、
前菜の北穂、メインディッシュの奥穂ときたので、
最後にデザートの涸沢岳を頂いた。

往復35分程、最後に頂から素晴らしい景色を堪能させてもらった。
本日、3度目の白出のコルに降り立ったら目の前の岩壁と雪壁の間あたりに
滑落防止?の細かい網を設置する作業を山岳警備隊が行っていた。

これで滑落者の生存があがるだろうか。
白出のコルから涸沢への下山、雪は賞味期限が切れそうになっていた。
登る時間も重要だなと思った。
涸沢に降り立ちお祝いの生ビールをと思ったが、
今日はテント撤収して下山して車運転して帰らなあかんのでコーヒーで我慢した。
でも、うまかったな、インスタントだったけど。
涸沢から速攻下山で上高地に4時間弱で下山。
帰りの高速はどっぷり渋滞にハマって4時間以上掛かって無事帰宅した。
今回の山行は1泊2日でとてもハードスケジュールだったけど、
とても有意義で僕の登山人生によい経験をもたらしてくれたと思った。
それと、この山行計画に一応許可を出してくれた山の会メンバに感謝、
家族にも感謝かな。

(下山後の御褒美、徳沢園のソフトクリーム。)