のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

堪忍箱/宮部みゆき

2008年08月08日 23時44分48秒 | 読書歴
52.堪忍箱/宮部みゆき
■ストーリ
 ふたを開けたら最後、この近江屋に災いがふりかかる。
 決して、中を見てはいけないというその黒い文箱には、喪の花
 もくれんの細工が施してあった。物言わぬ箱が次第に人々の心を
 ざわめかせ、呑み込んでいく表題作。ほか、名もなき人々の
 日常にひそむ一瞬の闇を描く時代小説8編。

■感想 ☆☆☆
 宮部作品の登場人物は、全体的に暖かい人が多い。
 推理小説がベースなので、陰惨な事件を扱ったもの、
 非情な登場人物が描かれているのに、なぜか温かみを感じる。
 そのぬくもりこそが宮部作品の特徴だと思う。

 けれど、この作品は読み終えた後、なんともいえない苦味を
 感じる作品ばかり。ものすごい苦味ではない。舌にほんの少し
 ぴりりとくるような苦味。誰の人生にも潜んでいるような
 特別なものではない苦味。
 その苦味は、この作品の中に描かれている「理解できてしまう
 感情」がかもし出しているのかもしれない。
 妬み、そねみ、猜疑心。
 どんなに優しい人でも、人の心には必ず薄暗い闇がいくつもあって
 それが時折、ちらりちらりと姿を見せるのだと思う。
 そのちらりちらりと姿を見せる薄暗い闇に焦点を当てているから
 そして、その薄暗い闇は、確かに私の心の中にもあるものだから
 私は読みながら、なんともいえない苦味を感じたのだと思う。

浮かれ気分で自画自賛

2008年08月08日 23時28分03秒 | 日常生活
待ちに待っていた金曜日!
午後はセミナ出席のため、社外へ出られます。
この日を月曜からどれほど楽しみにしていたことか!
半ば、心の支えのように
「金曜日は午後から外、午後から外」
と呟いておりました。待ちわびておりました。

12時。お昼のチャイムが鳴り響きます。
よし!外だー!!
うきうきと「午後は外です。」という連絡メールを作成していると
「のりぞうー。部長から電話ー。」

・・・・え?ぶ、ぶちょおから電話?
ワタクシと同様に朝から東京へ出張されている部長から?
な、なに?ワタクシ、出ないほうがいいのでは?
頭の中に鳴り響く警戒警報。

「あ?のりぞうくん。お疲れ様。
 あのさ、インターンシップの受け入れ部署なんかに関する
 資料を来週月曜日の部長会に出そうと思うんだよね。
 今から作って、メールで送ってくれる?」

・・・い、今からですか?
来週月曜日の会議の資料ですもんね。
そりゃ、今から、ですよね。
で、でも、本日、今からワタクシは・・・・。

言えませんでした。
午後からセミナに出席するため、席を外す、とは。
そのセミナに出席することを月曜から楽しみにしていた、とも。
まして、社外に出たくて出たくてたまらないんです、
心は既に社外なんですっ、なんて、とてもとても言えません。

あぁ。ワタクシってば、身も心もすっかりサラリーパーソン。

感慨深さをかみ締めながら、資料作成に取り掛かります。
幸い、作成を指示された資料は、自分の整理のために
9割方作成済みでした。
その資料を部長の指示に従って、レイアウト変更し
文言を付け加えて、さあ、できあがり!

次は、隣の部署の課長に作成した資料を確認していただきます。
ワタクシの仕事ぶりに大きな不安を抱いている部長から
必ず課長に確認してもらうように、という指示を受けたのです。
しかも、いつもワタクシを甘やかしてくださっている
直属の上司ではなく、斜めの関係に当たる隣の部署の課長に
確認してもらうように、という念には念を入れた指示っぷりです。

かちょー。かちょー。昼休み中にスミマセン。
部長の指示で、来週の部長会議資料を作成することに
なったんですけれど、その資料を見ていただいてもいいですか?

先日行われた部署内の席替えによって
最近、めっきりと生き生き過ごされている課長。
ワタクシのお願いにも明るく対応してくださいます。

「何?見るだけでいいと?・・・・はい。見た!」

本当にさらりと舐めるように見て、資料を投げ捨てる課長。

あ。もう、それだけで十分です。
見ていただけるだけで、本当に十分なんです。
あとは「確認した。」という一言さえいただければ。
その一言さえいただければ、ワタクシ
「課長からの太鼓判はいただいた。」ということで
この資料を部長に提出しますから。

「・・・え?部長からの指示?ちょっと待った!
 おまえ、俺のこと、陥れようとしようやろー?
 ちゃんと見るけん、ちょっと待て!まだ部長に送るな!」

慌てて詳細に資料を確認し始める課長。

いえ、本当におかまいなく。
ワタクシも早く外に出たいので、
そんなに丁寧に見ていただかなくても結構ですよ。
ただ、一言
「俺が資料を見た、確認した、おっけーだ。」
とさえ、おっしゃってくだされば。

ワタクシの勝手な申し出にも耳を貸すことなく
丁寧に資料を見てくださる課長。
結局、修正点がいくつか出て、資料を再作成することになりました。

「おまえ、感謝しろよー。
 俺、午後からの出張の準備をしよったんやけんなー。」

明るく恩を売りつける課長。
言われなくても、勿論、感謝しまくりですっ。
部長に言われる間でもなく、ワタクシひとりの確認では、
不安でたまりませんでしたもの。
やはり、細かい方に見ていただかないと。

ですから、このご恩は、今週いっぱい絶対に忘れませんっ!!

と、心からの感謝の念を盛大に、かつ誠意を持って伝えるワタクシ。
しかし、課長にはワタクシの感謝の念は届きませんでした。

「・・・今週いっぱいって・・・。
 お前、今週、今日で終わるやないか。
 しかも、お前、今から外やろうもん!
 今日、気がついたけど、お前、会話が適当やなー。
 口からでまかせばっかりやないか。
 つーか、今日はいつも以上にのびのびしとうよなー。」


・・・・そ、そんなことはありません。
のびのびしてるだなんて、とんでもない。
まして、会話が適当だなんて、滅相もない。

ただ、金曜日なんで、ほんの少し浮かれているだけです。
目の前に迫っている社外出張にちょっぴり浮かれているだけです。
最近、つとに感じている重圧を発する方が
本日、社内にいないため、浮かれまくっているだけなのです。

あぁ、抑えきれない解放感。
その解放感が知らず知らずのうちに
言葉の端々へ滲み出ていたようです。

つまるところ、
ワタクシってば、つくづく正直者なんだな、と思うわけです。