先程、ヤフージャパンより配信されている記事を見ている中で、
『 知らないのは日本人だけなのでは、実は日本の評価は「世界一」、
世界のマネーが日本に向かってくる!? 』、
と題された見出しを見たりした。
「日本はダメだ」というムードが、国内で蔓延していた。
確かにバブル崩壊の爪跡は大きかった。
また、デフレの進行は、さらに日本を苦しめた。
だが、バブル崩壊からすでに34年が経過している。
日本人、日本企業、日本政府が、その間何もしなかったわけではない。
「時間(の経過)」という追い風も受けながら、
「バブル処理」は、とっくに完了したといえよう。
少なくとも4年前の、2020年4月14日公開
「コロナ危機で、じつは日本が『世界で一人勝ち』する時代がきそうなワケ」の頃には、
「日本が成長軌道に乗った」と考えている。
むしろ、世界がリーマンショックというバブルの崩壊を「新たなバブル」で、
先延ばしにしている(実際にはリーマンショックは、終わっていない)中で、
(1990年頃までの)「バブル処理」がとっくに終わっている日本は、「筋肉質」である。
好機があれば、いつでもその筋肉を使って「跳躍」することができるのだ。

昨年6月13日公開「パンデミックが終わった! 30年ぶりに日本の黄金時代がやってくる!?」と述べたが、
これからは、「苦難の時代にしっかりと力を貯めていた日本が『羽ばたく』」時代である。
ところが、日本国内では、過去約35年間でしみついた「ネガティブ思考」から抜け出せず、
いまだに日本の将来に、悲観的な人々が多い。
確かに、2022年11月11日公開
「健康保険と『国営ねずみ講』の年金を『第2税金化』で維持に必死の日本政府」、
同1月15日公開「親方日の丸の巨大産業・医療-年金だけでなく健康保険も破綻はある」の年金・健康保険問題や、
2021年10月25日公開「日本は外国に借金していないからデフォルトしないというのは本当か?」の財政問題など
「公的部門」における課題は「金利上昇」とともにさらに顕在化するであろう。
だが、2021年5月9日公開「日本の『お家芸』製造業、じつはここへきて『圧倒的な世界1位』になっていた…!」で述べた
「製造業」を牽引役とした「民間部門」は強力な力を持っており、
公的部門での「破綻」があった場合でも、「苦難を乗り越えながら」力強く成長すると考える。
☆知らないのは日本人だけ?
また、2021年2月28日公開「1400年の歴史、世界最古の会社が日本に存在している…!」で述べた、
「危機に強い永続性」が「大原浩の逆説チャンネル
<第1回・特別版>大乱の八つのテーマと対処法」で述べた「世界大乱」の時代には大いなる武器になる。
その「大乱」の中での「安定性」、「永続性」に先に気が付いたのは、海外の人々かもしれない。
日本政府観光局 昨年10月4日
「米旅行雑誌の『世界で最も魅力的な国ランキング』で日本が第1位に選出!」や
Ipsos 昨年11月14日「世界60カ国中 日本が国家ブランドランキング1位に初選出」と伝えられる。
さらには、昨年8月31日公開「中国は崩壊か? それとも『失われる50年』か?
いずれにせよ日本のバブル崩壊以上の惨劇が待っている」の共産主義中国だけではなく、
3月18日公開「今、目の前にある1989年のデジャヴ~上り調子の市場で損をする人々の生態とは」で述べたように
「日本のバブル崩壊前夜」に酷似した状況の米国を始めとする国々からも、
(自国の危うさを感じている人々を中心に)日本に資金が流れている。
日本の評価は、世界的に高まっているのだ。
知らないのは日本人だけではないだろうか?

