
ほどなく4月、我が家の裏庭の桜の花が満開を迎えようとしている。

午前中、町内会公民館運営費等の各種補助金を教育委員会まで受け取りに出かけたが、車窓から町のあちらこちら、雲ひとつない青空に淡いピンクの桜の花がよく映っているのが見えた。
果樹畑には濃いピンクの桃の花が咲き、前庭には燃えるような真っ赤なツツジの花も咲き出している。

高校入試が済み、国公立の後期試験の発表も終わった。年度末の行事や、煩雑【はんざつ】な仕事もすべて終わった。
やがて再び、新しい年度が始まり、歩を進めなければならない。だからこそ、今しばらくは、このなんともいえない、いい心持を存分に感じていよう。
短い春休みに入っているくるみさんが、居間のコタツで寝転び文庫本を読んでいる。
愛する娘がのんびりくつろいでいる。ただそれだけで嬉しい。
「何、読んでるの?」私が尋ねる。
「村上春樹」と、くるみさん。
「ノルウェイの森、読んだ?」
「いやぁ。持ってると?」
「あるよ。上・下巻」
「読みたかったとさぁ~!」
書棚から取り出してきた「ノルウェイの森」をパラパラと繰ると、「平成元年1月15日 絵理子と共に」と記してあった。
今年が平成21年だから絵理子さんが6歳の時だ。一緒に書店に立ち寄り、求めたのだろう。
のんびり、春の昼下がり、ゆたかな時間が流れている。