今年の参議院選挙は、日本の未来にとって大切な選挙となりそうだ。というのも、今度の選挙後は地方選挙のみで、解散がなければ国政選挙が3年ない状態になるからだ。前回の衆議院選挙と今度の参議院選挙で示した方向が、この大きく変化する世界情勢の荒波の中で、今後の日本が進む道を決めていくのだ。
参議院選挙で、もし憲法改正に立つ政党が多数を握れば、憲法改正へ大きく舵が切られていきそうだ。専守防衛から軍拡や先制攻撃ができる日本へ。さあ、あなたはどんな道が日本に相応しいと思いますか?
そんな中で迎えた5月3日憲法記念日に、国民に影響を与えると思われる新聞を比べてみよう。
(ウクライナに侵攻したロシアのプーチンが、どうしてロシア国内では支持を集め続けているの?)と、不思議に思う人も多いだろうが、(ロシア国内ではまったく違う報道がされていて、政権に反する主張をすると逮捕されたり罰せられている。プーチンに都合のよい情報のみが流されているからだ)と、私たちは外側にいるので分かる。
でも、それなら日本の報道はどうなのか? 自分の読んでいる新聞は、他の新聞とどう同じでどう違うのだろう?疑問をもって、このチャンスに比べてみよう。

見出しだけみても、ずいぶん違うことが分かる。憲法記念日にあたり、日本国憲法について各新聞でどんな思いが語られているか、順に見ていってみよう。
1.東京新聞は、憲法記念日に元首相安倍氏の疑惑問題を大きく扱われていて、買った私もびっくりした。上の写真では切れて見えないが、写真の下には、「きょう憲法記念日」として、関連記事の見出しがでていた。憲法について力を入れて紙面を作っていると感じた。

日本においての「知る権利」はちゃんと守られているのか?「桜」夕食会を巡る刑事裁判確定記録を申請したのに、閲覧まで1年かかった上に、元首相の供述調書は開示されなかった。裁判記録は原則公開なのに・・・。米国では裁判記録が証拠まで自由にネット閲覧できることも書かれていた。 さらに、7面では、今回の開示で、<公設秘書が違法性を知りながら夕食会に会費で不足の分は補填をしたこと。補填は2016年以降は、議員会館事務所でもともと首相夫妻の個人的夕食代などの支払い目的で預かっていた現金から支出したこと。2016年は100万円を超える赤字が出て、2017年以降も夕食会には不足分が出たが、その請求書や領収書はシュレッダーで廃棄したこと>が明らかにされていた。そして、これは、首相在任時に安倍元首相は118回虚偽答弁をしたことになる。これを、安倍氏が本当に知らなかったのか・・・と大きな見出しで書いて、「安倍氏への責任追求に世論が高まるか、この国の民主主義が問われている」と告発人たちの見解として、問題の重要さを読者に呼びかけている。
社説では、歴代政権が不可能と言ってきた集団的自衛権行使を「解釈改憲」なる手段で可能に変えてきた長期政権が憲法の平和主義を壊してきたこと。平和主義は非現実的という声もあるが、平和を唱え続けないと平和は守れず、(もっともらしい脅威や危機を煽り「軍事」のかけ声が聞こえたら危険信号)というのが歴史の教えとし、血塗られた20世紀の戦争で死んだ犠牲者の声にしっかりと耳を傾けることが訴えられていた。
2.「朝日新聞」上の写真でもちょっと見えているように、「改憲議論の陰 遠のく生存権」として、(食料配布に100メートルの列 コロナ禍の2年で倍)として長い列を作った人々の写真を掲載。自社の世論調査で改憲の必要と答えた人が56%に上昇したこと。ウクライナ侵攻で戦争への不安を以前より感じた人が80%におよんだとの報告がなされ、調査の質問と回答分析が6,7面で、さらに詳細に報告。
