80.少女には向かない職業/桜庭一樹
■ストーリ
あたし、大西葵13歳は、中学一年の夏に人をふたり殺した。
あたしはもうだめ。ぜんぜんだめ。少女の魂は殺人に向かない。
誰か最初にそう教えてくれたらよかったのに。だけどあの夏は
たまたま、あたしの近くにいたのは、あいつだけだったから。
これは、ふたりの少女の凄絶な《闘い》の記録。
■感想 ☆☆☆☆*
わずか270Pの薄い文庫本だ。読みやすい文章というのもあって
あっという間に読み終えることができる。しかし、薄い小説なのに
大きな大きな奥行きがある。夢中になって読み進め、読み終わった後
自分の身の回りに広がった小説世界の大きさに圧倒された。
物語の世界からまったく抜け出せなかった。
小説を読むとき、たいてい主人公に感情移入して読んでしまう。
しかし、今回はいつも以上に物語にどっぷりと浸りきってしまった。
それぐらい迫力のある世界だった。
どうしようもない展開で道を一歩踏み外してしまう主人公の
恐れ、おののき。自分にはどうしようもできない「負」の境遇で
辛い気持ちを一生懸命、抱えている主人公。しかし、誰にもSOSを
発信できない主人公。彼女は自分の辛さを誰にも打ち明けない。押し隠す。
しかし、取り繕っていた「日常」はあっけなく破綻する。
破綻した後でさえ、誰にも気付かれないように、必死に
「普通の世界」に戻ってこようとする主人公のあがき。そういった
ヒリヒリした感情を、まるで自分が体験しているかのように、
身近に感じることができた。迫ってくるような感覚だった。
そして、主人公に対して、必死に「普通ではないオンナノコ」を
演じてみせるもうひとりのヒロイン。「普通ではない」ところを
見せて主人公の気を惹き、自分の状況に気付いてもらおうとする。
そんなまどろっこしい方法でしかSOSを発信できない
もうひとりのヒロイン。
この小説はまさに彼女たちふたりの「壮絶」な闘いの記録。
小説の奥行きと迫力にページ数は関係ない、と思い知った。
■ストーリ
あたし、大西葵13歳は、中学一年の夏に人をふたり殺した。
あたしはもうだめ。ぜんぜんだめ。少女の魂は殺人に向かない。
誰か最初にそう教えてくれたらよかったのに。だけどあの夏は
たまたま、あたしの近くにいたのは、あいつだけだったから。
これは、ふたりの少女の凄絶な《闘い》の記録。
■感想 ☆☆☆☆*
わずか270Pの薄い文庫本だ。読みやすい文章というのもあって
あっという間に読み終えることができる。しかし、薄い小説なのに
大きな大きな奥行きがある。夢中になって読み進め、読み終わった後
自分の身の回りに広がった小説世界の大きさに圧倒された。
物語の世界からまったく抜け出せなかった。
小説を読むとき、たいてい主人公に感情移入して読んでしまう。
しかし、今回はいつも以上に物語にどっぷりと浸りきってしまった。
それぐらい迫力のある世界だった。
どうしようもない展開で道を一歩踏み外してしまう主人公の
恐れ、おののき。自分にはどうしようもできない「負」の境遇で
辛い気持ちを一生懸命、抱えている主人公。しかし、誰にもSOSを
発信できない主人公。彼女は自分の辛さを誰にも打ち明けない。押し隠す。
しかし、取り繕っていた「日常」はあっけなく破綻する。
破綻した後でさえ、誰にも気付かれないように、必死に
「普通の世界」に戻ってこようとする主人公のあがき。そういった
ヒリヒリした感情を、まるで自分が体験しているかのように、
身近に感じることができた。迫ってくるような感覚だった。
そして、主人公に対して、必死に「普通ではないオンナノコ」を
演じてみせるもうひとりのヒロイン。「普通ではない」ところを
見せて主人公の気を惹き、自分の状況に気付いてもらおうとする。
そんなまどろっこしい方法でしかSOSを発信できない
もうひとりのヒロイン。
この小説はまさに彼女たちふたりの「壮絶」な闘いの記録。
小説の奥行きと迫力にページ数は関係ない、と思い知った。