82.スロウハイツの神様(上)(下)/辻村深月
■ストーリ
人気作家チヨダ・コーキが、猟奇的なファンによる殺人ゲームにより
筆を折ってから十年。「コーキの天使ちゃん」によって復活を遂げた
チヨダ・コーキは、新人売れっ子脚本家・赤羽環に誘われ、彼女が
オーナーを務める「スロウ・ハイツ」に入居し、漫画家や画家、映画監督
を志す彼女の友人たちと暮らし始める。幸せに過ごしていたスロウハイツ
での日々。しかしその生活は、加々美莉々亜の入居によって変調をきたし
始める。ある日、一通の郵便が環の手に渡り・・・。
■感想 ☆☆☆☆☆
図書館で見かけることのなかった辻村さんの作品が2作品、同時に
手に入った。そのうち1作品が図書館ではなかなか同時に手に入らない
上下巻もので、喜びいさんで借りてきた。なかなか読みたいと思った本を
思い通りに読み進められない図書館ライフだけれど、たまに大好きな
作家さんの本が集中的に手に入る日もあって、その「運」みたいなものも
図書館ライフの醍醐味のひとつだったりする。
というわけで、あっという間に読み終えた辻村作品。
最初に読み終えた「ぼくのメジャースプーン」で、改めてこの人の
作品世界が大好きだという思いを強くした。そして、この作品。
通勤時間にのみ本を読み、帰宅後は、ほとんど本を手に取らなかった
最近の生活の中で、この「スロウハイツ」は帰宅後も手放せず
結局、睡眠時間を削って読み終えた。思えば、今までに読んだ辻村作品
「冷たい校舎の時は止まる」も「子供たちは夜と遊ぶ」も同じように
睡眠時間を削って、結末を見届けた。
辻村作品は登場人物たちに愛着を持たせてくれる。私に、彼女たちと
できるだけ長く一緒に過ごしたい、彼女たちの幸せを見届けたい、
そんなふうに思わせてくれる。
読み終えた後、あまりの幸福感に泣けてしょうがなかった。
徹底的なハッピーエンド。できすぎの感じがしないでもない結末。
でも、そこから伝わってくる「幸せ」があまりにも温かくて、短い間に
大好きな存在になった彼女たちの幸せが嬉しくて、本当に泣けた。
空想上の産物にすぎない彼らにそこまで肩入れするのもどうなんだ、と
冷静に自分を眺めつつ、でもそこまでいとしく思わせてくれる作品と
出会えたことが嬉しくなる、そんな話だった。
上巻では1章ずつ「スロウハイツ」の住民の日常を追いかける。
彼らが何を望んでいるのか、何を目指しているのか、何が手に入らずに
もがいているのか、青春小説のような群像劇だ。
しかし、下巻に入り、上巻で散りばめられていた何気ない思い出話や
日常がすべて伏線だったことを思い知らされる。
それらが伏線だったことにすら気付かなかった数々の思い出話が
一気に回収され、あるべきところにあてはめられていく様子は実に爽快で
読み終えた後に、また最初から読み始めたくなる。
物語のテーマ、そして作者の想いは登場人物によるラスト近くの
言葉に集約されているのだと思う。
「まあ、なんていうか。あらゆる物語のテーマは結局愛だよね。」
■ストーリ
人気作家チヨダ・コーキが、猟奇的なファンによる殺人ゲームにより
筆を折ってから十年。「コーキの天使ちゃん」によって復活を遂げた
チヨダ・コーキは、新人売れっ子脚本家・赤羽環に誘われ、彼女が
オーナーを務める「スロウ・ハイツ」に入居し、漫画家や画家、映画監督
を志す彼女の友人たちと暮らし始める。幸せに過ごしていたスロウハイツ
での日々。しかしその生活は、加々美莉々亜の入居によって変調をきたし
始める。ある日、一通の郵便が環の手に渡り・・・。
■感想 ☆☆☆☆☆
図書館で見かけることのなかった辻村さんの作品が2作品、同時に
手に入った。そのうち1作品が図書館ではなかなか同時に手に入らない
上下巻もので、喜びいさんで借りてきた。なかなか読みたいと思った本を
思い通りに読み進められない図書館ライフだけれど、たまに大好きな
作家さんの本が集中的に手に入る日もあって、その「運」みたいなものも
図書館ライフの醍醐味のひとつだったりする。
というわけで、あっという間に読み終えた辻村作品。
最初に読み終えた「ぼくのメジャースプーン」で、改めてこの人の
作品世界が大好きだという思いを強くした。そして、この作品。
通勤時間にのみ本を読み、帰宅後は、ほとんど本を手に取らなかった
最近の生活の中で、この「スロウハイツ」は帰宅後も手放せず
結局、睡眠時間を削って読み終えた。思えば、今までに読んだ辻村作品
「冷たい校舎の時は止まる」も「子供たちは夜と遊ぶ」も同じように
睡眠時間を削って、結末を見届けた。
辻村作品は登場人物たちに愛着を持たせてくれる。私に、彼女たちと
できるだけ長く一緒に過ごしたい、彼女たちの幸せを見届けたい、
そんなふうに思わせてくれる。
読み終えた後、あまりの幸福感に泣けてしょうがなかった。
徹底的なハッピーエンド。できすぎの感じがしないでもない結末。
でも、そこから伝わってくる「幸せ」があまりにも温かくて、短い間に
大好きな存在になった彼女たちの幸せが嬉しくて、本当に泣けた。
空想上の産物にすぎない彼らにそこまで肩入れするのもどうなんだ、と
冷静に自分を眺めつつ、でもそこまでいとしく思わせてくれる作品と
出会えたことが嬉しくなる、そんな話だった。
上巻では1章ずつ「スロウハイツ」の住民の日常を追いかける。
彼らが何を望んでいるのか、何を目指しているのか、何が手に入らずに
もがいているのか、青春小説のような群像劇だ。
しかし、下巻に入り、上巻で散りばめられていた何気ない思い出話や
日常がすべて伏線だったことを思い知らされる。
それらが伏線だったことにすら気付かなかった数々の思い出話が
一気に回収され、あるべきところにあてはめられていく様子は実に爽快で
読み終えた後に、また最初から読み始めたくなる。
物語のテーマ、そして作者の想いは登場人物によるラスト近くの
言葉に集約されているのだと思う。
「まあ、なんていうか。あらゆる物語のテーマは結局愛だよね。」