さて、新年度の三役選出の段だ。
私は11年町内会長を務めたが、副会長にも10年務めていただいた。私が構想を立て、彼がそれを具現化する。現在行っている町内会の活動を、ほとんど2人で引っ張ってきた。
私の後任を副会長が務められるならば何の問題もないのだが、彼はサラリーマンだ。退職までまだ間がある。彼も、10年を区切りに27年度で辞める旨表明していた。
もう1人、会計は2年務めていただいて後任が決まっていた。
私と副会長がそれぞれ辞めるべき理由を述べた後、何人かの方が意見を述べられた。結局、参加者の総意は私と副会長にそのまま続けてもらいたいというものだった。
百世帯を超える町内会だ、適任者が全くいない訳ではない。ただし、やる気がない人に押し付けられようもない。町内会長役を引き受けるにはそれ相応の覚悟がいる。それがなかなか難しいと承知しているから11年も続けてきた。
だが、私がそういう気持ちでいる限り、みなさんは本気になって次のリーダーを探そうとしない。私が不退転の決意をすることで、みなさんに本気になって町内会の在り方を考えていただきたかった。それが、今回、強い決意で総会に臨んだ理由だった。
しかし、80歳を超えるお隣の平島さんのおばあちゃんが、切々として留まるようメモしたものを読み上げられるお姿を拝見すると、私の決心も揺らぎ、崩れた。副会長も同様だった。
ただ、みなさんの意識に変化が起こっていた。
私が心機一転、町内会長を務めさせていただく旨お伝えすると共に、みなさんには町内会のことを「自分ごと」として考えていただきたい旨お話すると、異口同音に協力して町内会の活動に当たろうという声が上がったのだった。