☆世界の人々は「どこに逃げる?」
数10年前、私が銀行のトレーダーであった時代、
経済や市場が混乱した時に「マネーが逃げ込む先」というのは、
米国(ドル)と相場が決まっていた。
この現象を「質への逃避」(フライ・トゥ・クオリティ)と呼んでいたのだ。
だが、2022年10月4日公開「ドルはいつまで基軸通貨でいられるか、実は日本円は意外と強い」、
同6月18日公開「国力下り坂の米国が没落して『世界戦国時代』がやってくるのか」という状況の現在、
「リスクに敏感なマネー」が「米国(ドル)」に逃げ込むであろうか?
今のところ米国は、「腐っても鯛」であるから、一定の影響力は持つだろうが、
かつてのように避難先として米国(ドル)が圧倒的であった時代とは、様変わりしている。
それでは、世界のマネーは、どこに向かうのだろうか?
冒頭で述べたように、「大乱」の中でも「安定性」や「継続性」を失わない日本が、
「質への逃避」先として、ふさわしいのは言うまでもない。
さらに、借金漬けでバブルが限界に達しようとしている米国企業と違って、
日本の上場企業は「資金効率が悪い」と批判されるほどの厚い内部留保を持っている。
すでに眼鼻の利く海外投資家は、日本に向かい始めているのだ。
日本の(個人)投資家の態度も変わってきているように思える。
☆「ジャパン・アズ・ナンバーワン」
バブル期の「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という言葉は、
日本人を舞い上がらせ「悪い結果」をもたらした。
しかし、日本が「明るい未来」へと歩みを進めているのにも関わらず、
「暗い過去」をいまだに引きずっている日本人には、
むしろ「ジャパン・アズ・ナンバーワン」という言葉で勇気づけたい。
今回の「ジャパン・アズ・ナンバーワン」は、
GDPで米国を追い抜くなどという「量の拡大」ではなく、「質の向上」である。
「日本品質」がその象徴であり、「日本品質」は「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と誇っても良いだろう。
また、「治安の良さ」、「社会の安定性」も「ジャパン・アズ・ナンバーワン」である。
これまでは、この「ジャパン・アズ・ナンバーワン」が、経済の発展に結び付きにくかったが、
デフレが終わり、インフレが急速に進行する中で、大きな武器になる。
日本の長所は、前記「1400年の歴史、世界最古の会社が日本に存在している…!」で述べた
金剛組を筆頭とした老舗企業だ。
そして4月9日公開「日経平均が30年で50万円になってもおかしくない、
これからの『日本の黄金時代』は、老舗企業が繫栄する」で述べたように、
インフレ期には「老舗企業」が大きな武器になる。
老舗企業の多さでも「ジャパン・アズ・ナンバーワン」なのだ。

☆「日本以外全部沈没」
「ジャパン・アズ・ナンバーワン」は、日本独自の成長と
同時に「日本以外の国々の衰退」によっても後押しされる。
2年以上前の、2022年1月8日公開
「2022年、世界の危機を展望すると、日本以外全部沈没なのか?」で述べた
状況がますます明確になっている。
例えば、前記「中国は崩壊か? それとも『失われる50年』か?
いずれにせよ日本のバブル崩壊以上の惨劇が待っている」の惨状については
よく知られるようになってきたので、改めて説明する必要は無いだろう。
また、ノルドストリーム爆破や「経済制裁」による(安価な)エネルギーの途絶、
中国経済不調が打撃となっている上に、
昨年9月11日公開「ドイツを見よ! EV化の惨めな結末~フォルクスワーゲン減産、結局、脱炭素は『三流国』への道?」
なのがドイツである。
これまで欧州経済の牽引車とされてきた同国の状況が示すように、
EUも極めて厳しい状況に追い込まれている。
米国については、これまで述べたように、いつバブルが崩壊するのかわからない状況だ。
さらには、これから予想される世界的インフレ、
高金利の打撃を最も強く受けるのが、社会・経済基盤がまだ未熟な新興国である。
このように考えると、「日本の素晴らしさ」がよくわかる。
バブル期に「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と舞い上がったことは、
大いに反省すべきことであるが、羹に懲りて膾を吹くことも無意味だ。
世界がバブルに浮かれる中で、
日本だけが「失われた30年」の長いトンネルを抜けてきたことは、
これからの「追い風」になる。
今のような沈滞ムードの中でこそ、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と主張したい。
大原 浩(国際投資アナリスト)・・ 》
注)記事の原文に、あえて改行など多くした。