また、多くの紙面を割いて、若い学者から戦争体験者まで、さまざまな世代の意見が多角的に掲載されていた。
天声人語では「いくさをしかけることは、結局、自分の国を滅ぼすような羽目になる」という浅井清さんの残した言葉が伝えられた。
3.「毎日新聞」 こちらも、自社世論調査を行った結果を解説、「現政権下」という条件を加えた改憲には賛成が44%と条件のつかない賛成の48%とは別にして掲載。3面で、自民党がロシアのウクライナ侵攻で、改憲に前のめりになっているのをウクライナへの装備支援と共に懸念を示した。また、毎日では、憲法記念日の各党談話として、れいわ新撰組、社民党、NHK党のコメントもいれていたのが、少数党にも配慮されていてよいと思った。*実は、少数党の記述があったのは、毎日と産経だったが、少数の声への配慮は民主主義には大切だと評価した。
また、社説では、ウクライナ侵攻を憲法改正に結び付けることに、国民的議論を欠いたまま軍拡へ走る風潮への懸念を述べ、E.H.カーの(第一次大戦後の国際連盟の機能不全した「危機の20年」について)「ユートピアのあらゆる要素を厳しく排除したリアリティーへの急降下」の記述を振り返る。そして、日本に求められるのは、現実を直視しつつ、「国際平和」という理想に少しでも近づける普段の営みだろうと、防衛力だけでない、外交、経済、文化、人的交流のソフトパワーの強化の大切さを説く。
4.「日本経済新聞」は、2面の隅に緊急事態条項が参院選の争点になると触れている他は、10面には、「私が考える憲法」として4人の様々な分野からの意見が、11面には緊急事態や平時のサイバー攻撃への対応が遅れている話が大きくでていたものの、憲法改正よりの見解に思え、憲法記念日としての扱いは他紙比べて力が入っていないと感じた。
5.「読売新聞」こちらも、自社世論調査を行った結果を解説。ただ、改憲賛成60%、戦力の不保持を定めた9条2項を改正する必要があると50%で、ないを上回ったことなどにふれ、詳細分析を8面で行い、衆院6党の意見を9面に掲載。
3面には、「与党勝利なら本格議論へ」として、自民党の前のめりの改憲日程を掲載。社説でも、「いまやロシアのウクライナ侵攻で戦争放棄の前提が崩れ、『諸国民』を信頼するだけでは平和を維持できないことは明白」と言い切り、現実の脅威から目を背けず、改憲議論を進めることの大切さを説いている。
6.「産経新聞」1面では「自衛隊『違憲論争に終止符』」首相、改憲を参院選公約と題し、首相がウクライナ侵攻を受けて憲法改正を進めようとしていることを明記。「主張」では、読売新聞に強く、<ウクライナ侵攻ではっきりした。いまや現憲法の前文は現実に対処できない「欠陥憲法」といい、「前文は空論に過ぎない」と言い切る。そして、中国や北朝鮮、ロシアが日本の9条を尊重するはずもない。これまでも、日本を守ってきたのは米軍の抑止力。「戦力の不保持」の9条2項は削除し、憲法改正原案の策定への着手を岸田首相に期待する>といった内容となっていた。4面は、岸田首相とのインタビュー記事。「緊急事態条項 有事の備えが重要」などとして、自衛隊の明記、緊急事態条項の重要性が述べられている。かろうじて、5面に、野党の意見が「各党談話の要旨」として、左隅に書かれていたが、ここは毎日新聞と同じに、新選組新選組、社民党、NHK党まで書いてあったのはよかった。だが、そのコーナー以外に野党の意見は見当たらなかった。
さて、いかがだっただろう。こう読み比べてみると、新聞によって論調が違うことがよく分かる。あなたの購読している新聞は、あなたの平和への思いに沿った新聞だろうか。「あれっ?」と思った方は、今の新聞を購読し続けていいのかどうか、図書館などで他の新聞と少し読み比べて検討してみるといい。その他の皆様も、こんな風に自由に何紙も見られるのは、日本がまだそれでも自由があるからだ。ロシアのように、異論が排除され報道が統制される時代に入る前に、読み比べをしてみよう。
