のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

ハッピーバースデー/青木和雄

2008年02月01日 23時19分44秒 | 読書歴
11.ハッピーバースデー/青木和雄
■ストーリ
 「あすかなんて、本当に生まなきゃよかった。」
 自分の思い通りに成長した長男に比べ、できの悪い娘あすかに
 容赦ない言葉を浴びせる母、静代。実の母親に愛してもらえず、
 誕生日さえ忘れられてしまった11歳の少女・あすかは、その日を境に
 声を失ってしまう。しかし、優しい祖父母の元で自然の営みに触れ、
 「いのち」の意味を学び、生まれかわったあすか。彼女の行動が
 学校や家族を変えていく。

■感想 ☆☆☆
 スクールカウンセラーの方が児童を取り巻く環境や児童が抱えている
 問題と現状を知ってほしいと願い、自分達の経験を元に書かれた小説。
 元は児童書だ。
 児童虐待にいじめ、障害者学級に学級崩壊、モンスターペアレンツに
 教師自体の質の低下、と様々な問題が取り上げられている。これらの
 問題を一冊におさめているため、それぞれの問題があまりにも簡単に
 解決され過ぎているような印象は否めない。
 けれども、この物語は「リアルに書くこと」を目的としているわけでは
 なく、「現代の教育現場が抱えている問題の多さと根深さを伝えること」
 を目的としているのだと思う。
 教育現場で起きている問題の種類、多くの問題と向き合っていかなければ
 ならない教師の大変さ、何より問題と向き合わなければならないはずの
 教師や親自体が、問題をきちんと認識できないでいる現状。
 これらを子ども達へ、そして親たちに伝えようとしているのが
 この作品なのだと思う。

 この作品を読んで、改めて親になることの責任を実感した。
 いや、違う。責任を感じなければいけないのは、親だけではないのだと
 強く思った。こういった教育現場になっているのは親や教師だけの
 問題ではない。教育現場には今の世の中が確実に反映される。だから
 社会の一員として、これからを生きていく人間として、もっと多くの
 人たちが教育現場の現状を知るべきなのだと思うし、問題の解決に
 ついて考えなければいけないのだと思った。

 また、読んでいて、小学校にあった特殊学級を思い出した。
 校舎内にあったのに、ほとんど交流がなく、その頃から
 自分のクラス以外に出かけることなどない出不精だった私は
 教室に入ったこともなかった。勿論、特定の生徒以外とは、
 話したこともなかった。あの頃の私は、あのクラスがなぜあるのかも
 考えたことがなかった。すぐ傍にあったのに、触れることがなかった
 クラスの存在を今の私は悔しく思う。あのとき、もっともっと
 あのクラスに興味を持ていれば。もっと積極的にいろんな人と
 関わっておけば。好奇心や積極的な関心は人生に広がりをもたらす。
 そんなことを今更ながらに感じさせられた本だった。

ひまわり探偵局/濱岡稔

2008年02月01日 22時40分59秒 | 読書歴
10.ひまわり探偵局/濱岡稔
■ストーリ
 なんか丸い名探偵と、寝ぐせ頭のワトスン。見つけるのは心の鍵、
 届けるのは人の想い。快刀乱麻、軽妙洒脱、アットホームで
 マニアック、それでいて、心がほっとするティーブレイク・ミステリィ。

■感想 ☆☆☆*
 表紙を開けたとこに書いてあった
 「おとなのふりが苦手な子どもたちに」という一文に一目ぼれして
 図書館で借りてきた本。
 登場するのはまさに「おとなのふりが苦手が子どもたち」。
 変に分別がついてしまうオトナになりたくないと肩肘張っている
 素直じゃないところがかわいらしい探偵助手の三吉さん。
 大人だけが持っている懐の深い優しさで事件を見つめ、
 子ども特有の好奇心と探究心で真相を見つける名探偵。

 そして、彼らに解決を依頼するために訪れる人たちも、
 「おとなのふりが苦手な子どもたち」だ。
 簡単に素直にはなれず、天邪鬼。
 どこか不器用でぶっきらぼう。でもって、にぶちん。
 彼らが名探偵の暖かい推理によって、暖かい結末を手に入れられるお話。
 登場人物みんなが微笑ましく、愛しい。

 微笑ましく愛しい、といえば、作品の随所から垣間見える
 作者の好きなものに対するこだわりや愛情も微笑ましい。
 特に第一話で見せるヴァン・ダインに対する愛情は見事。
 その愛情が伝わってくる文章に、推理小説ファンは、
 例え、ヴァン・ダインの作品を読んだことがない人でも
 思う存分、楽しめると思うし、共感する部分があると思う。