(略)本稿では、40年近くにわたり高齢者向け介護事業のコンサルタントをつとめる、
株式会社タムラプランニング&オペレーティング代表取締役の田村明孝氏に話を伺った。
(取材:甚野博則、構成:ダイヤモンド社書籍編集局)
● 介護は“突然”やってくる
――拙著『ルポ 超高級老人ホーム』では、元気なうちから
いくつもの高級老人ホームを吟味する高齢者たちを数多く取材しました。
一方、突然家族が倒れ、要介護になった場合、いきなり老人ホームを探すのも大変です。
具体的に今すぐ準備すべきことなどあるのでしょうか?
田村明孝:
介護は突然やってきます。
たとえば、親が脳梗塞で倒れて救急搬送され、手術を受けたあと、
病院から「あと1週間で退院してください」といわれるようなケース。
さて、どうしましょうとなるわけです。
こうした状況で、事前に準備しておくことができれば理想ですが、
突然親が倒れ、多くの人は準備不足のまま、あたふたしてしまうのが現実です。
「介護保険について勉強しましょう」といわれても、
事前に知識を身につけている人は、ほとんどいません。
結局、ゼロどころかマイナスからのスタートになるケースがほとんどです。
――事前準備どころかマイナスからスタートして、
いざというときに、家族や本人は、まずどのように動けばいいのでしょうか?
田村明孝:
多くの病院には、「地域連携室」や退院サポートを行う部署があります。
そこでは介護施設の情報を持っていたり、ケアマネジャーと繋いでくれる役割があります。
たとえば、脳梗塞で半身麻痺が残った場合、自宅に戻るのが、難しいケースが多い。
その場合は「地域包括ケア病棟」と呼ばれる中間施設に移り、
いわば二次入院のような形で、リハビリを続ける選択肢もあります。
――「地域包括ケア病棟」は、リハビリ施設のようなもの?
田村明孝:
そうです。基本的には、リハビリが目的の施設です。
脳梗塞などの場合、短期的にリハビリ病院を利用するケースが多いですが、
高齢者の場合、自宅に戻るのが、難しいこともあります。
そうした際に、家族が次の施設を探して決断する必要があります。
――病院側は、移る場所が決まるまで、入院させておいてくれるのでしょうか?
田村明孝:
緊急の場合、最長でも3ヵ月程度です。
特に大学病院では、1ヵ月で退院を求められることが多い。
病床数の確保や医療報酬の制約があるため、病院側も長く患者を留めておくことは難しいのです。
――病院にある「地域連携室」の方は、いわゆるソーシャルワーカーのような役割?
田村明孝:
そうですね。ただし、有料老人ホームの内部事情や良し悪しまでを
詳しく把握しているわけではありません。
行政が用意した特定施設のリストを紹介する程度で、
具体的なアドバイスを期待するのは難しいです。
● “事前見学”で確認すべきこと
――結局、自分で情報収集するしかない?
田村明孝:
その通りです。
もし時間があれば、地域連携室に1週間だけ時間をもらうなどして、
家族だけでも見学を申し込み、必ず事前に見学してください。
施設の運営方針やサービス内容が、自分に合うかどうかは見学しなければわかりません。
施設長とも話をして、「こういう状態の親の場合、どんな対応をしてくれますか」
と具体的に聞くことが大切です。
最低でも数カ所を比較検討するのが望ましいですね。
――具体的にどういったことを確認すれば良いのでしょうか?
田村明孝:
たとえば、食事内容や介護サービスの範囲です。
特定施設であれば、介護職員が常駐していますが、
住宅型の場合は「基本的にサービスは、外部契約で」となることが多い。
訪問介護や訪問看護、デイサービスなどを個別に契約する必要があり、負担が大きいです。
ですから、介護付き有料老人ホームや特養など、
包括的なケアが受けられる施設を選ぶほうが安心です。
● “在宅介護”の限界は
――在宅介護を希望する場合の準備は?
田村明孝:
在宅介護の場合も、ケアマネジャーを見つけることが、第一歩です。
入院している病院が地域内であれば、病院が、ケアマネの情報を持っています。
地域包括ケアサービスを利用して、
自治体が紹介するケアマネジャーを通じて、段取りを組むのも有効です。
どのような介護を受けたいのかという希望は、
どんどん言ったほうがいいとは思いますが、
意に沿ったようなサービスを見つけるのは、現実的に難しいでしょうね。
自宅へ戻った場合は、地域密着型サービスというのもあります。
定期巡回で自宅にきてくれて、デイサービスもセットで利用できて、
泊まりも利用できるサービスもあります。
小規模多機能型居宅介護や看護小規模多機能型居宅介護(看多機)みたいな、
必要なところだけ自宅にきて、やってもらうっていうサービスもあります。
そういうサービスの受け方ができれば、
要介護度2,3など重くなっても、なんとかやりくりできるケースはあると思います。
――夜間対応が必要な場合は?