私自身は、6紙を読んで、読売新聞と産経新聞は怖いなぁと思った。「過去に学び、過ちを繰り返さない」という立場で考えれば、国際連盟のユートピアが世界恐慌でもろくも崩れ去り、第二次世界大戦では、敗北した国のみならず、戦勝国であっても多くの戦争犠牲者をだし悲惨な20年を体験した。だからこそ世界は、2度と戦争はしたくないと決意を固めて「国際連合」を作ったのではないか。そして、冷戦を経ながらも軍縮も進めてきた。
日本は平和憲法の下で77年の平和をどうにか維持し続けた。唯一の被爆国として、また、東日本大震災では福島原発事故も経験し、日本人は「核」の怖さは身にしみて分かっているはずだ。ウクライナ侵攻から、<平和憲法は役に立たない。軍備を拡張して他国に対峙しないと>と結論づけるのは、過去の暗黒の戦争の時代をもう一度繰り返す考え方だと思う。まして、第二次世界大戦以上の兵器、今や自国の兵士が傷つかないドローンとか無人兵器などがある時代。それを拡大していく方向で自衛しようとすることは、相手に脅威を与えて、より相手が軍備を強化する結果になるだけだ。そして、その先にあるのは、「人を殺すという目的をもった兵器が使われても地獄、使われたら無駄金だ!」
兵器ではなく、そのお金を国連のSDGsが持続可能な社会の実現のために使われれば、世界の人々を豊かに共存させられる道へと人類が踏み出せるだろうに。兵器へのお金は、軍需産業を潤すだけで、破壊と殺戮と悲劇、憎しみ以外の何も産み出さない。世界は豊かになるのではなく、互いに傷つき疲弊するだけだ。
SDGsは、世界が持続可能であることができるように共存を目指す社会だ。軍拡をいう政権や政党に、SDGsをいう資格はない。軍拡は、「自国」のみの利益に立った狭い考え方だ。口では、中国や北朝鮮の軍拡やミサイル実験を非難しておきながら、自分たちが同じ事をして、相手を煽る!? 相手に言った非難が、こんどはこちらにはね返ってきて、虚しい軍拡競争が始まりだ。今度は先の戦争のような被害では済まない。核兵器を持ち出したら、世界の破滅が待っているのだ。
核兵器禁止条約にも署名せずに平和を口にし、軍拡を進めるために憲法まで改正しようとしている人達。彼らに次の選挙で多数を与えれば、どんな未来が待っているのか。第二次世界大戦で、ロシアと同じようにいくさをしかけた日本は、多くの犠牲者をだし、最後には核兵器を2度も落とされ敗戦した。結局、自分の国を滅ぼす羽目に陥った。そんな悲劇をまた繰り返したいのか?
私のブログで、よく読んでもらっているものに「現政権を歴代法務大臣一覧から振り返る」というのがある。法律を守るべき法務大臣すらも、これだけ法律を犯している政権に、あなたは日本の将来を預け続けるのか、次の参議院選挙では、是非しっかり考えてほしいものだ。
ロシアのウクライナ侵攻をどう解決できるか。これが非常に重要だ。ここで、ロシアにウクライナの地を自由にさせる訳にはいかない。そして、ウクライナの反撃も私には非常に胸が痛む。ウクライナが軍事強化して勝つこと。それを目指すのは違うと思えるのだ。
大事なのは、ここで国連がしっかり機能させ、世界がひとつになって、武力以外の手段で、一刻も早くロシアを屈服させ野望を捨てさせること。今 目指すべきなのは、<他国を侵略することが、どれだけ馬鹿げたことで、自国に大きな不利益をもたらすかを、世界がロシアに思い知らせられること>だ。
兵器以外の手段でそれが実現できれば、それこそが未来に繋がる現実的な人として誇れる平和への道だろう。