田村明孝:
夜間対応は、在宅介護の最大の課題です。
家族が同居していれば、ある程度対応可能ですが、一人暮らしでは難しい。
24時間対応の定期巡回サービスを提供する拠点は、
全国で1300カ所程度しかなく、ほぼ都市部に限られています。
要介護2でも、夜間対応がなければ、自宅介護は厳しい。
要介護3以上では、ほぼ不可能です。
――在宅介護だと、介護保険でカバーできる範囲には限界がある?
田村明孝:
そうです。要介護3以上になると、介護保険の範囲を超えることが多く、
「特別養護老人ホーム」や「介護付き有料老人ホーム」を選ぶほうが、現実的です。
以前、月額100万円以上を自己負担して、
住宅型有料老人ホームに住む要介護4の方を見たことがあります。
本人がその場所に強いこだわりを持っていましたが、負担は非常に大きい。
● “認知症”になったらどうする?
――介護保険サービスを利用できる施設について、改めて教えてください。
田村明孝:
「特別養護老人ホーム(特養)」、「老人保健施設(老健)」、
「介護療養型医療施設(介護医療院)」の3施設です。
特別養護老人ホーム(特養)は、生活の延長を目的とし、医療ケアは限定的。
嘱託医が1名ほどいることが多いですが、緊急時対応は難しいです。
療養を目的としている施設です。
「老人保健施設(老健)」は、リハビリを通して、自宅復帰を目指します。
基本的に90日間から3ヵ月間を目安にして、自宅へ戻るための施設で、
医療法人が経営しています。
リハビリを医療がバックアップしてやっていきます。
「介護療養型医療施設(介護医療院)」は、病気や慢性疾患がある人向けで、
医療ケアに対応できます。
元々は療養病床、老人病院のような建付けのものが医療院に変わったものです。
復帰目的というよりは、慢性疾患がある人がそこへ入るイメージです。
――グループホームについては?
田村明孝:
グループホームは、認知症の診断を受けた人しか、入れない認知症専用施設です。
1ユニット9人として、最大3ユニット、入居者数が27人と小規模です。
このため、認知症の人が、そこへ行っても安心して生活できるというような、
そういう建付けでできました。
ただし、認知症ケアの教育プログラムをしっかりと整備できていない
ホームも多いのが現状です。
――しっかりやってない?
田村明孝:
認知症の教育プログラムを持っていない、
要は職員に認知症とはなんたるかを、教育できていない施設もあります。
教育ができなければ、研修もできない。
研修ができなければ、スタッフが認知症対応の仕方を理解できないので、
不都合が生じることがあります。
最悪の場合、夜間1人でケアしているスタッフが、虐待に走るような事態も起きました。
私はこれまでスウェーデンやデンマークで、
30年以上認知症ケアについて学んできました。
認知症のケアプログラムをどう整えるか、
認知症療法の種類をどのように持つかが非常に重要です。
施設選びでは、こうした点についても確認するべきです。
田村明孝(たむら・あきたか)
株式会社タムラプランニング&オペレーティング代表取締役。
「高齢者住宅支援事業者協議会」事務局長 1974年に大学卒業後、
ケア付き高齢者マンション開発会社に入社。
神奈川県横浜市などにケア付き高齢者マンションの開設を手掛ける。
1987年に株式会社タムラ企画(現タムラプランニング&オペレーティング)を設立、
代表取締役に就任。
高齢者住宅の事業計画立案及び実施・運営・入居者募集等、
一連の実務に精通したコンサルタントとして活躍。
市町村の介護保険事業計画などの福祉計画策定をはじめ、
老人福祉施設や有料老人ホームの開設コンサルや経営改善コンサルに力を入れ実践している。
テレビ、新聞、雑誌など各種メディアへの出演実績多数。・・》
注)記事の原文に、あえて改行など多くした。
今回、40年近くにわたり高齢者向け介護事業のコンサルタントをつとめる田村明孝さんより、
《・・突然に要介護状態に、「事前準備ゼロ」でも、今のうちに確認すべきこと・・》、
80歳の私は、多岐に及び、具体的に解説して下さり、多々教示されたりした・・。
たとえば《・・多くの病院には、「地域連携室」や退院サポートを行う部署があります。
そこでは介護施設の情報を持っていたり、ケアマネジャーと繋いでくれる役割があります。
たとえば、脳梗塞で半身麻痺が残った場合、自宅に戻るのが、難しいケースが多い。
その場合は「地域包括ケア病棟」と呼ばれる中間施設に移り、
いわば二次入院のような形で、リハビリを続ける選択肢もあります。 ・・》
こうような「地域包括ケア病棟」と呼ばれる中間施設、
私は無知であり、こうしたことを含めて、基本的なことを私は学んだりした。
或いは、“在宅介護”の限界は・・、“認知症”になったらどうする?、
私は溜息を重ねながら、具体的に多々教示させられたりした。
果たして私たち夫婦は、晩秋期どのような状況になるか、判らないが、
今回学んだことを根底に於いて、
明るく前向きに過ごそう、と思い重ねたりした・・。